タイトル | 七夕の国 |
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原作・漫画 | 岩明均 |
出版社 | 小学館 |
『奇生獣』や『ヒストリエ』など
話題作をてがける岩明均。
その独特のセンスによって描かれた
もう一つの伝奇ミステリー作品。
かつて異能の力を持った人々がいた
時の権力者たちさえも退けた
その人々の集落の名は、丸神・・・。
これは、
少しだけ人とは異なる力を持った
平凡な大学生の物語である。
七夕の国のあらすじ紹介
時は戦国の時代。
かの地を治める領主
島寺通康は
他国の侵入に備えていた。
配下の者の進言から
都合の良いとっされる丸神山に
新たな城を築くことを決める。
しかし丸神の出身である
南丸忠頼はただ一人反対する。
600年の永きに守られた
特別な山を壊すことは
里の者の抵抗を受けると…。
だが領主はそんな進言を繰り返す忠頼を
斬り殺してしまう。
神聖な山を守るため
領主との一戦に挑む丸神の人々。
数千人の敵兵を前に
10人の里の者が立ちはだかる。
そして落雷のような
激しい光が戦場を包み込んだ。
一瞬で前線の兵は倒され、
領主「通康」は頭部を
円形にえぐられて絶命したのだった…。
集落の人々を導く
丸神正頼はつぶやく…。
「何人たりとも神域を侵すことは許さず!」
「この先、何年、何十年
やがて・・・いつの日か、
いつの日にか・・・」と。
そして、時代は現代へと・・・。
七夕の国のネタバレと今後の展開は?
平凡な大学4年生
、南丸洋二は
新技能開拓研究会の会長。
しかし研究会とは名ばかりの
お気楽な活動ばかり。
今日も手品のような
自慢の超能力を披露していた。
その力とは物体に
ほんの小さな穴を開けるだけで
何の役にも立たない能力だった・・・。
ある日同じ大学の
丸神教授に呼び出された南丸。
彼の研究室を訪ねるが
教授は東北に取材に出たきりで
その消息がつかめない様子だった。
教授が向かったのは丸神の里
…
そこは丸神教授と南丸の
共通の先祖の地なのだという。
同じころ丸神の里では
一つの事件が起きていた。
窓ガラスに丸い穴が開き
室内の男性が頭をえぐられて死亡する
という謎の殺人事件だった!
消息を絶った教授を探すため
助手の早百合と南丸たち数名は
丸神の里へと向かうことに。
一様に教授の姿などは
見ていないという町の人々。
彼らは何か隠しているような
怪しい素振りをみせている。
しかし南丸という苗字を名乗ると
町の人々の態度は一変!?
若殿様と称されて
歓迎会まで開いてくれることに・・・。
町の人達はなぜか超能力のことを知っていて
南丸の力に興味を示していた。
翌日、丸山教授からの電話を受けた。
早百合は教授から
もう戻れそうにないと告げられる。
混乱する早百合に
心の「窓」がひらいてしまったと
謎の言葉を残す教授…
ひとまず教授との連絡がとれたことで
祭りの日が過ぎたら
東京へ帰ることにする早百合たち。
しかし祭りの夜にひとり呼び出された南丸…
喫茶店で知り合った美人の店員
東丸幸子にこう告げられる。
貴方は「手がとどく者」であり
「窓をひらき」「手がとどく」者こそ
丸神山の神官となる資格があるのだと…。
一方で早百合と学生たちは
祭りのさなか丸神山の山頂が
輝いていることに気がついた。
立ち入り禁止とされたその山に
密かに向かう早百合たちは
一体何を見ることになるのだろうか・・・?
七夕の国の読んでみた感想・評価
冒頭で描かれる戦国時代の合戦シーンなど
始まりは時代物の作品にも見える本作。
しかし舞台はすぐに現代の
平凡な日常風景へと移り変わります。
激しい戦いの戦場から
平和な日常へと切り替わることで
主人公たちの雰囲気も一変!?
戦国時代では驚異的な力で
敵を圧倒していた異能力も・・・。
現代では、その使い道に困るぐらいの
小さな力しか発揮できません。
この辺りの時代環境と
主人公の取り合わせ方の
ギャップも伏線としての楽しみです。
就職も決めかねている
平凡な大学4年生の南丸。
それが先祖ゆかりの丸神の町では
若殿様と呼ばれるような
大歓迎を受けます。
それも彼の持つ
先祖伝来の超能力に
期待してのことなのですが・・・。
残念ながら彼の力は未だ
期待外れな弱い力なのです。
少しだけの力を持つ
微妙な存在の主人公が
どのように活躍していくのか?
そして教授の行方と謎の力や
丸神山の秘密とは・・・?
一風変わった伝奇ミステリーとして
様々な謎と展開が楽しみな作品!
七夕の国はこんな方におすすめな作品!必見
作者の岩明均の
代表作といえば『寄生獣』
宇宙生命体が飛んできたことにより
身体を寄生され右手に
異能力を得たことから始まる物語。
一方で『七夕の国』は
戦国時代から伝わる超能力という
伝承的なアプローチから始まります。
同じような異能力を扱う作品ですが
アプローチの違いから
前作はSFアクション的な面白さを…。
今作は伝奇ミステリー的な
謎に迫っていく面白さを秘めています。
どちらの作品も平凡だった人生が
身についた能力によって
大きく揺らいでいく・・・。
そして日常から非日常へと
巻き込まれてしまう主人公たちの
葛藤と成長なども楽しみの一つです。
『寄生獣』では始まりから
驚異的な能力を得た主人公が
派手に戦う感じでした…。
『七夕の国』の主人公は
何の役にも立ちそうにもない
小さな能力から始まります。
同じ超常の力を持ちながら
それぞれの主人公は
どのような行動を重ねていくのか?
そんな両作品における
異なるアプローチを比べつつ
読んでみるのも良いものです。