タイトル | 銀盤騎士 |
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原作・漫画 | 小川彌生 |
出版社 | 講談社 |
クールでシャープな
フィギュアスケート男子エース、
雉子波 心を支えているのは、
コーチの言葉ではなく、
アニメが発端の
「魔法」だった!?
フィギュア選手の戦いのハードさを
外部からの目も交えて大胆に、
かつ熱く面白く描いた、
斬新な設定なども必見の、
熱血フィギュア漫画です。
銀盤騎士のあらすじ紹介
スケートを学んでいたものの、
今はリンクを離れて出版関係に
就職した猪狩 千登勢。
スケートには縁のない
生活と思いきや、
彼女は苦しむ幼馴染の
フィギュア選手雉子波 心に、
「魔法」をかける重責を負っていました。
それは、子供の頃大好きだった
アニメを真似した戯れが発端の、
たわいない「儀式」でしたが、
今や心はマスコミまでもが
注目する日本のエースであり、
猪狩さんもまた若年ながら
世界中を飛び回る仕事を
こなしてもいました。
そうした状況の中、
自分の思いにフタをしていた
猪狩さんでしたが、
あるきっかけで心の思いを知り、
抑えられなくなっていくのでした。
銀盤騎士のネタバレと今後の展開は?
スター選手が群雄割拠し、
マスコミの注目も浴び続ける
日本男子フィギュアスケート界。
強豪たちがひしめく中でも、
ひときわクールなシャープさを滲ませ、
完成度の高い演技構成ができる、
雉子波 心には、一つの「魔法」が
かかっていたのでした。
その「使い手」は猪狩 千登勢さん。
かつて心を一緒にスケートを学び、
今はリンクを離れた出版関係者で、
二十代にして小学生に間違われるような
小柄な女性ではありますが、
心君と親友の彼女は、心君が大の
アニメ好きであることも把握しており、
その作品に出てくる「魔法」を
子供の頃からかけていたのでした。
もちろん魔法云々は本気ではなく
単なる戯れでしたが、これがないと
心くんは好成績を上げられず、
他の人がやってもダメなので、
猪狩さんは、大きな試合のたびに
仕事を抜け出して魔法をかける、
ある種の「二重生活」を送っていました。
トレーニング上がりの雉子波君に
家に招かれ、オタク的ルームの中で
一緒に眠ってしまったり、
そのために遅刻してしまい
恋人関係と思われたりと、
色々とハプニングはありましたが、
心君はスケート、猪狩さんは
出版の仕事と、互いに充実した
生活を送っていました。
しかし、カナダで行われる
グランプリファイナルの際、
猪狩さんは南米に出張することになり、
ついに二人のスケジュールには
決定的なズレが生じてしまいます。
銀盤騎士の読んでみた感想・評価
フィギュアスケートは昔から、
テレビなどで見ている私ですが、
色々と新たな発見がありました。
まず、基本的な人間関係がいいですね。
猪狩さんも心君もひたむきで、
自分のするべきことに集中しつつも、
決してお互いのことを忘れない、
競技や仕事だけにハマるのではなく、
個人的な感情にもフタをしない、
人間らしさがあるのが良かったです。
また、見た目とは裏腹に弱虫で、
ガッツリオタクでもある心君が、
自分の立場が上がるにしたがって、
苦しみもがきながらも
アスリートとしても成長し、
周りの思いもを原料力にして
試合を勝ち進んでくあたりは
熱血スポ根漫画の痛快さがありますし、
反面ギャグやコメディのシーンでも、
全力で笑わせにくる部分もあり、
そのメリハリがまるでフィギュアの、
スピンとステップのように
融合されたいい雰囲気を
生み出してもいましたね。
一旦はリンクから離れた猪狩さんが
再び心君と再開し、親しくなる部分にも、
必然性があって非常に良かったです。
どこか猪狩さんに寄りかかっていた
心君が、徐々に自立し、猪狩さんを
守れるような立場になっていく部分も、
恋愛ものと成長物語が好きな側としては
たまらない部分がありました。
銀盤騎士はこんな方におすすめな作品!必見
バレエやクラシック音楽のような、
芸術的厳しさと、アスリートスポーツの
ハードさを兼ね備えたフィギュアの世界。
近年日本における人気実力の向上は
めざましいものがありますが、
フィクション作品にすると、意外にも、
「切り口」に悩むことが少なくありません。
様々な要素がシビアなだけに「遊び」が
どうしても少なくなってしまうため、
キャラが動かしづらいのが
難しいところだったりもします。
しかし本作の場合、弱虫系の心君や
小さくて可愛い猪狩さんなど、
まず見た目からして個性豊かであり、
その物語展開も、すでに引退した
猪狩さんが急派され、心君の
安定剤的役割を果たすという、
スポーツ漫画としてはかなり
異質な感じの導入から入り、
その過程でビシバシとギャグも
入り込んでくるわけで、
普通のスポーツ漫画の展開に
満足していない方には、
まさに待望の一作という感じです。
その一方で、ギリギリを競い、
個性を見せ合うフィギュアならではの
興味深さや厳しさなど、
理解度がなくては描けない部分も
スポーツ故の熱さも多く、
作品の軸は非常にしっかりしています。