タイトル | 謝男 |
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原作・漫画 | 板垣恵介 |
出版社 | 日本文芸社 |
新任教師拝 一穴は、
代々続く「土下座」の専門家。
新任の挨拶でも超強烈な土下座によって
生徒の「後押し」に成功するほどの
能力を秘めていました。
そして、教師として
生徒の悩みを聞く立場になった彼は、
常に「土下座」を軸にして
ビシっと解決を進めていくのでした……
謝男のあらすじ紹介
どこにでもあるような高校に
就任してきた新任教師 拝 一穴は、
就任挨拶の場で、全校生徒を前に
土下座をするという
「奇行」に打って出ます。
思いもよらなかった行為に
沸く高校生たち。
しかし、拝は完全に本気そのものであり、
彼の真剣過ぎるほどの態度は、
生徒たちを物理的に
「後押し」するというほどの
効果を生み出します。
こうして、変わり者ながらも
妙な説得力を持った拝は
新任教師として、生徒の色々な悩みを
土下座で解決していくのでした。
謝男のネタバレと今後の展開は?
新任の挨拶で見せた土下座によって
完全に「掴み」を決めてみせた
拝先生でしたが、そこは教師という
職業柄、生徒たちから
様々な問題が持ち込まれ、
しかも途切れることはありません。
どうしても遅刻をしてしまう生徒もいれば、
授業中に漏らしてしまう生徒もいます。
学校では冴えないのに
タバコを吸ってくる生徒もいれば、
充実しているように見えて
内心悩みを抱えているような
生徒もいますが、拝先生は
そうした青春の悩み、問題に対して、
あっと驚くような方法を使って
解決していきます。
そしてその方法の中軸にあるのは、
いつだって「土下座」なのです。
仕事で失敗したというような場合とは違い、
明らかに自分に非はない、
そんな土下座しにくいような状況でも、
彼はどうにかして土下座にもっていき、
そして生徒たちを全力で応援します。
口で何を言うわけでもなく、
手を出すわけでもなく、ただ、
折に触れて土下座をする。
そんな拝先生のやり方に、
生徒たちは驚きながらも感動して、
今までとは違う自分になるための
一歩を掴んでいくのでした。
謝男の読んでみた感想・評価
これだけ突飛なテーマを
全面に出すのは難しいよな、的な
印象を抱いていました。
極端な言い方をすれば「出オチ」系の
作品かなとも思いましたが、
読んでみると意外や意外、
正統派の学園ものでびっくりしました。
主人公の拝先生が
様々な背景を持ってそうな感じな割に、
とてもいい意味でまっとうに
教師をこなしており、それが
本作全体にいい影響を
及ぼしているように思えました。
一方でその解決方法は、
土下座を軸にしているが故に極めて
オリジナリティーが高く、過程も
結末も予想することができず、
そのため飽きることが
一切ありませんでした。
ぱっと見、些細にも思えるものの、
実際当人にとっては深刻な悩みに
全力で向き合い、そして解決までの
道のりを示す、という真摯さが
印象的でした。
いわゆる「板垣作品」の多くに
共通する熱いバトルシーン等々には
縁がないものの、それだけに新境地を
描写している感が強くありました。
また、痛快にして強烈無比な土下座を操る
拝先生のルックスも、非常に端正で
手を尽くしているものの、それでもどこか
厄介な感じが滲んでいるのも
説得力があっていい感じでした。
謝男はこんな方におすすめな作品!必見
いわゆる座礼、土下座に
どういう効力があるかを
突き詰めた作品と言えます。
確かに最大級の礼式である土下座は、
なかなか見られるものではありませんし、
それを繰り出す方にはもちろん、
出された方にもそれなり以上の
プレッシャーがかかってくる
ものとも言えます。
しかし、まったく同種の作品である
「どげせん」が、相手への圧力を与える、
言わば武器としての土下座を
追求しているのとは対照的に、
本作における土下座は、生徒や
目上の人に対する祈りや救済、
真摯なお詫びとしての
色彩が極めて濃いため、
「土下座を食らっている」感は
まったくありません。
そのため読後感は爽やかで軽く
「どげせん」がキツかったという方にも
安心してお読み頂ける
性質になっていると言えます。
また、教師が生徒のために「動く」という
構図が成り立っているので、
青少年の問題を教師が頑張って解決する、
しかもすべてをやり切るのではなく、
肝心な部分は生徒自身に委ねるような
適切な距離感を持った学園ドラマとしての
性質もまた色濃くあります。
教師が全面に出た作品ですと、
どうしても説教臭くなってしまったり、
押しつけがましくなってしまう点が
ネックなのですが、本作は特性上
「背中で教える」というスタンスが
強いので、そうした部分の欠点に
陥る心配もありません。
全体的に見て完成度の高い
教師ものの作品と言えるでしょう。
いずれにせよ、きっちりとした
基本を押さえキャラ立てを
万全にしながらも土下座という
まったく新しいテーマを描き切っているのは
素晴らしいと思います。