タイトル | オークション・ハウス |
---|---|
原作・漫画 | 小池一夫 叶精作 |
出版社 | 集英社 |
とあるオークションハウスの
凄腕マネージャーとして
名声を高めているリュウは、
実は忌まわしい事件への
復讐のためだけに
絶えず機会を待っていた……。
美術品という虚実が混ざり合い、
しかも大金が動く世界の中で、
圧倒的な本物であるリュウが、
あらゆる局面で活躍するのが
熱く痛快な、
傑作アクションストーリーです。
オークション・ハウスのあらすじ紹介
オークションハウスである
エドモンド社のマネージャーを勤める、
タフな美男子柳宗厳(リュウ)。
彼にはただならぬほどの
美術知識と観察眼があり、
しかも裏の世界にも通じていましたが、
今はある忌まわしい事件への
復讐をするために生きていました。
しかし、凄腕鑑定人であるリュウは、
敵だけではなく味方からも狙われ、
卑劣な罠を仕掛けられることに。
リュウの信頼が厚すぎて、
自分の後継者としての座が危ういと
危機感を抱く御曹司や、
自分たちが作る贋作を、
本物として売るために邪魔だと感じる
悪人たちがリュウを付け狙います。
しかしリュウは知識度胸だけでなく、
肉体的にも極めて優れており、
恐るべきナイフや銃の腕で、
裏社会のプロを退けていきます。
オークション・ハウスのネタバレと今後の展開は?
オークションハウス
「エドモンド・オリバー」の
マネージメント担当である、
柳宗厳(リュウ)。
彼は物腰が丁寧な紳士である一方、
何者にも動じない度胸と、
物凄い観察眼を持っています。
ある時はプロの画商である
ジョフリーが持ってきたという、
フェルメールの名画を贋作だと、
断定した上で、その作者と年代も
特定してしまうという冴えた技を
見せつけ事件を解決したほどです。
しかし、フェルメールの贋作を
「ダブル」で用意するという、
恐るべき計略をも見抜く彼には、
悲惨と言えるほどの過去と
復讐への強い思いがあります。
一方で彼は雇い主である会社にも
命懸けで忠誠を尽くす男であり、
その観察力で会社の危機を救っても、
一切それを誇ることはなく、
その真摯な姿勢がかえって、
周りからの評価に直結します。
しかし、そんなリュウの凄さを
疎む人間は身内にもいました。
エドモンド社の御曹司タッドは、
リュウの弱みを探るべく、
父親が元ナチスの名画狩り担当で、
自らは東ドイツの機関上がりという
ダネット中佐という凄腕を、
「調査」のために差し向けます。
ダネットはその絵画の知識を
フル活用して、周りに分かるように、
「贋作のオークション」を開催し、
タッドはその取り締まりにリュウを
関与させることで動かそうとします。
難色を示していたリュウでしたが、
話の流れもあり断り切れず、
一方のタッドたちは、恐るべき
巧妙さで罠を仕掛けていたのでした。
オークション・ハウスの読んでみた感想・評価
美術や芸術という大金が絡む
恐るべき「戦場」にありながら、
常に突き進み続ける達人リュウと、
同じく恐るべき腕を持つ敵たちの
強烈な個性が衝突する作品です。
特に日本では体育会系と文化系という
「枠組み」が学生時代からされており、
文化や芸術が好きだとなると、
イマイチタフではないように
イメージされることも少なくありません。
しかし、プロの贋作師が自分の職業、
そして存在意義を賭けて、
騙しを入れてくる傑作的贋物を見抜き、
あるいは悪人たちからただ一品だけの
物凄いお宝を守るにも宝を探すにも、
「力」は必要不可欠なものです。
本作はそのタフな方面に全力を
投じたような雰囲気があり、
とにかくアクションはド迫力で、
「説得力」もただ事ではありません。
しかも天才的な腕前を見せるリュウには
私利私欲ではなく、悲しくて重い
動機があるのが痺れます。
また、そんなリュウをつけ狙い、
あるいは愛する女性たちもまた、
規格外なほどにタフで愛があり、
そしてその悲しさには
別世界の人々の話ながら
胸が熱くなるものがありました。
さらに、そうした火が出るような
武闘派の個性がぶつかりながらも、
決して血なまぐさいだけにはならず、
その根底には深い美術への感情が
常に含まれているのも面白いところです。
今は3Dプリンターで何でもカンタンに
再現できる時代と言えますが、
本作が描かれた頃はそうでないだけに、
贋作への「幻想」もあいまって、
強烈な熱度が滲んでいるような
そんな気がしましたね。
オークション・ハウスはこんな方におすすめな作品!必見
絵画、彫刻、文書、そして宝石……。
骨董品や貴重な宝物とされるものは
世の中に様々ありますが、そうした、
特別な価値があると至ったものに関しては、
無数の贋物が出回るものでもあり、
また、仮に本物であっても、
争奪戦が行われることがあります。
いくら大金を積んでも結局は
「本物」を手に入れるには実力と強運が
ものを言う局面になるわけで、
だからこそ後ろ暗い陰謀が
語られていくことになります。
本作もまた、無数の宝物を軸に、
クールな達人、柳の復讐と、
悪の魅力溢れる敵の戦いを記すもので、
陰謀系の作品が好きな方から、
美術品や骨董が好きな方まで、
広い層にオススメできる傑作です。
同種の作品にはアニメ化もされた
「ギャラリーフェイク」がありますが、
本作の暗く乾いた感じは、
より殺伐でハードボイルドな
仕上がりになっているとも言えます。
また重厚かつ先の読めない展開や、
恐るべき達人たちの闘争などの本筋も、
大長編ならではの深さ、熱さがあり、
さらに言えば暗い情熱を抱く
殺し屋たちこそが得がたい宝物なのかと
思わせるだけの迫力がありますね。