タイトル | 蜜味ブラッド |
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原作・漫画 | 蜜樹みこ |
出版社 | 小学館 |
吸血鬼事件が多発する町で、
自分のお隣にやってきたのは
吸血鬼小説の大ヒット作家。
吸血鬼であるが故の辛さや
種族が違うが故の葛藤、
そして悲劇的な部分を含む物語。
極めて王道の吸血鬼物語を、
現代流の装いを持って見せる
傑作異種族恋愛漫画です。
蜜味ブラッドのあらすじ紹介
女子学生の空園 ひなたの
お隣に、大人気作家の
時永 潤也がやって来ました。
変に古風でからかいグセのある
時永先生のことを、
ひなたは信用していませんでしたが、
暴漢に襲われた際に
助けて貰ったり、
書いている小説に対しての
意見を交わしあったり
いくつかの出来事を経て、
徐々に心を通わせていきます。
しかし、時永先生が
吸血鬼であるという疑念は濃くなり、
一方終息したと思われた
吸血鬼事件も再び、より悲惨な形で
起こってしまうのでした。
蜜味ブラッドのネタバレと今後の展開は?
女学生、空園 ひなたが住む街では、
「吸血鬼事件」が相次いで発生し、
注意が呼びかけられていました。
しかしひなたはまるで気にせず、
近頃大ヒットの吸血鬼小説にも
関心を示すことはありません。
そんなひなたが家に帰ると、
靴置き場に見慣れぬ下駄があり、
和服に古めかしい話し方をする
初対面の青年の姿がありました。
編集者らしい女性との会話で、
その男性が吸血鬼小説の
時永 潤也だと気付くひなたですが、
そんなひなたに対して時永先生は、
彼女の唇に触れて軽口を叩き、
立ち去ってしまいます。
やられたひなたの側とすれば
印象は最悪という感じですが、
親から近所の案内を頼まれたため、
時永先生の家に行くことに。
しかしひなたはからかわれ、
不誠実に見える先生の態度が
嫌いだと言っても、
「甘い香りがする」と
切り返されてしまいます。
積極的な割に
妙に保守的な先生の態度と、
小説の一致点が気になっていると、
夜、時永先生が出歩いているのを
ひなたは目撃してしまいます。
その間も吸血鬼騒ぎは拡大を続け、
いよいよ身近に危険を感じる中、
ひなたは夜歩きを続ける先生の
後をつけていきますが、
いつの間にか見失ってしまい、
自分が暴漢に襲われることに
なってしまいました。
そこに現れたのが時永先生で、
ド迫力で暴漢を撃退しますが、
吸血鬼騒動は終わることは
なかったのでした。
蜜味ブラッドの読んでみた感想・評価
色々な吸血鬼ものの作品を読み、
ギャグ系の作品も随分楽しみましたが、
やはり王道のストーリーはいいですね。
まず、完全に和風で、大正ロマンな
雰囲気すら漂わせている時永先生が、
真っ正直に吸血鬼でいいですね。
「時永」という苗字も
吸血鬼の特性とかかっている感じですが、
やはり昔身につけた様式はなかなか
変えることができないからか、
原稿用紙に執筆し、
編集者に原稿を取りにこさせる的な、
クラシカルなスタイルを崩さないのも
後から読めば「伏線」だったりするので、
読み返しても飽きることが
まったくありませんでした。
そして、ヒロインのひなたちゃんの
勝ち気ながら純真で、
男性に慣れていない感じも、
吸血鬼もののヒロインとして
まさにベストといった感じです。
この正統派な二人が、
ひどい出会いを経て徐々に
互いに心を通わせていく、
緩やななテンポと情熱的な展開は
読んでいて本当に心地良く、
グイグイと引き込まれるようでした。
吸血鬼であるが故の悲痛や葛藤、
そして心が近付いたからこそ、
人を避けてしまう宿命……、
まさに王道全開の物語ですが、
現代的な装いも多くあって、
決して古臭い感じはせず、
耽美さを滲ませる絵柄ながらも、
奇をてらうところがなく、
安心してドキドキ感を楽しめました。
蜜味ブラッドはこんな方におすすめな作品!必見
人や家畜の血を吸って生きる動物や昆虫は、
世界に数多く、そのために様々な
「吸血鬼伝説」が作られてきました。
「ドラキュラ」以降、格好良いイメージが
定着した感じではありますが、一方で、
「光に弱い」、「弱点が多い」等々の、
様々なウィークポイントがあることから
最近ではコメディチックなキャラとして
描かれることも少なくありませんが、
やはり人とは違う「寿命」の関係など、
ほろ苦い物語の方がより「らしい」
部分があるのは否めません。
本作「蜜味ブラッド」は、
現代風な装いを持たせつつも、
主人公はミステリアスな美青年、
ヒロインは恋愛経験もない少女と、
完全に王道で進めてくれており、
しかも吸血鬼ならではの
生きていく上での苦痛や悲劇も
しっかりと描き込まれていて、
正統派の吸血鬼物語を
読んでみたい方には
まさに最適な一冊と言えます。
実際の吸血鬼が吸血鬼小説を書いたり、
街中で吸血鬼事件が起こるなど
かなり一般市民との距離が近く、
「人里離れた洋館」だったり、
「使われていない廃城」といった、
昔ながらの設定には頼っておらず、
そのために現代ものとして
破綻がないのも良いところですね。