タイトル | のんちゃんのり弁 |
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原作・漫画 | 入江喜和 |
出版社 | 講談社 |
普通の仕事はすぐに辞める
売れない小説家の夫に愛想を尽かし、
実家に戻ることにした小巻。
しかしいざ仕事をと思っても、
なかなか条件に合う仕事はなく……。
三十代の女性が子供を抱え、
生きることの難しさ、面白さを
赤裸々に描き抜いた、
映画化もされた、リアル感ある
傑作ホームドラマ作品です。
のんちゃんのり弁のあらすじ紹介
主婦として家庭をあずかっていたものの、
自称小説家である夫の甲斐性のなさに、
愛想が尽き離婚を決意した原小巻。
しかし実家に戻って、いざ仕事をと
求人をあたってみるものの、
なかなか良い条件がなく、
ようやく見つけた仕事も、給料が
とても安かったり、危険だったりと
マッチする感じがありません。
主婦として暮らすうちに、
家の中のこと以外、何も
分からなくなっている自分に、
情けなさを感じる小巻ですが、
しかし落ち込んでばかりもいられず、
毎日を頑張っていきます。
のんちゃんのり弁のネタバレと今後の展開は?
甲斐性のない夫範明に愛想を尽かし、
娘のり子を伴って、
人生の再スタートを切ることを
決意するに至った原小巻。
懇願する夫を振り切って、
母の実家に身を寄せて
ひとまず住み始めた小巻ですが、
母フミヨは割と冷淡であり、
加えて近所の目なども
なかなかに気になります。
そこで何か職を見つけようと、
方々あたってみる小巻ですが、
なかなか条件に合う仕事はなく、
ようやく決まった不動産屋の
パートタイム勤務だけでは、
給料日まで持たない感じです。
そのためさらに金策を
考えているところに
昔の同級生と会ったり、
そのことをネタにされて
母親と口論になったりしますが
ようやく良い条件の仕事を見つけます。
ウェイトレスで時給も二千円、
しかもママさんも愛想が良く
実に良い職場のように思えましたが、
しかしその店の方針と客層は、
小巻が思っていたのとは随分違う、
非常に厄介なものだったのです。
ママさんの要求も客の態度も、
どんどんエスカレートしていき、
客とのデュエットになった時、
あることをされた小巻は
ついに感情を爆発させるのでした。
のんちゃんのり弁の読んでみた感想・評価
シングルマザーである現実を
あますところなく描きつつ、
ギリギリのところで辛くなく、
笑いを交えて読める、
絶妙のバランスが素晴らしいです。
本作のキモは第一に「設定」です。
甲斐性のない夫と別れて、
自分の母親と子供と三人で
暮らし始めた小巻ですが、
法的にはまだ離婚はせずに、
しかも慰謝料を貰ったりもせず、
裸一貫の再スタートなんですね。
しかしまだまだシングルマザーが
概念として定着し辛い頃の話、
再就職をするにも簡単ではなく、
ようやく見つかった仕事は、
「女」を売り物にする必要があるなど、
とにかく厳しい状況が分かります。
しかしただ辛いだけではなく、
いい感じの勤め先が見つかったり、
人柄を評価してくれたりと、
頑張っていれば必ず誰かが、
評価してくれる温かみは
胸が熱くなるものがありました。
もっとも「母」であり
家計の第一の担い手として
仕事をし始めたとしても、
外見はもちろん内面も
根本的には変わることはなく、
そのためしがらみがあるんですね。
またそのしがらみにしても、
無情に断ち切ればいいのかとなると
判断には難しい部分もあり、
そういった部分のウエットな感じが、
キャリアウーマン系の物語とは
また違う良さとして読めました。
のんちゃんのり弁はこんな方におすすめな作品!必見
付き合うことも別れることもある、
結婚しても離婚することがあるのが、
男女の仲というものですが、
ほとんどの場合、別れてそれですべて
一件落着ということにはなりません。
子供の養育費などの問題もありますし、
仮に引き取れた場合にしても、
一人で養うという難しい問題があります。
特に長い間仕事から離れて、
主婦をやっていた女性の場合、
他の能力が高くても、まず就職自体が、
相当難しいという現実があります。
本作の主人公、小巻さんも、
美人でスタイルもキップも良く、
家事も上手で気立ても良いのですが、
仕事から離れた期間や年齢などが
ネックとなってしまい、なかなか
仕事に就くことができません。
もちろんその事と並行して
「元夫」のことなども色々と
解決せねばならないなど、
現実的な要素が非常に多く、
甘くない現実を背負うタイプの
母親の物語を楽しめます。
「都合の良い」展開が少ないため、
小巻が示す感情も「素」であり、
家庭にもリアル感がありと、
しっかりと作られた物語を
一気に楽しみたい方には
オススメと言える作品です。
また、仕草や表情が活きていて、
話の「つなぎ」の部分にも
まるで違和感がないなど、
細部にわたっての完成度も
見逃せない一作と言えます。