タイトル | イグアナの娘 |
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原作・漫画 | 萩尾望都 |
出版社 | 小学館 |
親子の確執に苦悩する
1人の女性の半生を
赤裸々に描いたストーリー・・・
ファンタジーな切り口で
禁忌とされてきた問題に
正面から立ち向かう、
『花の24年組』の代表格
萩尾望都が贈る
マンガ史に名を刻む超傑作!
イグアナの娘のあらすじ紹介
青山家の長女・リカは
どうしたわけか
イグアナの姿をしている――
ただしそれを知っているのは
母・ゆりこと本人だけ。
周囲の人間からは
リカが普通の人間にしか
見えないのだという・・・
ゆりこはわが子を
化け物としか思えない、
リカも母から見放された
自身の姿を呪いながら育つ。
互いに互いを傷つけながら
誰にも理解されない母娘・・・
普通の『人間』である次女が産まれ
ますます確執を深める
ゆりことリカ。
鏡に映るイグアナの顔を見ながら
リカは自分に自信が持てず
消極的な生活を送る――
イグアナの娘のネタバレと結末(最終回)は?
周囲からはリカが『人間』に、
それもかなり可愛い少女だと
認識しています。
当たり前の話ですが
リカはイグアナではなく
母娘の目が変なのです。
しかし
周囲の目など母娘にとっては
意味をなしません。
リカ・ゆりこにとって
リカがイグアナであることは
『真実』なのですから・・・
自分の『正体』が露見するのを怖れ
恋のチャンスにも臆病なまま
青春時代を浪費したリカでしたが、
やがて
「他の人間も動物に似ている」
という謎の境地に達し
結婚して子を産むほど
前向きな生活が可能になります。
・・・が、
産まれた子は普通の『人間』でした。
イグアナである自分とは
まるで違う生き物のわが子に対し
愛情を持てず苦悩するリカ。
そんな折、ゆりこが亡くなり
葬儀にリカも出席しますが
母の死に顔が
自分と同じイグアナに見えて
驚くと同時に
ゆりこも苦悩していたことを
悟るのでした――
イグアナの娘の読んでみた感想・評価
ファンタジーとリアルが交錯する
不思議な雰囲気の作品です。
主人公・リカの視点では
自身がイグアナであることは
比喩ではありません。
ほぼ全てのコマで
彼女はイグアナとして描かれるため
読んでいるこちらも
何故か人間社会に生まれた
変なイグアナの話に思えて
ユーモラスな雰囲気のまま
リカの人生を追体験するのです・・・
実際、
他人にも動物に似ているのがいる
というリカの独白は
確かにそういう人がいるな、と
素直に笑ってしまいましたし
結婚に差し掛かる頃には
このままハッピーエンドで終わるかと
本気で思っていたのですが・・・
そこからの怒涛の展開には
鳥肌を覚えるほどです。
コミカルな楽しさから
急転直下して
「親子とは何か」という
厳しい質問を投げつけてきます。
読み終えた途端に
もう1度読み返して
もっと深く読み込もうと思い、
リカ・ゆりこそれぞれの視点が
心の中に入り込んで
読む度に違った余韻が湧いてくるのです。
こんな方におすすめな作品!必見
マンガ業界を大きく変えた作品とも言われ
日本のサブカルチャーを語る上でも
絶対に外せない、歴史に残る名作です。
ジャンルを問わず濫読する
真のマンガ好きなら必読!
と言ってもいいでしょう。
また、この作品が作られた背景として
女性の社会進出をうたう世間と
家庭内との価値観の衝突が指摘されています。
親子関係とは切っても切れないもので、
だからこそ確執が起こると
どんな他人よりも溝が深くなる・・・
今なお「親不孝」は
社会的信用さえなくしかねない
絶対的なタブーであり、
人知れず悩む方も
いるのではないでしょうか?
そんな人に言えない苦悩と
どう向き合い、どう克服したのか
この作品は
母親を愛せない作者の心情を
克明に記録したものでもあるのです。
『日出処の天子』
『エロイカより愛をこめて』
などなど
この時代の少女マンガには
現在も色あせない良作ぞろい。
その中でも短編ゆえに
とっつきやすい本作から、
マンガの古典に挑戦してみては
いかがでしょうか?