タイトル | 群青にサイレン |
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原作・漫画 | 桃栗みかん |
出版社 | 集英社 |
かつては万能だったものの、
全ての分野でいとこの空に負け、
敗北感を抱えていた修二は、
高校の入学式で、自分よりも
ずっと小柄なままの空に再会し、
彼に勝つべく野球部へ入部するが……。
挫折感な嫉妬など、重い感情と、
少年らしい爽やかさが交錯する、
美しい描画や構成も魅力の、
新感覚青春野球漫画です。
群青にサイレンのあらすじ紹介
無事高校入学を迎えた
吉沢修二。
父を亡くしてはいるものの、
多忙な母親と大好きな祖母、
そして勝気な妹に囲まれ、
充実した日々を送っていました。
しかし修二には、かつて
いとこの空にあらゆる面で
負け続けてしまい、
さらには得意の野球まで
エースの座を奪われる
苦い記憶を持っていました。
その挫折感などもあり
野球を辞めてからも
思い出に悩む日々を送っていましたが、
高校の入学式で空に
再会することになります。
純粋に再会を喜ぶ空をよそに、
今や大きく差がついた体格で
力の違いを見せてやろうと、
再び野球部に入ることにした
修二でしたが、彼はすぐに
空の能力を知ることになります。
群青にサイレンのネタバレと今後の展開は?
修二が小学五年の頃、
いとこの空が東京から越してきました。
少し警戒していた風の空でしたが、
元気な修二は彼に野球を教え
たちまち打ち解けていきます。
球の扱いにも不慣れな
空でしたが、その能力は抜群で、
勉強でも運動でも
修二からトップの座を奪い取り、
そして得意分野の野球でも
修二をしのぐ力を見せます。
そのため修二は
野球を離れていたのですが、
高校の入学式で空を発見します。
一方修二を見つけた空は
何のわだかまりもなく
再会を喜んでくれましたが、
空の身長が自分よりもずっと
小柄であることに気付いた修二は、
空とともに野球部に入ることに。
それは野球が好きというよりも、
今や自分よりもずっと体格が劣る
空を上回る存在になりたいという、
純粋とは言い難い動機なことを
修二自身も分かっていました。
しかし、大好きな修二の祖母と
一緒に暮らしたりと、
あらゆる局面で自分の「場所」を
奪い取っていく空への負の感情は
抑えがたいものがあったのです。
しかし弱小な野球部の事情から、
すぐに練習試合に出場する
チャンスを貰った修二は、
またも空の意外な能力を
目にすることになります。
群青にサイレンの読んでみた感想・評価
競争率が高いほど、また大人になるほど
色々な意味で挫折を味わいがちなのが
スポーツの世界ですが、
基本的に「勝者の物語」を描く
創作世界では意外と、「挫折」は
描きにくいものがあります。
ダメージが大き過ぎると選手として
再起不能になってしまいますし、
一方軽い話ですと、説得力がなくなり
読者の共感を得られないからです。
しかし、本作の修二は、
仲良くしてきた空にあらゆる面で勝てず、
唯一自分のフィールドだと思っていた、
野球でもまったく勝つことができずに、
辞めてしまうという、かなりリアルで
重い背景を抱いています。
人生を進める中で、諸々を
諦めてきた私にとっても、とても
納得がいく決断でしたし、
その後空に向ける醜い感情も
本音の部分で言うなら十分に
納得ができるものでもありました。
一方の空の方は修二に対して
何のわだかまりも悪意もない態度で、
このあたりも「天才あるある」です。
だからこそ空は妬まれつつも
周囲の人を惹き付ける形で、
カリスマ性も備えていくんですね。
その極端な対比と、立ち位置が
まったく違っても、チームのために
協力していかなければという現実も、
非常にリアルな部分があり、
ワクワクするものがありましたね。
群青にサイレンはこんな方におすすめな作品!必見
スポーツは様々ありますが、野球ほど
動きの種類が豊富な競技は少ないですね。
だからこそ選手は得意分野を見つけて
活躍していくわけですが、また同時に
多くの有力選手は「エースで四番」の
経験があったりするものです。
つまり野球という競技は、
成功した選手でもどこかしらで
「挫折」を味わうものと言えます。
本作でもまた、修二は親友だった空に
挫折を味わわされてしまい、
中学では野球を辞めていて、
高校で再会した空の実力に
また圧倒される導入になっています。
そろほろ苦い心理描写は、
桃栗先生が「河下水希」名義で描いた
多くの作品には見られないものながら、
本作は実に説得力のある感情の迸りや
嫉妬心と憧れの発露などを
十二分に味わうことができます。
身近で仲が良いからこそ
どうしても妬まずにはいられない、
そんな醜い部分すらリアルに
キャラの内面として落とし込む本作は、
明るく楽しいだけではない、「大人」な
作品を求める読者にも最適でしょう。
また、週刊少年ジャンプ誌上でも
際立っていた画力の高さや
テンポの巧さも健在であり、
ハードな内面描写にも関わらず、
実に安心感を持って読み進められる
非常に優れた一作と言えるでしょう。