タイトル | べしゃり暮らし |
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原作・漫画 | 森田まさのり |
出版社 | 集英社 |
大御所マンガ家が綿密な調査と
緻密に作り上げられたストーリーで
「笑いとは何か?」を追究する。
お笑いの世界の裏側にある
必死の苦悩や葛藤を
赤裸々に、大胆に描いた作品。
泣けて、笑える、
漫才というジャンルに
本気で向かい合った超傑作!
べしゃり暮らしのあらすじ紹介
「学園の爆笑王」を自称する
お笑い好きの高校生・上妻圭右(けいすけ)。
ウケるためなら何でもやり、
教師を敵に回すことさえ恐れず
校内放送で笑いを取る。
他人を笑わせることに関しては
ある種の自惚れさえ抱いていた圭右。
しかし元芸人・辻本の転入から
プロの世界を強く意識しはじめ、
その厳しさに触れるように。
笑いの質を上げるために
憎い相手ともコンビを組むし
逆に好きな相手と別れることもある。
想像よりはるかに真剣な芸人の世界。
ライバル心から辻本を避けていた圭右は
本気でお笑いの道を進むべく
わだかまりを捨てることを決意する――
べしゃり暮らしのネタバレと結末(最終回)は?
元より芸人の夢を抱いていた圭右が
本気になれなかった理由は
家の複雑な環境にもありました。
「きそば上妻」の店主でもある父は
もともとはお笑いが大好きで
売れない若手芸人を支援していたほど。
しかしあるコンビから名誉毀損レベルの
度がすぎたネタにされてしまったことで
食品衛生を疑われ、客数が激減。
さらには圭右の母が過労で
帰らぬ人となってしまったことで
拭えないしこりができてしまったのです。
そんな理由から
踏ん切りをつけられずにいた圭右ですが
辻本のツテで目の当たりにした
プロの厳しさに圧倒されてからは
迷いを捨て、本気でプロを目指すことに。
最初、プロからも「学園の爆笑王」と言われ
無邪気に喜んでいたのですが
その真意に気付いて覚悟を決めます。
圭右の背中を押したのは
辻本の、お笑いへの真剣さを痛感したこと。
かつての相方・静代との漫才は
圭右でさえ認めざるをえない面白さ。
それでもコンビ解消した理由は
静代を好きになってしまった辻本が
本気で意見をぶつけられなくなったため。
ストイックなまでの向上心に応えるべく
圭右は本心から辻本を認め、
相方として共に最高のコンビを目指すのです。
べしゃり暮らしの読んでみた感想・評価
正直、最初は絵柄とのギャップが激しく
かなり戸惑いました。
もっとも、そのギャップが面白くて
ついつい読み進めてしまったのですが。
圭右を逆恨みした男子が
女子の着替えを盗んだ挙句
濡れ衣をかぶせてくるシーンがあり、
もうこれは乱闘だな!と
派手なバトルシーンを待ち構えていたら
これがまったく予想外の展開に。
女子の着替えを盗んだこと自体を
ウケ狙いと勘違いした上
自分の方がもっと面白くできる!と
斜め上な敵愾心を燃やして
盗まれた着替えを自分で着用し
スカートをはいてボケを放つという
まさかのギャグ展開に。
この絵でそのオチなの!?と
あまりの衝撃に、逆に
続きが気になりました。
主人公である圭右は
お笑いの天才である反面、
ピントがズレているところもあり
安易に下ネタに走ってしまうなど
年齢相応な未熟さがリアルで
すごく好感が持てます。
ご都合主義な天才設定に
冷めてしまう、ということは
この作品に限っては皆無で
ドン引きされても下ネタを放つ姿に
「いいから早く成長しろ!」と、
つい読みながらツッコんでしまい
むしろご都合主義を望んでしまう
お笑いがテーマならではの
絶妙な演出が最高です。
こんな方におすすめな作品!必見
森田まさのり先生の画風は好きだけど
不良もののイメージが大きく
避けていたという方には朗報。
ある意味では不良ですが
一貫してお笑いのことしか考えていない
これまでとは違う主人公です。
それでいて表情の巧さは変わらず、
ドラマにぐいぐい引き込まれます。
感動できるドラマが主軸でありながら
お笑いを扱っていることから
肩肘張らず楽しめるのも魅力で、
作中でも
そのままコントになるレベルのギャグが
逐一セリフで出てきます。
とんでもないことに
作中で面白いとされるシーンでは
本当に面白いセリフが書かれ、
スベってるシーンでは
本当に寒いギャグが書かれているんです!
その気になれば
漫才をしているシーンだけ飛ばし読みして
お笑い番組代わりに楽しめるかもしれません。
がっつり読み込んで感動するもよし
気軽にギャグで笑うだけもよし
その日の気分で違う楽しみ方ができるのです。
どちらの楽しみ方をするにせよ
キャラたちは困難にも前向きで
好印象な人物ばかり。
嫌な奴っぽいキャラも
ちょっとした場面で
真面目さや根性を見せてくれるので
元気になりたい、気分を上げたい、
後味の良いマンガを読みたい方には
とてもピッタリな作品です。