タイトル | 初恋の世界 |
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原作・漫画 | 西桐子 |
出版社 | 小学館 |
四十歳を迎え、転勤の指示を受け、
故郷の角島に戻った小松は、
そこで無愛想だが有能な男と出会い……。
トキメキや異性に対するドキドキもあり、
仕事に対するこだわりもある世界観が
まさに大人な雰囲気を滲ませる、
落ち着いた職場系恋愛物語です。
初恋の世界のあらすじ紹介
上京して二十年以上が経ち、
東京で四十歳を迎えた
「モリノカフェ」店長の小松さん。
オシャレな店で腕を振るう彼女ですが、
突然故郷の角島の店へと
転勤するように指示を下されます。
角島店は赤字続きであり、
小松さんの実力を見込んだ社長が
直々にテコを入れた形ですが、
いざ行ってみると角島店は
シャレたカフェではなく
普通の喫茶店になっていました。
しかもその「改革」を行ったのは、
店長の鈴木君ではなく、
大柄で無愛想なイケメンの、
アルバイトの小鳥遊君だったのです。
初恋の世界のネタバレと今後の展開は?
上京して二十二年、晴れて
四十歳を迎えることになった、
「モリノカフェ」店長の小松さん。
コーヒーにこだわる社長の情熱と
上質なスイーツが受けて
今や全国的に店を展開する、
繁盛企業の店を一つを
任されているのが小松さんです。
しかし「四十」という数字には
一気に年を取った感じを覚え、
人生の虚無を感じてもいました。
そんなある日、日本の南端の
「角島」に出した支店の調子が悪く、
小松さんに白羽の矢が立ちます。
元々角島出身であり独身で、
東京にしがらみのない彼女は
まさに適任とも言える人材で、
断ることができない状況でした。
しかし、角島店に電話を入れた彼女は
やたらと無愛想な聞き慣れない声に
迎えられることになります。
本来の店長、鈴木君とは明らかに違う、
バイト君の声に困惑した小松さんは、
地元の友達と旧交を温めつつ、
改めて角島店に足を運ぶことに。
しかし、故郷の街にできた支店は
東京の店とはまるで違う雰囲気で、
本店とはまるで違うメニューに加え、
ランチサービスさえもやっている、
混沌とした状況でした。
その「元凶」となったのは、
赤字続きだった店に
連日通ってきた小鳥遊君でした。
彼は勝手に店を手伝い始め、
バイトに入るようになり、
業態を「カフェ」から
普通の「喫茶店」へと
変貌させてしまっていたのです。
その変わりようにショックを受ける
小松さんでしたが、角島店の評判は
上々になってもいたのでした。
初恋の世界の読んでみた感想・評価
人生の折り返しを意識する中での
「恋」を視野に入れた一作ですが、
バランスの取れた描写が良かったです。
まず、喫茶店の「考え方」の違いが
実に良く分かっていますね。
本当に高いレベルのコーヒーを
日本に広げたいとの志を持ち、
店を立ち上げた社長のもと、
店長として切り盛りする小松さん。
もう四十歳になる彼女は美貌のみならず、
マスターとしての知識や見識も備わり、
まさしく一流の人材といった感じです。
しかし、こだわりの豆を使うコーヒーと
上等のスイーツ専門の「カフェ」では、
昔ながらの喫茶店の多彩なメニューと
安心感を出すのは難しいものです。
そのあたりを十分に理解し、
給料もいらないぐらいのスタンスで
店の雰囲気をガラリと変えてみせた
小鳥遊さんもまた道理を知った
一流のマスターと言えます。
その二人が、大人なので
強烈に衝突はしないものの
態度により意見を戦わせつつ、
徐々に距離を詰めていく様子が
たまらなく「大人」感があって、
個人的にたまりませんでした。
恋愛漫画の熱量となると
どうしても学校や仕事を
おろそかにしてしまいがちで、
またその気持ちも良く分かるものの、
やはり責任者としては、仕事にも
本気で向き合って欲しいもの。
今まで結婚や家庭に対して
どこか本気ではなく、虚無感を
覚えないでもなかった小松さんの、
「フィールド」である喫茶店への
静かな情熱には、紛れもない
人生の蓄積を感じられました。
鈴木君たち脇役のキャラも良く、
不快感のある人がいないのも
作品の良さを活かしていますね。
初恋の世界はこんな方におすすめな作品!必見
人間、いくつになっても恋はできる、
とは言うものの、実際は年齢によって
恋の形は変わっていくものです。
また、年齢によって「責任」もかなり
違ってきたりするので、例え同じ
喫茶店勤務だったとしても、
十代のバイトの少年と中年の店長では
同じ視点での恋愛は難しいのが現実です。
本作はそうした微妙な点をうまく加味し、
四十歳になった小松さんにふさわしい
本当に大人な感じの人間関係ですので、
ただ甘く爽やかなだけではなく、
少し苦味も感じるような落ち着いた
恋愛物語を読みたい方に向いています。
現実としては年齢だけ重ねて
若い頃のスタンスを維持するような
勢い満点系の作品も結構ありますし、
個人差が大きな恋の話では
それで間違いということもないですが、
やはり年相応感は嬉しいものです。
また、仕事に生きてきた小松さんにも
漫画に燃えた意外な過去があり、
何だかんだで店を切り盛りする
小鳥遊さんにも少年にはない
頼もしさがあったりと、
非常に幅の広い人間像も素敵です。
恋愛漫画となると、どうしても
他のことが目に入らない
恋愛体質になりがちですが、
本作はその辺も非常に落ち着いていて
視野も広いので頼もしさがあります。
喫茶店の描写や考えの違いも
非常に「分かっている」部分があり、
カフェ好きにも喫茶店好きにも
まさに納得な仕上がりも必見です。