タイトル | 夏の夜の夢 |
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原作・漫画 | 高見まこ |
出版社 | グループ・ゼロ |
男女の入れ替わり、
生まれてくるはずの
子供との出会い、
そしてつかの間の非日常……。
ファンタジーとしては
定番の状況に、
大人としてのリアルを重ねた、
思わずあるあると
頷いてしまうような、
異色にして
読み応えある短編集です。
夏の夜の夢のあらすじ紹介
東京の仕事に疲れ、
田舎のお宿で、
ブラブラと生きている男性。
しかし彼の正体は
東京でも名の知られた
凄腕のホストであり、
のどかな田舎でも、
その経歴を
知っている人はいました。
そして、
今はうだつが上がらないものの、
「実績」のある彼に、
一つの依頼がやってきました。
その内容は、
とある立場の女性を
「全力」で癒して欲しい
というものでした。
現役を引退した彼は、
もちろん戸惑いますが、
しかし話の流れ的には
どうしても断れず、
妻子ある身であるにも
関わらず、
女性を
「接待」することに……(「昼行灯」)
夏の夜の夢のネタバレと今後の展開は?
妻と別れた冴えない会社員、
小野寺は、
かつて妻との仲が円満だった頃に
一緒に行った桜の木を見て
感慨にふけっていました。
しかし、死んでしまおうかと
木に触ったその時、
突然雷が落ちてきて、
偶然近くにいた女性と
ぶつかってしまいます。
ショックとダメージが抜けて
その女性を見てみたところ、
目の前には自分の姿が。
どうやら雷に打たれて
ぶつかったショックで、
二人は中身が
入れ替わってしまったようです。
目の前の木に
雷が直撃するほどですから、
ゲリラ豪雨的な大雨にも
なっていたので、
二人はやむなく
小野寺の部屋に入ります。
小野寺の奥さんの
服を着たりして
ひと心地ついたところで、
小野寺のように
死にたがっていた女性は
小野寺の体のまま、
身の上を話し始めます。
彼女はどうやら
付き合っていた男性に
フラれてしまったらしく、
しかもお客さんの
お金をその相手に貢いでいたという
どんぞこの状態でしたが、
今や女性の体になっている
小野寺にはどうすることもできず、
とりあえずお風呂に入ることに。
女性に対する
マナーということもあって、
目隠しをしながら
体を洗うことになりましたが、
そのシチュエーションに
二人はムラっとしてしまい、
しかも「急所」を知っていたために
物凄い快感を味わうことになりました。
大満足の二人でしたが
しかし、
お金を使い込んでしまった
女性の「罪」は
消えるわけではなかったのでした。
夏の夜の夢の読んでみた感想・評価
オーソドックスな
非日常ものかと思いきや、
かなりうまい具合に
ひねりが効いていて
ビックリしました。
日常から非日常への逃避、
といった定番の物語でも、
主人公は少年や
気楽な学生ではないので、
実に色々と
やることがあったりするのも、
「あるある感」が実にありました。
しかも、
相手の事情も分かるために、
ヤバい状況であっても
断り切れずに、
さらに言えば
「対処できてしまう」のが
厄介だったりするんですね。
そして、
一度引き受けてしまったからには、
大人として
バックれることも
難しかったりと、
非日常感満載な
短編集にも関わらず、
実に(良い意味での)嫌なリアルが
描かれているのが良かったですね。
一方、うまく話を進めていくと、
美女やイケメンと
イイコトができる流れになったりと、
大人ならではの
いい感じの出来事もあったりするので、
嫌な事態だとも
言い切ることができないあたりの
「あるある感」も実に面白く、
気付いたら
全編読み切ってしまいました。
夏の夜の夢はこんな方におすすめな作品!必見
将来の夢は、と聞かれても、
子供の頃と大人になってからでは
随分と違ったりしますが、
夜の夢にしても
歳を取ってくると、
昔とはちょっと違う感じに
なってしまうものです。
人生経験や感情が
そうさせるのかも知れませんが、
多くの場合は一筋縄では
いかなくなっているような気もします。
さて、本作「夏の夜の夢」も、
ボーイ・ミーツ・ガール的な
青春ものとは、
かなり趣きを異にしていますね。
「君の名は」でも有名になった
「入れ替わりもの」にしても、
男女で早速色っぽい
関係になってみたり、
「本当に」人には言えないような
秘密を抱えていたりと、
いかにもオトナな感じです。
一方で、
各話に登場してくる大人たちも、
ただ歳を重ねているのではなく、
色々な積み重ねや
葛藤を経てこうなっている
というのが分かる、
本当の意味での
「アダルト」ですので、
非日常的な題材であっても、
どこかリアル感がある描写が
欲しいといった方にも
オススメできる仕上がりです。
また、直接的な描写自体は
おとなしめですが、
体位やシチュエーションの
チョイスが非常に巧みなため、
ベッドシーンに
かなりのエッチさがあるため、
セクシーな作品を
読みたい方にも
かなりオススメできる
短編集となっています。