タイトル | ネオン蝶 |
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原作・漫画 | 倉科遼 東克美 |
出版社 | グループ・ゼロ |
高校を出たばかりの少女、桜子は、
憧れの叔母を頼る形で
池袋のスナックで働き始めるが……。
ハードで配慮や駆け引きも必要な
「ネオン蝶」の世界を、少女の
成長とともに描き抜いた、
実写映画化もされた、
「夜の世界系」漫画の傑作です。
ネオン蝶のあらすじ紹介
母を早くに亡くし、しかもその直後、
父は浮気相手との再婚をするという
厳しい家庭環境にいた少女、桜子。
桜子には憧れの叔母がおり、
彼女のように美しくなりたいと、
叔母がやっているスナックに入るべく、
高校卒業後上京を決意します。
その叔母、佳代は、可愛い姪っ子を
心底から歓迎し、銀座に勤めていた
自己の経験を活かす形で、
ホステスとしての心得を伝授しますが、
身内が店主という状況でも、やはり
桜子にとっては過酷な仕事でした。
しかも佳代は店の売り上げなどにも
非常に苦慮しており、借金を抱える中で、
佳代の処女を金融業者に捧げてしまいます。
しかし心ならずもひどい経験をした桜子は、
その後から急速に、「ネオン蝶」として
素質を開花させ始めるのでした。
ネオン蝶のネタバレと今後の展開は?
故郷を出て上京する少女、桜子。
しかし彼女は夜の世界の女性、
「ネオン蝶」である叔母に憧れ、
前々からその世界を意識していました。
地味な自分の母と比べ、華やかで
美しかった叔母の姿は、
桜子の印象に強く残っていましたし、
叔母である佳代もまた、
抜群の素材の良さを持つ桜子に
一流の素質があると見抜いていました。
もっとも桜子が上京したのは、
母が早くに亡くなり、そのすぐ後に
父が再婚すると言い出したりと、
重い背景があってのことでもあり、
だからこそ佳代も本気で桜子を
プロにしようと考えていました。
さて、記念すべき初出勤、
元々大人しい桜子は、店のノリに
ついていくことができず、
まったく翻弄されてしまいますが、
その後も毎日佳代は、ホステスの
実践的な心得を教えてくれます。
また桜子は男性経験も皆無であり
完全な「処女」でしたが、
その部分についても佳代は、
その時が来るまで大事にと
気遣ってくれるのでした。
とは言え、今まで夜の仕事が
まったく未経験の状態での
スナック勤めはかなり過酷で、
現実と理想のギャップも
感じていた桜子ですが、
彼女にも新条という客がつきます。
しかしウブな桜子はなかなか
積極的にはなれず、
一方、店の売り上げが落ちた佳代は、
金融会社社長との話の中で、
桜子が処女だと伝えてしまい、
桜子の初体験に値がついてしまうのでした。
ネオン蝶の読んでみた感想・評価
夜の世界の厳しさ、激しさと、
桜子という一人の少女が、
大人でありプロの女性として、
美しく成長していく醍醐味が
同時に味わえる、
優れた作品でした。
本作の特徴は、夜系漫画には少ない
「緩やかさ」と「自立の過程」が
目立つ部分にあると思います。
ソープランドにイメクラ、
キャバクラに完全な違法店と、
世にある「夜の店」の幅は広く、
そうした業界を扱う漫画も
非常に多くありますが、
その大多数は激烈なんですね。
普通に働いていたら、
一日一万稼ぐのも
簡単ではない世の中にあって、
一晩で五万、十万を稼ぎ出すなら、
それはもう完全にプロの仕事であり、
一切の言い訳は難しいですね。
プロ野球の一軍で打席に立つようなもので、
新人でも経験が浅くても、とにかく
ヒットを求められる形になります。
しかし本作の桜子の場合、
「ネオン蝶」への純粋な憧れから、
夜の世界に入っていくとともに、
叔母さんの店でわずか月五万円で
仕事に入っていたこともあって、
「プロ未満」が許されるんですね。
だからこそ通常のお仕事漫画のような、
じっくりとした成長を楽しめますし、
プロ的でないという希少性が、
強烈な「個性」となり、
桜子から目が離せない気分に
なっていくんですね。
だからこそ池袋から銀座に移り、
今後が勝負という時にも、
まだ未熟な桜子に上客がつき、
どんどん良くなっていく描写も
嫌味さや非現実感がなく
素直に受け入れられましたね。
夜の世界の作品ではありますが、
客に対する誠実さなど、普遍的な
価値観を含んだ一作と言えます。
ネオン蝶はこんな方におすすめな作品!必見
まったく何も知らないような状態から、
「裸一貫」の状態で東京に出てきて
一旗上げるといったお話は、
現実でも創作でも、また男女問わず、
様々聞く話ではありますが、女性の場合、
クラブなどのホステスが王道のラインです。
何故ならいくら単価が高くても、本気系の
風俗店に勤めるとなると負担が大きい上、
また過去を隠しがちになってしまうので、
長年やることを考えると、なかなか
キャリアの蓄積にはつながりにくく、
ホステスがベターになるんですね。
とは言え、お触り禁止とは言うものの、
「積極的」なお客さんも多く、
一人の「プロ」として見定められ、
同僚が客と「寝る」世界の強烈さが、
純朴だった桜子の目を通じて強調され、
本作のインパクトは小さくありません。
他の倉科作品よりは大人しいものの、
「現実的」なラインの中で
「ネオン蝶」になっていく桜子の姿や、
彼女に惹かれていく男たちの反応など、
夜の世界の作品ならではの面白さを
楽しみたいなら本作は最適です。
また、最初の上司が実の叔母だけに
対応がソフトかと思いきや、
義理人情よりも優先してしまう、
「お金」の問題が絡んでいたりと、
予想を上回るような
衝撃の展開があるのも魅力です。
他の風俗系の話よりも、
良い意味で人情味があるので
当たりがキツくなく、
夜系の話が苦手な方にも
安心して読めるような要素が
含まれているのも良かったですね。