タイトル | 同窓生 人は、三度、恋をする |
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原作・漫画 | 柴門ふみ |
出版社 | 小学館 |
同窓会の知らせを送ってきたのは、
かつて「駆け落ちごっこ」までした、
元カノの女性。
しかもその彼女、あけひは、
再会するや否や、屈託のない笑みを
向けてきてくれて……。
大人になったが故の重い事情や、
それと相反する瑞々しさが、
巧みな筆致によって表現されている、
同窓ならではのラブストーリーです。
同窓生 人は、三度、恋をするのあらすじ紹介
家業を継ぐのが嫌で
普通科の高校から大学を出て、
一般企業に行った柳健太。
しかし今は会社を辞め、
一から跡継ぎとして
仕事に励む毎日です。
健太はある日、届いた手紙に従い、
同窓会に参加することに。
その席にいた元カノのあけひは
かつて気まずい別れ方を
したにも関わらず、
明るい笑みを健太に向けてくれ、
その同窓会をきっかけに、
洗濯を頼みに来るようになりました。
しかし健太の「プロ」としての目は
わずかな血痕や汚れから、
あけひが晒されている問題を、
嫌が応にも浮き彫りにさせてしまい、
内心モヤモヤとしますが、
もちろんあけひには言えません。
しかし人づてに流れてくる
あけひが抱えている現実は
相当にひどいものでもあり、
かつてあけひに向けられたいじめを
見過ごしてしまった引け目もある健太は
さらに深く彼女に関わっていきます。
同窓生 人は、三度、恋をするのネタバレと今後の展開は?
一般企業に就職したものの、
思うところあって会社を辞め、
家業を継ぐことにした柳健太。
アラフォーになった彼に、
同窓会の知らせが届きました。
その幹事になっていたのは
旧姓石井あけひ。
その女性はかつて健太と
恋人関係にあり、
部屋を借りての
「駆け落ちごっこ」まで
始めるほど仲の良い関係でした。
しかし、成績の上がらない健太に
家の跡を継がせようと
父親が考えていることを知り、
回避するべく猛勉強を始めたため、
「駆け落ちごっこ」は続けられず、
別れてしまっていたのです。
そうした経緯があったため、
健太としてはぼんやりと
後ろめたさも感じていましたが、
久々に会ったあけひは
昔と同じ明るい笑顔で
健太を迎えてくれました。
その後の飲み会でも
良いムードは続いて、
あけひは実際に、
健太の店に洗濯物を
持ってきてくれました。
昔をふと思い出す二人ですが、
子供が四人もいるあけひと
独り身の健太では距離があり、
しかも健太はあけひの服に
血痕がついていたのを発見し、
肉体にも傷跡があるのに気付きます。
もちろん健太は心配ですが、
夫婦間には立ち入れず、
あけひからも友達と言われますが、
後日そのあけひから、
奇妙にもカレーの跡が
ついたぬいぐるみを持ち込まれます。
普通ではなかなか直らない汚れを
店員さんの機転によってうまく
修復することには成功しましたが、
そのカレーの跡こそが、あけひが
現在晒されている深刻な問題を
示してもいたのでした。
同窓生 人は、三度、恋をするの読んでみた感想・評価
王道の「大人の恋愛もの」な一方で
青春の匂いを強く感じさせる
爽やかさが良かったですね。
本作のポイントは何と言っても
主人公の健太とあけひです。
四十歳ということですが、
店を切り盛りしているためか、
二人にはまったく老けは見えず、
特にあけひに関しては
外見は元より内面も
少女のようなキラキラがあります。
しかし、結婚し出産する中で
明るく元気だけでは済まない
様々な苦労を重ねており、
そのことが衣類などにも
反映されているため、
健太は衝撃を受けるんですね。
一見遠回りなこの対応ですが、
いくら近所にいるとは言え、
ズケズケと夫婦や家庭のことを
聞いていくのは非現実的ですので、
この慎重な対応に「あるある」と、
私も悩んでしまいました。
ただ、そうした「大人」であり、
一方で健太の側は既に離婚していて
後ろめたさがないために、
ドロドロした感じがなく、
むしろ爽やかな「初恋の続き」を
楽しめているような気になれました。
すぐに「関係」せず、むしろ
デートとも言えないようなやり取りを
続けるような甘酸っぱい健太たちですが、
心のどこかで「青春」を
強く持っている彼らには
むしろふさわしい感じがしました。
同窓生 人は、三度、恋をするはこんな方におすすめな作品!必見
気心が知れた、しかし長い期間
離れ離れになっていた男女が、
再会し再び交流を深める……、
こうした状況が無理なく生じやすいのは
何と言っても同窓会です。
しかし、創作の世界に関して言えば、
憧れだったあの娘に会える、
もしかしたらイイ仲になれるかもと、
最初からエンジン全開で行くのでは、
元々への奥さんへの誠実さが見えず、
共感は得にくくなります。
その点本作においては色々と、
葛藤と期待を含めた複雑な感情が
明確に描かれていますので、
「不真面目」感はなく、
再びの出会いも良い意味で
清潔な印象を受けました。
とかく「同窓会」や「サークル」を
舞台にした作品では、ドロドロした
恋愛模様が描かれがちですが、
本作は同種の不倫系作品が
苦手という方にも安心して
オススメすることができます。
一方、若い頃とはどうしても違う
各人の人生や立場、そして、
DVなどの現代的な問題も、
巧みに作品自体に盛り込まれており、
定番のテーマながら非常に新しく、
鮮やかな雰囲気があるのも特徴です。
恋愛のドキドキを味わいながら、
ふっと昔の友達関係に戻れるような
不思議な関係性が魅力でもあります。