タイトル | 喧嘩商売 |
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原作・漫画 | 木多康昭 |
出版社 | 講談社 |
高校生、佐藤十兵衛は
一見、普通の学生ですが
実は極めてケンカにたけていました。
強いという評判は
敵や別の強者を呼び込むものです。
様々な暴力にさらされる十兵衛でしたが、
一切それにひるむことなく、むしろ
積極的にリベンジの機会を求めていきます。
ついには金メダリストとの試合や、
最高峰のトーナメントへの参戦
という事態にまで発展していきます。
喧嘩商売のあらすじ紹介
十兵衛はかつて
いじめられっ子だった頃に見た本物の強者、
高野照久と対等の格闘者として相対。
激闘の末に
自らの「過去」を振り払うことに成功します
しかし、次いで戦った喧嘩ヤクザ、
工藤優作に敗北を喫し、
屈辱的な記憶を植え付けられます。
しかしそこでめげない十兵衛は、
師匠の入江文学のもとで
改めて鍛え直します。
強力な肉体と古武術の技を身に付けると、
正当的ではない手段をきっかけに
表のリングとの接点を作りました。
そして、金メダリスト金田保との死闘を経て
さらなる成長を遂げます。
その間にも格闘界は大きく動きます。
表裏のリングで絶対的な実力を誇る最強者
田島彬による、賞金二百億、ルール無用の
トーナメントの開催が発表されます。
トーナメントの出場者とは…
各界で最強、
誰もがその名を知る有名武術家たち「陽」側
表の世界では決して語られることはないが、
数々の死線をぐぐってきたような裏の強者達
「陰」側、両方によって占められていました
そして、明らかになった出場選手の中には、
今や十兵衛の宿敵となった
工藤がいたのでした。
そのことを知った十兵衛は、
また新たなモチベーションを抱き始めます。
喧嘩商売のネタバレと今後の展開は?
十兵衛の実力の背景には
様々なものが絡んでいます。
肉体的にはヘビー級でも通用するような体格
喧嘩でも試合でも
一切えげつない技をためらわない強さ。
また一度負けた相手を
どこまでも追う執念深さ。
さらに言えば父親は官僚で
権力の恩恵にあずかることもできます。
そして喧嘩の師匠はただのチンピラではなく
武術の達人という奥深さを持ってもいます。
本作の序盤から中盤、
話が進むにしたがって明らかになっていく
これらの「情報」。
これらは、すべて現実でも
強力に効果を発揮するカードであり、
作品の性質を象徴しているとも言えます。
本作では軽量級の少年が
ヘビー級の戦士を倒すといった描写はなく、
女性格闘士も出てきません。
十兵衛の敵役たちも、相当厄介な人間達。
いずれも立派な体格をしており、
経験の豊富な猛者たちです。
こうした現実に即した要素を下敷きに、
駆け引き、読み合いを駆使した
激しい戦いが後半になるつれ増えていきます
続編の「喧嘩稼業」において十兵衛は、
より体格差のある相手との激戦に
臨むことになります。
彼がヘビー級に近いような体格
であるにも関わらず、肉体的に
楽な戦いが少ないというのが本作の特徴。
喧嘩商売の読んでみた感想・評価
本作は、非常に難しい要素を
巧みに融合させています。
身体能力や駆け引き、
メンタルの部分でのリアリティを前面に
押し出しているのは前述した通りです。
それと同時に喧嘩少年だった佐藤十兵衛の
成長物語を進ませるのは、
本来なかなか難しいところです。
通常、いくら才能に恵まれているとはいえ、
素人に近い少年が成長するには
長期間の鍛錬が必要だからです。
しかし本作では知略やだまし、
時には毒をも含めた「強さ」を定義。
そうすることで、リアリティを崩さず、
陰陽トーナメントの盛り上がりに
つなげることができました。
こうした、こまかい配慮によって作られる
面白さは、終了までに長い時間がかかる
長編では特に難しいものです。
作者の木多康昭氏はその難しいバランスを
見事に取ることに成功し、
さらに続編「喧嘩稼業」へとつなげています。
私個人としては極めて面白いと思いますし、
もっと評価されてもいい作品ではないか
とも感じています。
また、十兵衛以外に魅力のある
キャラクターがそろっているのも特徴です。
作中で語られる特に…
陰陽トーナメントに参加する十六名や
田島の相手をしたウォーレンのエピソード等
そのうちの誰を軸にしても
主人公として話が作れそうなほどの
充実ぶりがありました。
また、ところどころにギャグや本筋とは
関係ないエピソードが盛り込まれており、
その点でのキレも見逃せません。
喧嘩商売はこんな方におすすめな作品!必見
非常に優れた作品が多いのが
格闘マンガというジャンルです。
フィクションでありながらも、その
「リアリティ」のバランスはまさに百人百様
良くも悪くも
現実味に欠けるものが少なくありません。
しかし、やはり中心となるリアリティは
大事にしたい、と考える人にとって本作は
まさに打って付けではないかと思います。
それも、健全で明るい「スポーツ」ではない
決闘の怖さやすごさが十分に伝わってきます。
主人公が「十兵衛」という名前だからでは
ありませんが、時代劇や剣豪小説などを
好まれる方にも読んでいただきたいです。
もっとも、作者はシリアス一本槍ではなく、
過去には突き抜けた下ネタや不謹慎ギャグの
宝庫だった「幕張」を手がけた木多氏。
そのキレで、
作中の随所にギャグを盛り込んでもいます。
また、一話丸ごと使って
ハードなギャグを展開してみたり…
木多氏が笑いを捨てていないと思えるのも
往年からのファンには嬉しいでしょう。
いずれにしても本作の完成度は非常に高く、
しかも作中における独特の間は
あまり類を見ない部分があります。
理屈だけに陥っているわけでもなく、
格闘マンガが好きという人には
読んでおきたい一作だといえます。