タイトル | 天使のキス |
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原作・漫画 | 芦原妃名子 |
出版社 | 小学館 |
怪我とトラウマで
舞台に上がれなくなった
バレエ少女、彩の、
情熱を再び燃やさせたのは、
男性だけのバレエ団の
俺様系のエース、アキラで……。
極めて規律的でシビアな
バレエの世界を、挫折した少女の
再起を通じて個性的な視点で描く、
熱血かつ異色のバレエ漫画です。
天使のキスのあらすじ紹介
バレエスクールで有望視されながらも、
アクシデントでの怪我やトラウマにより
踊れなくなってしまった藤井彩。
しかし、小劇場で「COOL」という
バレエ団の演劇と主演級のアキラの
ただならぬ存在感を観た彩は、
絶対に踊りたいと入団を志願します。
「COOL」は学校ではなく
プロのバレエ集団であり、しかも
男性限定のチームなので、
本来、彩の役どころはないような
感じでもありましたが、
コンクールで一位を取れば、という
アキラの冗談めいた言葉を糧に、
燃え始めます。
しかし、あくまでも彩の実力を
見切りにかかるアキラは
チャンスすら与えようとはせず、
そのため彩は強烈な手段での
実力行使にかかるのでした。
天使のキスのネタバレと今後の展開は?
幼少の頃から続けてきた
バレエの実力が評価され、
街田バレエスクールでも
主役級の扱いを受ける少女、
藤井彩。
しかし彩は重要なコンクールで
舞台から転落するという
大失敗をしてしまい、
一月ものブランクを作ってしまいます。
もちろんそれは実力不足故ではなく、
先生も引き続き主役の座を
彩に与えようとしますが、
そのことが周りとのあつれきを生み、
彩自身にも重圧となっていきます。
そして迎えた本番、彩は、
既に完治したはずの足に
激痛を覚えます。
コンディションは最悪ですが、
無理を押して出ようとしたところ
彩は舞台上で倒れ、立ち上がれずに、
演目を台無しにしてしまいます。
そのことにショックを受けた彩は
スクールを辞めると宣言し、
バレエから離れていきますが、
体重を気にせず甘い物を食べても
彼女の心は晴れることはなく、
公園で打ちひしがれていました。
そこに、熊の着ぐるみを着ていた
男性が公演のチケットを手渡してきます。
小さな劇場で行われたそのCOOLという
バレエ団の踊りは、技術力はもちろん、
その存在感が物凄く、とりわけ、
日比谷アキラという主演の男性の
力量は際立っていました。
演目終了後、案内してくれた男性から、
踊りたくなっていることを
指摘された彩は、楽屋に入り込み、
アキラに入団させてくれと直談判します。
初めは追い出されかける彩ですが、
アキラはその根性に好感を抱いたようで、
全日本で一番になれば入れてやると、
条件を出してくれました。
しかしその後話を聞くと、「COOL」は、
男性のみのバレエ団だったのでした。
天使のキスの読んでみた感想・評価
「破天荒」と「必然性」の
バランスが取れているのが
素晴らしかったですね。
まず、主人公の彩さんです。
有望視されていた彼女が、
予期せぬ怪我と、それをきっかけとした
トラウマが原因で舞台から離れ、
今までとはまた違う場所を目指し
復活していくというのが冒頭からの
全体的な流れですが、
本当に素質のある十代の若者は、
世界各国のバレエ団直属の
アカデミーなどに留学して経験を積む、
クラシック音楽にも似たシステムに
支えられているのがバレエであり、
選ばれるか否かの大事な時期に
大失敗をしてしまいヤケ食いに走る
彩の態度は、
今後のチャンスをシビアに考えると
必然とすら言える部分がありますが、
しかし、たまたま観た小舞踏団の
パフォーマンスに感動して
そこに入ろうとする彼女は、
完全に破天荒でもあります。
一方、「COOL」のトップ、アキラも
色々な舞踏がある中で、圧倒的に、
女性優位なバレエをチョイスして、
しかも男性だけのチームを作り
世の中に打って出るという
無茶な選択をする一方で、
演目の関係上、どうしても役が、
とりわけ主役格が回ってきにくい
既存のバレエ界から離れて、
自分たちの実力で主導権を
取っていくという姿勢は
必然的なものであり、
そうした必然が積み重なって
物語が進んでいくからこそ、
説得力のある物語を
楽しんで読んでいけました。
そして、主人公の彩が
とても熱血かつ前向きなのも
アクの強いアキラたちと絡むには
適しているようにも思えました。
天使のキスはこんな方におすすめな作品!必見
日本舞踊や社交ダンスなど「踊り」の
種類は無数に存在しますが、
いわゆる洋風の踊りの中でも、
ひときわ階級というか段階を
きっちり踏んでいかないと大成はおろか、
舞台にも上がれないのがバレエの世界です。
その厳しい世界を描いた「昴」などの
名作も少なくありませんが、世界を相手に
挑まなくてはならない関係上、
どうしても主人公は「挫折なき天才」の
部分を強く出さなければならず、
「本筋」以外のルートの難しさが
伝わってきにくい部分がありました。
一方の本作は、高校生という
バレエの踊り手にとって最重要な
厳しい時期に、怪我とそれによる
トラウマを抱えてしまった彩が
主人公であり、名も知れない
舞踏団に入るために力を尽くすという、
完全に「選ばれなかった側」の
領域を描く物語でもあるので、
お堅いコンクールや権威的な座長などの、
「類型的」なバレエ像には
イマイチ馴染めなかった方にも
とても適した作品ではないかと思います。
何しろ作中の「COOL」は男性オンリーの
バレエ劇団ということで、
とてつもないほどの異色集団であり、
知識がある人ほど驚きの展開が
楽しめる仕掛けにもなっています。
もちろん「非常識」を掲げて
社会に挑んでいくだけに
とても厳しい部分もあったりと、
シビアな側面を描写することで、
話をより深いものにすることに
成功してもいます。