タイトル | 不思議のたたりちゃん |
---|---|
原作・漫画 | 犬木加奈子 |
出版社 | 講談社 |
虫の命も大切にし、純粋に
周りと仲良くしたいと考える
神野多々里。
しかしその風貌と態度から、
理不尽ないじめを受ける彼女は、
怒りが限界に達すると、
その相手にたたりをかけていき……。
多くの作品のホラー作品の
主人公像とも、一般的な
「たたり」の概念ともまた違う、
独特で個性的な世界観を描いた
学園ホラーものの傑作です。
不思議のたたりちゃんのあらすじ紹介
冴えない風貌の女子生徒、神野多々里。
優しく思いやりのある性格をしていて、
皆とも仲良くなりたいと思っていますが、
見た目も表情も不気味なために、
折に触れていじめの標的に
なってきたのでした。
学校の授業で同級生と対面し、
互いの顔の絵を描く授業では、
好きな絵の腕前を披露しますが、
それが相手よりもずっと上手だったため
かえっていじめの対象に
なってしまうのでした。
抵抗もできない状態で、絵麻や、
他のクラスメイトたちに
顔に落書きをされるなど、
真摯な思いを踏みにじられたたたりは、
絵麻にたたりがあると言い残し、
卵を使った呪いを仕掛けるのでした。
不思議のたたりちゃんのネタバレと今後の展開は?
女子生徒の神野多々里。
周りとは仲良くやっていきたいと
常に思っているものの、
風貌が冴えない上に不気味なため、
同級生たちとは距離があり、
なかなか友達を作れません。
日記帳には現実とは違う
「理想の展開」をつづり、
充実した学校生活を「創作」しますが、
周りからは避けられ、
不気味がられる毎日でした。
そんなある日、校庭のキャベツ畑から
よじ登ってきた青虫をたたりは助けます。
命を粗末にしない優しさに、教師からは
褒められたものの、同級生からは
ますます嫌われてしまいました。
それ以来自分の教科書や靴に
青虫を放り込まれ、果ては
給食の中にも入れられるなど、
たたりへのいじめはどんどんと
エスカレートしていきます。
最初は我慢していたたたりですが、
自分がやられたことよりもむしろ、
何の罪もない青虫を殺したことに、
感情を爆発させ、たたりは、
いじめの主犯格の青田に、
「たたりがあるぞ」と宣言します。
実際その後の青田は、
寝ている時の布団や
食事の中に、青虫が入っているように、
錯覚を起こしてしまい、
食べることも眠ることもできないまま、
衰弱していくのでした。
不思議のたたりちゃんの読んでみた感想・評価
小学校を舞台にした、典型的な
「学校の怪談」ものと思いきや、
主人公が派手にいじめられていたり、
他では見られないような設定が
非常に独創的な世界観を
構築している感じでしたね。
本作の最大の特徴は、
何と言ってもたたりちゃんですね。
こうした怪談ものの作品で、
ただならぬ力を持った
主人公的存在となると、
普段から周りに一目置かれたり
尊敬されたりするものですが、
彼女は一切そうではないんですね。
クラスメイトたちには一切の
悪感情を抱いておらず、
どうにかして友達が欲しいと、
全力で思っているにも関わらず、
風貌も態度もまるで冴えず、
いじめに遭ってしまうんですね。
そこでたたりちゃんが怒って、
「たたり」が発動するのですが、
彼女にはさしたる復讐心はなく、
軽く事を済ませたら今まで以上に
仲良くやりたいと
思っているフシすらあります。
呪い系、復讐系の主人公としては
かなり異質なタイプで、
私も読んでいて驚かされましたが、
よく考えてみると、こうやって
パッと切り替えられるところに
リアルな子供らしさがあるんですね。
また、非科学的な分野を扱った
作品でありながらも、容姿や態度が
まずかったりすると、
理由もなく延々といじめられ、
些細なことで標的にされる、学校の、
嫌なリアルも描かれていました。
ホラー系の作品ですが、
良くも悪くも日常や現実に
軸足を置いた感じが興味深く、
考えさせられる点も含めて、
ハラハラドキドキしながら、
読み進めることができました。
不思議のたたりちゃんはこんな方におすすめな作品!必見
たたりや呪いの話は色々ありますが、
そのほとんどが単純に恐ろしく、
「悪いこと」はやめておこうという感じに、
聞く人に思わせるような内容で、
その傾向は商業的な漫画でも同様です。
しかし本作は、主人公のたたりちゃんが、
相手への仕返しや世直しのために、
たたりをフル活用しているので、
痛快とまでは言いませんが、
頼りになる存在というような
イメージが強いですね。
また、並外れた力を持つたたりちゃんも、
皆と仲良くしたい、子供らしい優しさを
たっぷりと持ちつつも、何故か、
強烈ないじめられっ子体質であり、
何かにつけて周りから
ハードな扱いを受けます。
一般的なイメージとは違う「たたり」や
純粋にいじめられ体質の主人公など、
他の作品とはまったく違うような、
個性的なホラー作品を楽しみたいなら、
本作は必見作と言えるでしょう。
また、ジャンル的にもかなりグロい、
あるいはビックリするような表現も
頻繁に出てきますが、
たたりちゃんが強くないからか、
読後感は不思議と悪くなく、
スイスイと読めるリズムもあります。
いかにも定番な話や状況を
下敷きにしているだけに、
かえって結末の予想がつかず、
読者に絶えずハラハラドキドキを
与えてくれているのもいいですね。