タイトル | 傀儡華遊戯~チャイニーズ・コッペリア~ |
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原作・漫画 | 秋乃茉莉 |
出版社 | ぶんか社 |
古代中国、長安。
この世のものとは
思えぬほど美しく、
人を惹きつけ、
惹きつけた人びとの感情を
「食べる」美華という人形があった。
彼女を扱う美貌の人形使い、
風遥の心に潜む、
悲しくも恐ろしい本心が、
王朝を大いに揺るがしていく。
伝奇ものの恐ろしさに、
中国演劇ならではの美しさと、
歴史あるが故の骨太さが加わった、
本格的歴史ファンタジー作品です。
傀儡華遊戯~チャイニーズ・コッペリア~のあらすじ紹介
中国長安での
催される散楽の中でも、
一際人気を誇る美華の二胡。
しかし美華は
絶世の美女ではありながら
人間ではなく、
同じく美貌を有する風遥は、
人形使いとして巧みに
美華を操り修復しながら、
人間が彼女の前でその本性を
さらけ出す瞬間を
心待ちにしていました。
彼が求めるのは、
憎しみや悲しみといった、
人が誰しも持ちうる激しい感情。
そしてその心の揺れは、
美華を着々と人形から人間へと
変えていきます。
しかし、風遥の本当の狙いは、
愛する美華を
人にすることではなく、
もっと大きなものにありました。
傀儡華遊戯~チャイニーズ・コッペリア~のネタバレと今後の展開は?
この世の栄華を
体現したかのような、
古代中国の都、長安。
その中でも
エリートと目されるある若者が、
縁談を進めていました。
見目麗しく、若いながらも
難関試験である「進士」に通り、
まさに秀才と呼ぶに
ふさわしい彼でしたが、
美しい氷心との
結婚を前にしても、
彼の気持ちは浮き立ちません。
氷心は恋に憧れるところがあり、
「つまらない」彼に対しての
対応もシビアだったのです。
いくら出世のためとは言え
これでは、と、
とぼとぼと街を歩く彼は、
二胡の音色に
惹かれて顔を上げます。
するとそこには、
美しい男女がいました。
特に「美華」と呼ばれている彼女の
美貌は素晴らしいものがあり、
彼はすっかり虜になってしまうのでした。
時折演奏される二胡を
聴くことに夢中になり、
婚約者の家にも
足を運ばなくなったおとで、
氷心は暇を持て余します。
そこで異国由来の興業を
見物に行きますが、
そこで登場する、
人形とは思えない「美女」に、
すっかり顔を出さなくなった
婚約者が夢中になっていることを、
氷心は気付いてしまうのでした。
一方、美華に心を奪われた青年は、
なりふり構わないほどになっていき、
美華が遊女だという噂を
聞きつけ押しかけ、
ついに思いを遂げかけますが、
そこで思わぬ事態に直面するのでした。
傀儡華遊戯~チャイニーズ・コッペリア~の読んでみた感想・評価
人形が活躍する
伝奇系のお話かと思いきや、
古代中国の歴史や
王朝への恨みといった、
深い要素までをも
ふんだんに盛り込んだ
骨太な一作でした。
本作のポイントは、
何と言っても
主人公の美華でしょう。
時に無機質に、
時に情熱的なほどの
艶を感じさせる、
人ならぬ人形ならではの
美しさを誇る彼女ですが、
その力の源は人の感情、
しかも負の感情だったり
するんですね。
人形が人の心を得る作品は、
古今たくさんありますが、
マイナスのエネルギーを、
風遥のような導き手自らが欲して、
組み込んでいくという作品は、
かなり珍しくドキドキしました。
しかし、その一方で、
私利私欲ではなく
深い怒りにとらわれた
風遥の思いには
納得できる部分も多く、
また、平凡な暮らしの中で、
異次元の美しさを見せる
美華に惹かれる人々の
心にも共感することができました。
こうした感情移入は、
本作が実際の歴史や他の創作など、
非常に幅広い分野をフォローしており、
そこからくる地盤の確かさに
よるものだとも思いますが、
ただ堅苦しいだけではなく、
「ツンデレ」や
「フィギュアマニア」といった、
「現代流」のオタクっぽさも
出てきたりするので、
ほっとできる部分もありましたね。
傀儡華遊戯~チャイニーズ・コッペリア~はこんな方におすすめな作品!必見
占いから奇術、
芸術に至るまで、
独自性が強く
しかも高度な発展を遂げた、
中国圏には演劇もまた実に多彩です。
しかし、
どうしても「縁起」を
現在よりずっと
大事にする古代となると、
そうした普通ではない業師は
遠ざけられるもので、
必然的に作品の主人公にも
なりにくい傾向があります。
しかし本作は
超凄腕の人形使いと
人形である美華そのものという
異色作なため、
王侯貴族や将軍の
目からではない古代中国を
堪能することができますし、
人の似姿であるが故の
恐ろしさや辛さまでも
記されています。
そんな精密を
極める人形が作られ、
人の目を集める形で
動き続ける意図は何なのか、
あるいは背景にある
人間ドラマまで、
とにかく濃密な人間ドラマを
楽しみたい方には
最適の一作と言えるでしょうし、
冒頭からラストまで
筋が通った展開の一貫性も
必見だと言えるでしょう。
さらには、
歴史上のエピソードや
過去の名作などからも
エッセンスを
取り入れた形跡もあり、
非常に「分厚い」という点も
見逃せません。