タイトル | 七つ屋志のぶの宝石匣 |
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原作・漫画 | 二ノ宮知子 |
出版社 | 講談社 |
歴史ある質屋に預けられたのは、
一家離散した名家の御曹司!?
しかも主人は預かる条件として、
自分の孫娘との婚約を持ち出して……、
宝石に対する知識や造詣も、
直感的な美しさも同時に楽しめる、
古いものを見ていくのが面白くなる、
新感覚宝石ラブコメディーです。
七つ屋志のぶの宝石匣のあらすじ紹介
古くから続く質屋、「倉田屋」。
商売っ気のない主人に対して
その日持ち込まれたのは、
何と「人間の子供」でした。
名家として知られる北上家の章子が、
一家離散の憂き目に際して、
古くからつながりのある質屋に、
最愛の男子を預けようとしたのでした。
そうして倉田屋の預かりとなった顕定と、
その婚約者である志のぶは、
性格は正反対ながらも確かな目を持つ、
鑑定人としての道を歩み始めていました。
志のぶは実家である倉田屋の一員として
直感を活かして仕事をする中で、
顕定は宝石商の外商担当をする中で、
様々ないわくのある宝石や
その持ち主たちと出会うことになります。
七つ屋志のぶの宝石匣のネタバレと今後の展開は?
長い歴史を持つ質店、倉田屋。
しかしその主人は趣味に走り、
儲けを出すことは考えておらず、
原石をそのまま引き取るほどでした。
そんな彼のもとに、一人の気品ある
婦人が息子を伴って訪れます。
彼女の正体は名家として知られた
「北上家」の人間でしたが、
時流には勝てず一家離散という、
憂き目に遭ってしまいますが、
そこでつながりがある倉田家に、
息子を「質入れ」しようとしました。
無茶な話ではありましたが、
この名家の家系図に自分の親族をと、
野望を持った主人は、
もし戻って来ない時は自分の孫娘を
その子の婚約者にと約束を取り付け、
子供を預かることにしたのでした。
時は流れ、預けられた北上顕定は
宝石商「デュガリー」の外商として
超人気のイケメンスタッフになり、
その辣腕を振るっていましたが、
婚約者となった倉田屋の娘、
志のぶとの仲は接近していません。
物凄い女性人気を誇る北上に比べ、
志のぶはまだ女子高生で、夢は
「倉田屋」を継ぐことであり、
イマドキ風でもないため、
なかなか恋愛対象にはなりません。
さらに言えば理論派の北上と違い、
直感で宝石の真贋を見分ける志のぶは
商売上のスタンスも異なっていました。
とは言え志のぶの直感の精度は物凄く、
技巧に技巧を凝らして作られた
人造ダイヤをあっさり見破り、
盗難品をサファイアを見抜くなど
人智を超える部分も非常に多く、
北上や店が助けられることもしばしば。
そうやって志のぶが力を発揮する間も、
北上は親戚や婚約者も知らない目的に
向かうべく、自力である物に対する
調べを進めてもいたのでした。
七つ屋志のぶの宝石匣の読んでみた感想・評価
難しい要素も盛り込みつつ、
理屈抜きの直感も肯定する、
新感覚が嬉しかったですね。
古代遺跡や芸術品、そして宝石。
人の心を掴む名品は様々ですが、
中でも宝石や宝物の魅力は、
格別のものがあります。
そのため多くの作品でも、
宝物は特別な価値を持つものと
位置付けられてきましたが、
どうしても「石」にまつわる云々は
専門的な知識が必要で難しく、
説得力がもちづらい部分もあります。
しかし本作では、宝石の価値を見通す、
イマドキでない女子高生志のぶを
主人公に据えていったことで、
理屈抜きでの凄さを、簡単に
分かることができました。
その一方で専門的な知識を持つ
北上たちが実質的に「フォロー」し、
物語の本筋を進めていく形で、
海千山千の相手との駆け引きを
進めていく部分もあり、
深い楽しみ方ができるのも魅力です。
町の質屋を軸にしたお話ですから、
人類史を変えるようなお宝は
なかなか登場しませんが、
だからこそ現実味が強く、
出てくる宝石たちにも地に足の着いた
趣深さが満喫できました。
作品自体のテンポも非常に良く、
細かい部分で読み手を飽きさせない
工夫が網羅されているのもいいですね。
七つ屋志のぶの宝石匣はこんな方におすすめな作品!必見
宝石は多くの女性に夢を見せてきましたし、
男性の中にも「石」にとりつかれ、
王朝を傾けた皇帝がいたほど、
他にはかえがたいほどの魅力に満ちた、
素晴らしい品と言えます。
しかし太古の昔から、人間は「石」に
特別な価値を見出してきただけに、
宝石にまつわる知識等々は難しく、
下手に作品に登場させると、
せっかくの直感的なインパクトを
削いでしまうことにもなりかねません。
しかし本作は完全な直感で、
宝石の「コンディション」を見分ける
超特殊能力を持つ志のぶが主人公で、
小難しい知識がなくても、
面白さがすぐに分かります。
一方で「いわく」がある宝石の
にじみ出ている凄さをプロである
北上が読み解いていったりと、
知識がある人にとっても納得の
ディティールを維持しています。
「のだめ」とはちょっと毛色が
違う物語ではありますが、
古く格式あるものに愛を注ぎ、
その良さを広めていこうという意思は
本作からも感じ取ることができます。
宝石とは言ってもなかなか分からない、
しかし堅苦しい話は嫌という方には
まさしく最適な一作だと思いますね。