タイトル | ガラスの椅子 |
---|---|
原作・漫画 | 中村真理子 |
出版社 | 講談社 |
小さな工房で、椅子作りに打ち込む、
家具メーカー一族の娘、葵。
ひたむきに仕事に励む彼女の胸には
実は兄への禁断の思いがあり……。
素のままの激しい感情が交錯し、
それぞれの「領域」で全力を傾ける、
大人も納得できる、
骨太の恋物語です。
ガラスの椅子のあらすじ紹介
高級家具メーカースノーチの
娘であり、小さな工房で、
椅子作りに励む葵。
採算度外視ができる状況で、
とにかくこだわりの椅子を
作り続ける葵でしたが、
彼女の心には、かつて
兄、出と一緒に椅子を作った
思い出が色濃く残っていました。
職人の道を諦め、
そして他の女性と結ばれつつある兄に、
やり切れない思いを抱く葵は、
時にその思いを発露してしまいますが、
兄の生き方を変えるには至りません。
一方スノーチ本社には、
差出人不明の脅迫状が届き、
出は犯人探しに乗り出しますが、
なかなか相手の尻尾を掴むことは
できなかったのでした。
ガラスの椅子のネタバレと今後の展開は?
高級家具メーカースノーチの、
娘である洲之内葵。
彼女は椅子作りに情熱を燃やし、
兄の出の記念すべき日にも、
お客様のために調整を、
繰り返すほど仕事に
没頭していました。
彼女の兄、出もまた、
若くして会社の経営に関わり、
切れ者として知られていました。
しかし葵は出に対して、
隠しがたいほどの思いを
抱いていました。
彼女が椅子作りを選んだのも、
愛する兄との「思い出」が
椅子作りにはあったからですが、
しかし出が、職人ではなく
経営者の道を選んだことが、
葵の心に影を落としていました。
もっとも落雷が原因で
あわや死にかけたりと、
色々な事がある中では、
葵も兄への思いにだけ
とらわれているわけにもいかず、
仮住まいで新生活を始めます。
葵は命を助けてくれた桧枝の
インタビューを受けたりと
充実した生活を送りますが、
一方で出のもとには、
差出人不明の脅迫状が届くなど、
不穏な空気も流れ始めていました。
犯人はなかなか見つからず、
脅迫は続き、出たちの焦りは
募っていくのでした。
ガラスの椅子の読んでみた感想・評価
様々な領域での本気の「仕事」が
堪能できる一作でもありました。
本作の本筋は「禁断の愛」を
軸にした人間物語ですが、
主人公の葵をはじめ、
周りの人たちが「大人」なことが
大きな特徴と言えます。
ただ単に年齢を重ねているのではなく、
自分がこれだと決めた仕事のために、
とにかく全力を尽くしたり、
あるいは逆に、大事な人を守るため、
大切な仕事を辞めようとしたり、
彼らは常に本気で懸命です。
だからこそ葵が、兄との絆を
きっかけに椅子作りを始め、
それにこだわっている部分にも、
単なる子供っぽいわがままとは違う、
説得力あるこだわりを
感じることができるんですね。
また兄の出もまた、
高級家具店の経営者として、
恐ろしい脅迫への対処に、
感情と理性の狭間で苦慮するなど、
立場は違うながらも全力で、
仕事をするプロ根性が見えました。
そしてそのことが本作の
ポイントである「情念」を
よりいっそう引き立たせ、
本当の意味で大人が納得できる
クオリティの作品に
仕上がっていると感じましたね。
特に葵の表情や所作には、
趣味では出せない「本気の味」が
宿り切っていて、凄みがありました。
ガラスの椅子はこんな方におすすめな作品!必見
今や家には様々な家具や家電製品があり、
昔とは比べものにならないほど、
豊かな生活を満喫することができますが、
そうした家具の中でも「椅子」は
やはり特別な存在です。
国家の要人のポストも、「椅子」と
形容されますし、実際にも
机とはまた違う安らぎが、
イメージとしてあるような
感じさえあります。
本作は妹の兄に対する愛や
様々な情念がテーマの物語ですが、
椅子職人である葵の、
こだわりは凄いものがあります。
作業に向かう時の表情の凛々しさ、
思い出を軸に道を行くと決めた、
タフな精神などなど、
ビジネス漫画としても、プロの
仕事がどんなものか描かれており、
骨太の作品を楽しむことができます。
また、多くの「兄萌え」的作品は、
ヒロインは思春期頃ですが、
本作の葵は二十七歳であり、
非常にタフな性格のため、
良い意味で落ち着きがあります。
兄妹愛がテーマの作品を
読み進めたいけれども、
ヒロインがワガママじゃ嫌だと
考えている方にも
最適な一作だと思います。