タイトル | 雛鳥のワルツ |
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原作・漫画 | 里中実華 |
出版社 | 集英社 |
高校入学を果たしたひな子。
しかしその進学先は、
前年まで男子校だった学校で、
女子はたった四人しかおらず……。
恋愛のドキドキや駆け引き、
あるいは交流だけでなく
男子校のリアルな空気も描かれた、
新感覚のスクールラブストーリーです。
雛鳥のワルツのあらすじ紹介
新年度から共学になった
元男子校に入ってしまったひな子。
女子の新入生がたった四人という
結果は学校側も誤算でしたが、
ひな子たちは集中して、
男子生徒の好奇の視線を
受けることになりました。
もっとも、「女嫌い」の
委員長駿には思いやりもあり、
明朗な瑞希にも行動力があるなど、
頼れる同級生の姿も
段々と見えてきます。
そんな中新入生を対象とした
「宿泊研修」の話が出ますが、
女子だけで回りたいひな子と、
男子たちの意見が対立。
結果長距離走で、どちらの案が
正しいのかという
勝負をすることになりましたが、
途中で力が尽きたひな子は
気を失ってしまいます。
雛鳥のワルツのネタバレと今後の展開は?
高校に合格し、晴れて入学式を迎えた
百瀬ひな子。
しかし、今年から共学化された
元男子校だったため、
女子入学者はたったの四名。
もちろん先輩の女子生徒もおらず、
ひな子はいかつい男子たちに
囲まれて生活することになります。
しかし、数多くの男子たちに
ジロジロと見られる状況で、
隣席の和久井瑞希を、
女子と思って挨拶してしまうなど
なかなか冴えないスタートです。
もっとも学校でも、その辺の
配慮はしていたようで、
四人の女子は全員同じクラス、
マイペースな秦さんなどもおり
すぐに皆で仲良くとはいきませんが、
接点は一応ある感じです。
とは言え男子たちのちょっかいは
次第にエスカレートし、ついには、
更衣室でも盗撮されてしまいます。
これに怒ったひな子は
全力で盗撮犯を追いかけて
詰め寄っていきますが、
相手はまったく悪びれず
事態は進展しません。
そこに助け舟を出したのが、
クラス委員長で男嫌いの
駿だったのです。
駿はひな子に服を着せ、
気を落ち着けてくれたのでした。
雛鳥のワルツの読んでみた感想・評価
良くも悪くも現実的な
学校描写に、
男子校出身者も納得の一作です。
数百人、あるいは千人以上の
同性の人だけが集まり
長い時間をともにする、
「男子校」や「女子校」の
別世界的な感じは
良く作品のテーマになります。
最近では「男子高校生の日常」など、
男子高校生を描いた作品でも
大ヒットになることも多いですが、
ただ、「男子校もの」は
なかなかさじ加減が難しい、
特殊なジャンルとも言えます。
何故なら学校にもよりますが、「本気」の
男子校空気を全開にしてしまうと、
女性には親しまれ辛いですし、
かと言ってマイルドにしてしまうと、
リアルさがまったく足りなくなり、
読者にも不満を抱かれかねません。
しかし本作は、「元」男子校ながら、
圧倒的に「女性慣れ」していない、
独特の雰囲気や空気感を、
あますところなく形にしているので、
そのリアルさは強烈です。
一方、そんな濃すぎる「男子校空間」で
重圧を受けるひな子たちを救う構図が
出来上がるため駿たち「王子」の、
行動にも必然性が生まれ、
男子たちにとっても結果的には、
ありがたい形になっています。
また、学校側の計算違いもあり、
逞しい男子たちに囲まれつつも、
明るく芯が強いひな子たちも、
他の学園ものとはまた違う
「女子グループ像」が見え、
非常に興味深かったですね。
雛鳥のワルツはこんな方におすすめな作品!必見
「男女席を同じくせず」で、男女別学が
当たり前だった時代もありましたが、
今や少子化などの影響もあり、
共学化が当たり前になっており、
そうした学校を舞台にした作品も
多く見られるようになっています。
ただ創作の世界では、新たに入った
少数派の男女が「姫」や「王子」として
手厚く扱われることが多いですが、
実際はどうしても距離があり、
長年教鞭を取ってきた教師たちにすら
「遠い」存在です。
だから必然的に好奇の視線に遭ったり、
嫌な思いをしてしまうような、
「リアル」な距離感を描いた上で、
解決が示されている本作は、
非常に説得力を持っていますね。
リアル寄りの学園ものとしても
読み込める内容になっているため、
性別関係なく読めると思います。
また、クールでぶっきらぼうでとか、
あるいはやたら社交的だったりとか
創作ではお馴染みのキャラ付けに、
必然性が見えるのも、嬉しい点ですね。
周りのテンションが非常に高い中で、
そこであえて周りと違う反応を示し、
女性を手助けする側に回るには、
モラル以前に思考、視点の段階で
人とは違うものが必要なだけに、
とても納得がいきました。
共学にしてみたものの、
受け入れ態勢が不十分で、的な
語られない学校の不備や、
妙に現実的な部分なども
行間から読み解ける部分があり、
そのリアルさも興味深いですね。