タイトル | 羅刹の家 |
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原作・漫画 | 井出知香恵 |
出版社 | 主婦と生活社 |
愛し合う恋人である貴史と杳子。
誠実な交際をし、結婚を望む二人は、
恐るべき嫁姑の争いが続く、
修羅場のような実家が待っており……、
実際にも良く聞く嫁姑の争いを
これ以上ないほど過激かつ情念的に
描き抜いた、かつてドラマにもなった
「家庭内戦争」漫画の名作です。
羅刹の家のあらすじ紹介
優秀で優しい恋人を持ち、
幸せの絶頂にいるようにすら
周りからは見える女性、杳子。
しかし彼女には、実家で見た
強烈極まる嫁姑戦争の記憶が
常に残っており、
その過酷な現実に強い恐れを
抱いていましたが、
実は恋人の貴史は旧家の出身であり、
その実家はまさに羅刹と呼べるほどの
壮絶な争いが人知れず
続けられていたのでした。
時には自分の母をいじめ抜く
姑の姿を目撃し、
またある時には家庭問題により
深刻な事件さえ起きる家で、
杳子もまた恐ろしい行為に
手を染めてしまいます。
羅刹の家のネタバレと今後の展開は?
戸越杳子は美しい女性であり、
一流企業に勤めるエリート社員、
小椋貴史という恋人もいましたが、
歴史ある実家で、強烈過ぎるほどの
自分の母と祖母の、つまりは
嫁姑の争いを見て育ったことが、
半ばトラウマになっていました。
そのため家格など関係なく、
純粋に貴史を愛していた杳子ですが、
交際を開始してから、小椋家もまた
歴史ある旧家であり、しかも
嫁と姑の激烈な争いがあることを
知ってしまいました。
ボロボロの状態になりながらも、
自分の娘、つまりは杳子の姑に
手ひどく扱われ続ける大姑の姿や、
次第に見え隠れしてくる姑たちの
羅刹めいた恐るべき本性に、
杳子は結婚をためらいますが、
結局は貴史との愛情を優先させ、
結婚ということになります。
しかしそれはゴールではなく
過酷な戦いの始まりに過ぎません。
当初は貴史と二人で
マンション暮らしをしていましたが、
あまりのひどい扱いに耐えかねて
来訪してきた大姑が大怪我をして
寝たきりになったことなどを契機に、
杳子は実家に戻ることになり、
弱りきった母親への過酷な扱いを
徹底的に繰り返す姑の本性や、
にも関わらず夫たちには
決して醜い争いを見せない掟など、
深刻な歪みを持った小椋家と
正面からぶつかることになります。
羅刹の家の読んでみた感想・評価
色々な嫁姑問題をテーマにした
ハードな作品の中でも、
本作はとにかく強烈でした。
時に事件までエスカレートしがちな
創作上の嫁姑戦争であっても、
ほとんどの作品はどこかの部分に、
何かの救いが用意されていますが、
本作は読み進めていっても、
まったくその救いに辿り着けません。
愛した夫は頼りにくい上に
単身赴任で中東に行ってしまうし、
自分をいびらない義父は、
浮気相手と結ばれようとしているし、
手ひどい扱いに耐える杳子もまた、
限界を超え姑を呪殺すべく
丑の刻参りを実行するなど、
ハード過ぎる展開に恐ろしい思いを
強烈に抱いてしまいました。
しかもそれだけのことをする人々が、
根っからの悪人ではなく、
皆社会人や名家の一員として、
対外的にはしっかりとしているのも
かえって恐ろしいところでしたね。
しかもその豹変が一回限りではなく、
何度もしかも唐突に行われ、
加えて社会的な変化も急激と、
とにかく息をつく暇もない展開が
延々と続いていく濃密さで、
後に残るインパクトを
体感することになりましたね。
羅刹の家はこんな方におすすめな作品!必見
様々なことが起こる家庭内問題の中でも、
ひときわトラブルが起こりがちなのが、
いわゆる嫁姑問題ですね。
愛情で結ばれた夫婦とは違い、
血縁関係でもない赤の他人であるため、
仕方がない部分がありますが、
実際に嫁姑の確執をテーマにしたような
作品も数多く発表されています。
中にはかなりハードな作品もありますが、
本作の強烈さはズバ抜けています。
もはや何の力もない老人となった義母を
あえて塩分の多い「料理」で
殺害しようと企む嫁たち。
喉が乾いて死にそうだと分かっていて、
ずっと放置しつつ、助けに入った嫁を
脅しつけてみせる姑。
時には全身が血まみれになるほどの
強烈な折檻をしたり、
鞭のように布で叩いたりと、
肉体的にも精神的にもきつい
責めの数々と、そこに至るまでの
深刻極まる衝突が克明に描かれています。
その徹底ぶりは他の追随を許さず、
とにかく容赦のないバトルを
読みたいと思っている方、
あるいは嫁姑戦争の虚しさと辛さを
改めて考えて見たい方には
必見の一作となっています。
また、心身の責めも強烈ですが、
それを行っている側も
プロの拷問官や猟奇犯罪者ではなく、
「普通の人」として徹底して
描かれている部分も
かえって恐ろしさが増しますし、
まったく隙のない構成で、
えげつない状況を叩き込んでくる
展開も凄かったです。