タイトル | シンデレラの靴、あります。 |
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原作・漫画 | 藤井明美 |
出版社 | 集英社 |
合わない靴がズレたことで、
セクハラ上司のカツラを外し
クビになってしまった羽鳥つばさ。
怒りが収まらず歩いていると、
またも靴が飛んでいってしまい、
今度はイケメンにぶつけてしまうが……。
お堅いイメージのある業界の話を
厳しさだけではなく優しさと配慮で
丁寧丹念に描き抜いた、
新機軸のお仕事&恋の物語です。
シンデレラの靴、あります。のあらすじ紹介
上司のセクハラにキレて、
カツラを飛ばして
クビになった元OL羽鳥つばさ。
合わないパンプスを無理して
履いていた彼女は、飛ばした靴を、
イケメンに直撃させてしまいますが、
彼の「作業」によって、
今までとはまるで別の
履き心地を得ることになります。
しかし、せっかく直った靴が
またダメになるほど歩き回っても、
なかなか再就職先は見つからず、
路頭に迷いかけた時に、
街中で再びそのイケメンを見つけ、
そこから偶然が重なったことで、
恩人シューフィッター柿島が
事実上切り盛りする店で
働き始めることになります。
見た目の冷たさよりもずっと優しく、
素晴らしい仕事をする柿島ですが、
一方で彼には重い過去があり、
そこためにつばさに対しても
ある意識を抱いていたのでした。
シンデレラの靴、あります。のネタバレと今後の展開は?
二十四歳の元OL、羽鳥つばさ。
勤務先の社長の息子である専務に、
長い間セクハラされており、
ある時キれて反撃しかけたところ、
靴が外れてしまいその弾みで
専務のカツラを掴み、
外してしまったためクビになりました。
しかし苛立ちが収まらないと、
大股で街を歩いていると、
再び靴が外れてしまい、
盛大に飛んでいった靴は、
前にいる男性の頭を
直撃してしまいます。
しかしその相手の若いイケメンは、
サイズの合わない靴と、
ボロボロになったつばさの足を、
じっと凝視したかと思うと、
何やら妙な「作業」を
開始していきます。
しかし彼の腕は本物で、
さっきまで合わなかったパンプスが
バッチリフィットするようになっており、
その快適感は別の靴に
変わってしまったかのようでしたが
彼はすぐに去っていきました。
その後つばさは再就職先を探すべく、
全力で奮闘していきますが、
どこでも断られてしまいます。
ただそんな中、過日パンプスを
直してくれた青年の姿を見つけ、
名前だけでもと言って追いかけますが、
やはり靴がずれてしまい、
路上でスライディングを
する羽目になってしまいます。
そこに通りがかった雰囲気ある人は
靴屋さんの店主だったようで、
つばさを治療してくれましたが、
なんと彼女の靴を直してくれた青年は
この店のシューフィッターだったのです。
今まで「靴」で苦労をしてきたつばさは、
早速この店の求人に応じますが、
やはり「プロ」的な部分が必要で、
一筋縄ではいかない業務なのはもちろん、
個人的な難しい事情も、
様々に絡んでいたのでした。
シンデレラの靴、あります。の読んでみた感想・評価
前の職場で騒動を起こしてしまった
OLが良い職と男性に出会う、
王道的な物語でありながら、
全体的に「柔らかさ」があり、
読む人への安心感が
滲んでいるのが良かったですね。
本作のポイントは、何と言っても
靴職人の柿島さんです。
職人と言うとどうしても寡黙で
頑固というイメージを抱きがちで、
実際に柿島さんもそうなのですが、
彼には単に意思を通すのではなく、
人を傷つけまいとする
柔らかさが常に見えるんですね。
経験のなく勝気なつばさへの
教育という面にしても、
職業的に言ってしまえば、
いくらでも厳しくきつく
できるところであっても、
ごく自然に配慮ができています。
こうした対応はなかなか
訓練では身につかないものだけに、
柿島さんのプロとしての本物さに、
そして店全体の雰囲気の良さに、
本当に引き込まれてしまいました。
一方で拭い切れない重い過去や
わだかまりなどの部分もありますが、
ただハードに攻めるだけでなく、
辛さをつばさに見せまいとする
優しさがここでも出ていて、
辛すぎないのが良かったですね。
シンデレラの靴、あります。はこんな方におすすめな作品!必見
現代の生活においては、服とならんで、
人にとって重要な装備は、
なんと言っても「靴」ですね。
家の中でも土足といった、海外はもちろん、
日本でも、学校では上履きを履き、
内勤でも靴を履くことになっています。
しかし、足の形は人それぞれですから、
既製品ですとどうしてもフィットせず
足を靴に合わせるような、
辛い状況になることも
珍しくはないのが現実です。
本作はそうした中にあって、
職人気質の靴屋さんを描いたお話です。
柿島さんは無愛想でクールな感じですが、
仕事にはとても徹底的で腕が立ち、
「最善」へと導いていきます。
普段何となく気付いてはいつつも、
ずっと放置してきた「足回り」の
重要さを再認識できるという意味でも、
本作は非常にオススメできる一作です。
一方で素晴らしいプロである柿島さんは、
自分の仕事には徹底的でありつつも
威張ったり高圧的にはなったりせず、
前職でセクハラなども経験した
つばさにとっても実に
いい先輩なのが素晴らしいですね。
とかく精密かつこだわりが必要で、
結果必然的に「職人」的要素が
顔を出してしまうのが、
靴や楽器作りの難しさですが、
本作はその堅苦しさがなく、
すんなり情熱を汲むことができます。