タイトル | 項羽と劉邦 |
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原作・漫画 | 横山光輝 |
出版社 | 潮出版社 |
秦王朝末期――
始皇帝が崩御し混迷する天下に
2人の英雄が出現する。
項羽、そして劉邦。
結果だけは有名なものの
その詳細はあまり知られていない
漢王朝の成り立ちを
史実に忠実に
巨匠が堂々と王道を描く
歴史大河ドラマ!
項羽と劉邦のあらすじ紹介
秦の始皇帝・・・
中華を統一し、覇道を極めた彼は
夢や天候におかしな予兆を見る。
何かを暗示するような数、
雲間から漏れ光る異様な運気・・・
それこそは天命が移り
秦王朝が滅亡するサインであった。
楚の将軍の家系に生まれ、
豪胆な性格と圧倒的な武威で
世を覆す力を感じさせる項羽。
小役人に過ぎない身分で
どこか頼りないが
周囲から愛され人を集める劉邦。
数多の豪傑・智者が
この2人を中心に集い、巡り
歴史を刻んでゆく――
項羽と劉邦のネタバレと結末(最終回)は?
始皇帝の死後、
腐敗していく一方に見えた秦ですが
そこはやはり大国だけあって
まだまだ人物が残っています。
歴戦の将・章邯――
わざと敗走を続けて敵を誘う、
『緩兵の計』を用いて
項羽の伯父・項梁を撃破。
実はこの時点で
項羽は総大将ではなかったのですが
項梁の死によりトップとなります。
また高い功績を逆に危惧されて
一族を皆殺しにされた章邯が
降伏を決意したことにより
秦は完全に反撃の芽を失うことに。
その後も項羽の下で
劉邦との最前線を守りますが・・・
秦王・子嬰――
奸臣たちを誅殺し善政を敷きますが
時すでに遅く
時代の変遷を感じて劉邦に降伏。
劉邦は子嬰を厚遇するものの
これに反発した項羽は子嬰を処刑。
項羽からすれば、
始皇帝も子嬰も『秦のトップ』。
処刑は民たちに喜ばれこそすれ
不信を招くなどとは
想像もしていなかったようで・・・
項羽と劉邦の戦いは
決して教科書から想像するような
単調なものではなく
こうした旧秦の人物たちが
大きく影響して
天下の行く末を二転三転させていく様子が
詳細に描かれていくのです。
項羽と劉邦の読んでみた感想・評価
『三国志』でもおなじみの
歴史上の人物たちを
人間臭く描くユーモラスさは
この作品でも健在です!
劉邦は割と俗物で
秦都・咸陽を陥落させた際
財宝や後宮の女性たちを見て
無邪気に喜びますし
そうした、だらしなさを
張良ら家臣に諌められて
叱られた子どものような表情を
見せてくれます。
さらには
自分の判断ミスで敗戦したのに
部下のせいにして八つ当たりしたり
ちょっともう
「この人ダメじゃないか?」
と思ってしまう場面もありながら
全体としては不思議と
愛嬌を感じてしまうのは
さすが巨匠の見事な描写。
項羽もまた
他の資料などで見る
傲慢で残忍な性質は
しっかり描かれているものの
甘さや優柔不断さによるミスも
多く描かれているため
どこか可愛らしい
憎めない人物の印象を受けます。
項羽・劉邦以外も魅力的で
1番お気に入りになったのは
項羽の軍師・ハンゾウでしょうか。
項羽陣営の問題点や
劉邦軍の計略を
ことごとく看破し対処するのに
項羽の甘さによって
せっかくの深謀遠慮も台無しになり
カンカンに怒る様子は
ダメ息子を叱る父親みたいで
ついクスッとしてしまいました。
・・・本人は笑い事じゃ
なかったでしょうけど。
こんな方におすすめな作品!必見
項羽と劉邦について
あまり知らない人から
割と知ってる人まで
全ての人に必見の作品です!
「韓信って割とクセのある奴だなあ
そら粛清されるわ」
「知ってる武将以外にも
有能な人って結構いたんだな」
例えばこんな風な
平坦な資料の文を見ているだけでは
決して出てこない感想が
活き活きとした描写によって
自然と浮かんでくるはずです。
・・・もちろん
感想の内容は人それぞれですが。
そして何より
広大な舞台で繰り広げられる
多角的な戦闘!
秦が滅亡したことで
一時的に復活している諸国も
戦略に影響を与えており
どこか広い場所で
互い大軍を率いて激突・・・
などというものではなく
多数の戦線が同時に動く
複雑な戦略ながら
わかりやすく描かれています。
優秀な武将の数は
お互い限られていますから
どこかが手薄となり
ふとしたことで戦局が一変。
このシーソーゲームの妙味も
本作だからこそ
伝わってくる魅力の1つ。
貴方の知っている姿とは
まったく別の歴史が
本作で体感できるはずです。