タイトル | にもかかわらず |
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原作・漫画 | 筒井旭 |
出版社 | 集英社 |
ジャージに釘バット装備で
喧嘩に駆けつける超ヤンチャ系女子、キヨ。
兄と離れ離れになった彼女は、
ある日その彼と巡り会うものの、
タラちゃんと呼ばれる彼は想像とは違う
冴えない青年であり……。
様々な「ギャップ」が全開な
個性的なキャラとハイテンポな物語が
読者にドキドキ感をもたらす、
新感覚パワー系ストーリーです。
にもかかわらずのあらすじ紹介
高校を出て二十歳になっても、
友達のピンチにバットを持って喧嘩に
出向いてしまうほどヤンチャなキヨ。
長年つるんでいる友達にも
女性扱いされない日々でしたが、
実は最近仲良くなった小説家、峰くんが、
自分の兄貴なのではないかと
考えを巡らせたりしていました。
年上でカッコイイ峰くんの言動に
少しときめいたりもしていましたが、
喧嘩の後行った峰くんの家で、
風采の上がらないマニアックな
青年と鉢合わせになります。
しかし驚くべきことに、
そのタラちゃんという青年は完璧に、
キヨの兄のイメージに合致していました。
にもかかわらずのネタバレと今後の展開は?
二十歳の女性であり
友達とも仲が良い
吉田聖良(キヨ)。
しかし彼女は仲間がピンチとなると、
すぐさまジャージ姿で釘バットを持って
喧嘩にかけつける豪傑でした。
相手に平気で釘バットを投げて
頭に蹴りをかますキヨの実力は
男たちから見ても超強力。
そのため昔からつるんでいる悪友にも
女子トイレに入る姿に
違和感を持たれてしまうほどであり、
本人としては面白くありませんが、
恋愛経験もない彼女は
半ば諦めてもいました。
さて、喧嘩の後、年上の峰くんを
訪ねたキヨたち。峰くんは
アダルトな小説を書いていて、
色々な意味で男性陣から人気です。
キヨもまた可愛がられていましたが、
彼女は峰くんが、かつて一緒に暮らした
義兄だったのではないかと思っていました。
しかし、その日キヨの前に、
やたら慌てた感じの風采が上がらない
草食系男子が出てきます。
どうやら彼は峰くんの同居人らしく、
「タラちゃん」と呼ばれていました。
キヨの兄のイメージとは違う彼でしたが、
峰くんの家の前で寝てしまったキヨを助け、
その翌朝「よろしく」と右手を差し出した彼は、
紛れもなくキヨに残る兄の記憶と同一でした。
この男が兄とは、と反発するキヨですが、
タラちゃんの側の母親が、つまり自分の母が
亡くなったことを知りつつ、
再び偶然に顔を合わせることになります。
しかしタラちゃんは自分を一人っ子と言い、
きょうだいには会いたくないと
本音を垣間見せるのでした。
にもかかわらずの読んでみた感想・評価
まさにビックリな展開、
驚きなシチュエーションの連続で
ドキドキしてしまいました。
まず冒頭で、二十歳にもなる
本作のヒロイン、聖良が、
釘バットを持って喧嘩を行くという、
かなり前代未聞な導入から
驚いてしまいました。
元ヤンっぽい女の子や
武道をたしなむ大人の女性キャラは
結構多いのですが、
未だに「現役」のヤンキーであり
しかもいい奴というのが
凄いキャラクターです。
しかも常に男子とつるんでいるのに
まったく恋愛に縁がなく、
内心は実に繊細で乙女だったりと、
とにかく「にも関わらず」な
ギャップが多いのが良かったです。
また作品の展開としても、
不良モノのような始まりから
ラブコメ的展開を経て、
そこから家族の物語に、と、
様々に主題が変化していくのも
意外性がありましたね。
一方ですべての要素が
捨てられることがなく、
後まで重要な一つのピースとして
用いられ続けるという現実もあり、
作品全体の深みが増しています。
全体的にとにかくキャラが
皆イキイキしており、
キヨたちを主軸とした「世界」が
あまり広がっていないながらも
退屈感がないのも好感が持てました。
にもかかわらずはこんな方におすすめな作品!必見
創作世界において、あらゆる分野で
「ギャップ」は強力な武器になります。
例えば、小柄なのにやたら喧嘩に強い、
メガネを外してお化粧をすると凄い美人、
外ではカッコイイのに家ではポンコツ……。
今ではそうした「ギャップ」を持つ
主人公やヒロインも定番ですが、
扱いに難しい部分も否定できません。
ギャップはある意味で「裏切り」なので、
期待を肩透かししてしまうことにも
なってしまうんですね。
しかし本作に関しては、そのギャップが
とても絶妙かつ複雑に機能して
独特の面白さを展開しています。
もう高校を卒業し二十歳になった、
にも関わらず釘バットを持って
喧嘩に行くキヨ。
そんなキヨであるにも関わらず、
恋に関しては意外なほどにウブで、
純真な気持ちを持っていたり、
キヨの家族であるにも関わらず、
まったくタイプの違う兄がいたりと、
とにかく意外な展開が続きます。
その密度は独特なレベルであり、
他の作品でギャップをたっぷりと
味わってきた方にも、
新鮮な驚きに次ぐ驚きが
堪能できてしまえるほどです。
峰さんもトボけたところのある
イケメンタイプかつ有能で、
意外性もあったりと、
他の登場人物も強烈なキヨの個性に
負けてないのもいいところですね。