タイトル | アナスタシア倶楽部 |
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原作・漫画 | さいとうちほ |
出版社 | 小学館 |
まだ若年ながら、一流の
目利き力を有する少女、カムイ。
彼女のもとに来た遊び人風の
大学生瀬名は、実は
ロマノフ王朝の末裔らしく……。
歴史ロマンと陰謀が交錯する、
リアルとファンタジーが交わる
壮大な歴史物語です。
アナスタシア倶楽部のあらすじ紹介
超一流鑑定者の孫娘として、
際立った知識とセンスを持つ、
椿カムイ。
しかし祖父の跡は継げないと
店を閉めようとしていたところで
遊び人風の大学生瀬名がやってきます。
彼は、ロマノフ王朝の王女だった、
アナスタシアの「骨」を持参し、
王朝を末裔を自称する若者ですが、
一方今時風の軽さも持っており、
雰囲気からは気品が感じられるような
部分は一切ありませんでした。
しかし、「末裔」として
いい加減な雑誌のネタ元に
なったことが発端となり、
瀬名たちは霊柩車を
前触れなしに突っ込ませてくるような
恐るべき相手と関わることになります。
アナスタシア倶楽部のネタバレと今後の展開は?
有力鑑定師の孫娘であり、
「骨董屋 椿」を受け継ぐ
椿カムイ。
彼女のもとに、遊び人風の
大学生がやってきました。
興味本位でと言うよりは
人目を避けるような注意深さを
全身で滲ませて入店した青年は、
カムイの祖父が亡くなったと
知らされると、持っていた
「骨」を捨てようとしますが、
その彼、瀬名卓斗の
真剣な様子を見ていたカムイは
改めて話を聞くことに。
場を改めると、見た目通りの
チャラついた感じを見せて、
「鑑定書だけ書いて」と、
瀬名は要求してきますが、
カムイは万全を期して
DNA鑑定をしていました。
そのために骨の「秘密」が
鑑定を依頼した大日向教授にバレて、
怪しまれますが、
瀬名はれっきとした
ロマノフ王朝の末裔であり、
珍しい瞳の色をしていました。
しかし、身体的特徴だけでは
末裔とは認められず、
出生を「証明する」には、
どうしても「骨」が
必要だったのでした。
事情を知った大日向たちは
研究所を「アナスタシア倶楽部」と
改めた上で、
王朝ゆかりの老女と会うことに。
老女は瀬名を認め、
秘宝であるイースターエッグを
与えますが、代わりに、
瀬名が持参した骨を
海に捨てるように言います。
しかしカムイは老女を
偽者だと「鑑定」し、
瀬名たちは危うく
始末させられますが、
気品ある女性の声によって
彼らの命は救われます。
偽物らしき秘宝にこだわる
瀬名にも深い事情がありましたが、
ロマノフ王朝を巡る因縁は深く、
瀬名たちは恐るべき相手に
狙われていくのでした。
アナスタシア倶楽部の読んでみた感想・評価
今まで色々な歴史モノを
読んできましたが、本作の
仕上がりは絶品でした。
まず、有名な王朝ながらも
謎が多く、ファンタジーが
入る余地が大きな、
ロマノフ朝を舞台にするのが
歴史ファンとしては嬉しいですね。
ニコライ二世など、日本と
縁の深い有名人もいて、
彼らの因縁がそのまま物語の
ポイントになっていったりと
「分かっている」部分が
素晴らしかったです。
そして話の軸を「財宝」という
シンプルな要素も出したことで、
マフィアの暗躍にもぐっと、
説得力のようなものが出ましたし、
歳に似合わないカムイや瀬名の
落ち着いた感じも良かったです。
リアルということを考えると
どうしてもパニック的要素が
強くなるものですが、
その現実性を前に出さずに、
壮大かつ豪奢な歴史モノとして
的確なチョイスが嬉しかったです。
全体像としては少女漫画的ですが、
歴史描写も考察も非常にタフで、
普段から大人向けの歴史小説を、
読み込んでいるような方にも
納得できるだけのディテールを
感じられた一作とも言えますね。
アナスタシア倶楽部はこんな方におすすめな作品!必見
古今東西を問わず権力者や王朝には、
金銀財宝や秘話などの秘密がありますが、
中でもロシア最後の王朝にして、
革命のうねりに巻き込まれた
ロマノフ王朝に関する逸話は非常に多く、
未だに多くの謎が残されています。
だからこそロマノフ王朝の生き残りや
秘宝などの伝説には説得力があり、
本作も美しい末裔たちや陰謀など、
様々な壮大な要素を満喫できる
作品になっています。
現実味がない荒唐無稽な話ではなく、
かと言って歴史的に明らかになった
既に「踏破」された物事でもない、
エピソードにしっかりとした
ロマンを感じたい方にとっては
非常に優れた作品とも言えます。
作中のカンナの鑑定の確かさや、
ロシア王朝に関する考察の豊富さ、
指名手配された札付きのプロさえも、
チョイ役に過ぎないという
争奪戦のスケールの大きさなど、
映画としても通用しそうな質量です。
ソ連が崩壊したとは言え、原則的に
秘密主義の部分が強く、まだまだ
未知の部分が多いロシア圏ならではの
緊迫した雰囲気と充実さが
作品全体の魅力ですが、
話の緩急も非常に巧みで、
一気に読み進めていっても
読み疲れすることはないのも、
読み手としては嬉しいですね。