タイトル | ベルサイユオブザデッド |
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原作・漫画 | スエカネクミコ |
出版社 | 小学館 |
実はアントワネットは死んでいた!?
宮殿にたどり着いたのは双子の少年で、
しかもアントワネットたちを襲ったのは
ゾンビの群れだった……!
様々な創作の題材にもなった
フランス革命前夜のフランスを舞台に
不死者たちが暴れ回る、
荒唐無稽ながらも説得力のある、
斬新かつ異色の歴史物語です。
ベルサイユオブザデッドのあらすじ紹介
フランスに婚姻のために向かう
マリーアントワネットたちは
その途中、突然、
不死者たちに襲撃され、
マリーたちは死んでしまいます。
しかし、混乱を生き残った
マリーの双子にして
身代わり役立った
アルベールが到着したことで、
アルベールをマリーに仕立てて、
婚姻を破談にせず、
フランスは政略の利益を得ます。
一方、生き残ったアルベールは、
普通の人間では有り得ないような
能力の片鱗を見せるように。
王の健康状態にも不安がある中、
庶民の生活は困窮し、
しかも不死者が闊歩するフランスに、
様々な混乱の芽が
吹き出ようとしていました。
ベルサイユオブザデッドのネタバレと今後の展開は?
政略結婚のため、フランスに
嫁入りする、マリーアントワネット。
彼女は従者たちとは別に、
「身代わり」を連れていました。
彼の名はアルベール、マリーとは
双子の関係にあり、まったく同じ
容姿を持っていました。
しかしアルベールは男性であり、
表舞台には立てない宿命でしたが、
マリーたちが乗る馬車が刺客に
襲撃されたことで皆の運命は一変。
唐突に襲い来るゾンビの群れに、
マリーたちは殺害され、
アルベールは逃げたものの、
その命も尽きかけていました。
しかし、復活したアルベールは
命からがらフランスに到着、
殿下との婚姻を進めます。
もちろん、彼が男性ということは
すぐに露見してしまいますが、
政略結婚を成功させたいフランスは
彼をマリーとして王妃とする決意をし、
結婚相手のルイ殿下も
それを了承します。
これで対外的には一件落着ですが、
窮地を乗り切ったアルベールには
常人離れした力が宿っており、
その強過ぎる力を不審がる
人間も出てくるのでした。
ベルサイユオブザデッドの読んでみた感想・評価
フランス革命の頃の歴史が好きで、
色々な歴史書も「ベルばら」も
欠かさず読んできた私ですが、
こういった話が作られる余地が
史実に残っているとは、
本当に驚いてしまいました。
まず、当時の話なのに、
お嫁に行くアントワネットが
死んでしまう点に驚きましたし、
しかもその刺客が、
生者ならぬゾンビたちというのは
強烈過ぎるものがありましたね。
しかもとってつけた感じではなく
考えれば考えるほど必然性が
具体的に見えてきたりもして、
気付いたら話にハマって
しまっていました。
アントワネットの身代わりの
アルベールも、
単に美しいだけの人間ではなく、
強い意志と行動力を感じる、
普通ではない存在であり、
曲者だらけの当時の宮殿内でも
確固とした個性を発揮できる
強さを感じましたし、
アントワネットが死んだと
完全に理解した上で、縁談を
続けていこうという王たちも、
ただならぬ思考力を持っています。
この強烈な人間たちなら、
ゾンビというヤバ過ぎる外敵にも
十二分に戦えると思えるほどで、
元々濃密な時代の話が
さらなる迫力をもって復活したような
読者として頼もしさを感じました。
もっとも、色々とまずくなっている
当時のフランスで、ゾンビまで
出現するなんて、
実際に暮らしたいとは
まったく思えませんが……
ベルサイユオブザデッドはこんな方におすすめな作品!必見
他国に先駆けての「市民革命」が起きた、
ルイ王朝下のフランスに関しては、
極めてダイナミックな史実があったために、
多くの創作が描かれ、その中には
「ベルサイユのばら」のような
歴史的な名作も存在しています。
だからこそ今再び、あの頃のフランスを
舞台に創作を描くのは難しくもありますが、
本作は、アントワネットの双子であり
身代わりでもある少年、アルベールと、
ゾンビの大量発生という
今まででは想像もできなかった
斬新な設定によって、
世界観に新たな要素を加えています。
しかも、単に荒唐無稽なのではなく、
当時のフランスの劣悪な衛生状態や、
ひどい社会状況等々は、
弔われぬ死者を大量に生み出し、
ゾンビが大量に出るのも
納得の部分がありましたし、
ルイ十六世とアントワネットの間に、
なかなか子供ができなかったのも、
同性であれば説明がつきます。
豪奢で美しい宮廷風景も、
恐ろしいゾンビたちの群れも
高い画力によって巧みに描かれ、
少しでも緩みがあると、
瓦解してしまいかねない難しい話を
絶妙のバランスでつづっています。
よく知られた史実とはまるで違う、
しかし現実のようなリアルさえ伴う、
本作はそんな、不思議な作品です。