タイトル | 夏空エンド・ラン |
---|---|
原作・漫画 | 伊藤しろ |
出版社 | 小学館 |
高校最後の夏を迎える野球部員千空と、
新任教師の高嶺東子は、
グラウンドで偶然に出会い、少しずつ
互いの関係を深め、距離を縮めていくが……。
青春の匂いや雰囲気が色濃く感じられ、
あの頃の気持ちを思い出せる、
瑞々しさと爽やかさが詰まった青春物語です。
夏空エンド・ランのあらすじ紹介
アットホームな感じの部活ながら、
県大会ベスト4に入った
実績を持つ野球部で、
二塁を守る海津千空は、練習試合中、
一人の女性に目を奪われます。
もちろんその人と千空は
会話もしていませんでしたが、
新学期その女性、東子が学校の
新任の教師として入ってきて、
しかも千空の担任になります。
その上千空の活躍を
覚えてくれていた東子は
千空に対してもフレンドリーで、
二人の距離は徐々に縮まりますが、
互いの育ってきた思いは
容易に口外されることはありませんでした。
夏空エンド・ランのネタバレと今後の展開は?
県大会でもベスト4に入る
強豪校の選手として野球に打ち込む
海津千空(ちあき)。
練習試合とは言え最終回一点差、
塁上にはランナーもいて、
野手としては難しい局面です。
しかしまさにその時、
千空の視界にスタイルの良い若い女性が。
その女性が通りすがりのワンちゃんに
イタズラされていたこともあり、
千空はその姿に見とれてしまいます。
するとまさにその時、千空の方に
鋭い打球が飛んできました。
抜ければヒット性の当たりでしたが、
千空がとっさに飛びついたことが
きっかけとなりゲッツーで試合終了、
チームは見事に勝利します。
とは言え気の抜けた動きをした千空は
仲間にドツかれたり説教されたりと
冴えない感じになってしまいますが、
チーム全体を見た場合、やはり
エースの夏目が抜けたのが問題でした。
とは言え悩みはあるものの野球は好きで、
地元の子供たちに教えたりもしますが、
そこでも千空は女性の姿を視界に入れ、
強烈な打球を顔面に受け倒れてしまいます。
その翌日の始業式、ボロボロになった顔で
行事に出た千空が見たのは、
新任の教師として挨拶する、
あのグラウンドで見た女性の姿でした。
高嶺東子というその先生は、千空の
試合での奮闘を覚えていた上に、
自分のことを「東子先生」と呼んで欲しいと、
とても親しげに話しかけてくれました。
一方の千空も担任になった東子先生に
ドキドキしたりもしていましたが、
ある日、球技大会が迫る中、
千空は東子先生からある「お願い」を
されることになるのでした。
夏空エンド・ランの読んでみた感想・評価
恋愛漫画もスポ根ものも好きですが、
どちらも楽しみたいと考える
私にとっては最適な作品でした。
主人公とヒロインの構図が明確なのが
恋愛漫画ですが、多くの場合、
勉強や部活のシーンが単なる、
「味付け」に使われてしまい、
競技の面白さを堪能できない
難点がありました。
また、スポ根漫画では、
主人公に意中の人がいても、
話が進んでいくにつれライバルとの
熱戦に重点が置かれ、恋愛描写が
少なくなってしまいがちでした。
しかし本作は、野球少年が
若い先生に出会うという、
変則的なボーイミーツガールを発端に、
じっくりと二人の感情と関係が
深まっていく過程が描写されています。
だから千空君が部活や仲間を
放り出してしまったりして、
「男を下げる」懸念が少なく、
安心して読み進めることができました。
やはり、いくら「禁断の関係」とは言え、
部活や恋に関する充実が阻害されては
せっかくの青春ものの世界観が
台無しにもなりかねないわけで、
その点本作は、まさに春と夏の間、
あのワクワクした雰囲気が満載でした。
一旦大人になってしまうと、
何故オリンピックにもプロにも
行けるはずがない部活に
あれほど懸命になれたのか、
将来と関係ない恋愛に、胸を
焦がしたのかが分からなくなるものです。
しかし本作には、その若々しくも
瑞々しい感情と行動の「答え」の一つが
描かれているように思いました。
純粋に勝負や恋愛だけを楽しめる、
そんなタイプの作品ではありませんが、
非常に胸に染みるものがありましたね。
夏空エンド・ランはこんな方におすすめな作品!必見
教師と生徒の恋愛を描いた物語は
世に多数存在しますが、その多くは
生徒の側が女子という雰囲気があります。
「身分」の点を別にしても、
「大人」と「子供」の違いがあると、
どうしても年下の方が精神的に、
成熟していなければ物語が
成立しづらいからかも知れません。
逆に言うと、生徒が幼いと
全体としてのバランスが崩れ、
キャラの良さが見えにくいという
リスクを考慮しなければいけません。
その点本作は、互いに好感を
持ちつつもバランスの取れた
学校生活を送っており、
冒頭、先生に熱を上げて部活が
おろそかになったり、
友達と疎遠にはなりません。
だからこそ身のある学校生活であり、
全力で恋愛体質になってしまったため、
あらゆることに影響がでている、的な、
恋愛漫画の「ありがち」に
陥っていないため、物語重視で
楽しみたい方にも向いた一作と言えます。
また、先生の容姿やスタイルが
非常に優れているものの、
過度にそうした部分が強調されず、
あくまで、「生徒が教師を見る目」が
維持されているのも本作品に関しては
好感が持てる部分ですね。
全体においてわざとらしい点がなく、
だからこそスっと物語に入っていける
細やかさがあるのだと思います。