タイトル | 艶姿純情花吹雪 |
---|---|
原作・漫画 | 長浜幸子 |
出版社 | 集英社 |
流星会会長の妻として、
組を全力で切り盛りしてきた紫。
しかし流星の遺言で紫は、
組社会を出てカタギの女性として
新たな人生を歩むことになるが……。
腕っ節も気性も強い紫の、
ハンサムな大活躍が堪能できる、
元極妻系ハートフルストーリーです。
艶姿純情花吹雪のあらすじ紹介
筋金入りのヤクザ流星と出会い、
結婚してからは「姐さん」として
流星会を取り回してきた紫。
しかしその流星が亡くなった
葬儀と跡目発表の場で紫は、
流星との関係を断ち切り、
カタギになって生きることを
告げられることになります。
もちろん紫には唐突で意外でしたが、
それが流星の強い望みだと分かり、
反抗せずにカタギになります。
もちろん、「一般的な社会」は、
紫が暮らしてきたヤクザ世界とは違い、
強過ぎる紫はどこでもクビになるものの、
懸命に仕事をこなし働きますが、
そんな彼女を付け狙う黒い影が
次々と迫ってくるのでした。
艶姿純情花吹雪のネタバレと今後の展開は?
平成二十二年、五月。
勢力を誇ったヤクザ組織、
流星会会長の高崎流星が亡くなります。
多くの参列者が集った葬儀の場では、
後継者たちが次々に発表されますが、
同時に流星の妻、紫の籍を抜き、
完全なカタギにする旨が
公式に発表されました。
紫は昔から組長の妻として
献身的に組を支えてきた功労者であり、
組員はもちろん紫自身も、
全く納得のいかない話でしたが、
それは流星の遺言であり、
自由に生きろというメッセージでした。
そのことを知った紫は、反発せず、
惜しまれながら組という世界を出て、
カタギとしての暮らしを始めますが、
今までヤクザ組織の中で、
手腕を振るってきたはずが、
バイトすらままなりません。
未成年に出した酒は没収する、
体を触ってくる客には肘を見舞う、
ケチな結婚詐欺話は率先して潰すと、
やっていることは正義正論ながら、
ハード過ぎる対応が仇となり、
方々でクビになってしまいます。
しかも郵便受けには脅迫じみた
怪文書は刺客の影まで
うろつくようになったところで、
兄貴の指示を受けていたタカシは
ついに我慢できず飛び出し、
紫と接触することになります。
姐さんは働く必要はないという
タカシの見解を紫は一喝して
退けてしまいますが、
しかし恩義ある組員たちは
はいそうですかとは捨て置けず、
事態を解決するために、
様々な手を打っていくのでした。
艶姿純情花吹雪の読んでみた感想・評価
ヤクザから足を洗った
「元ヤクザもの」の作品ですが、
理由なくオラついたりはせず、
かと言ってヤクザを嫌悪せずと、
バランスの取れた描写に
好感が持てました。
特に今のご時世はそうですが、
ヤクザやその関係者を志し、
骨を埋めるつもりで進んでも、
結局一生ヤクザで終える人は
決して多くはありません。
不義理不始末が絡む場合や、
個人的な考えの変化、
場合によっては組全体が、
様々な理由で潰れることも
少なくないので、ヤクザ以後の方が、
人生は長くなることが多いのです。
本作もまた、絶対の愛情と忠誠を
尽くした組長の遺言により、
「極妻」だった紫がカタギになり、
「普通」に生きようとする物語で、
今まで創作化されることが少なかった、
リアルな部分が強い内容と言えます。
しかし、いくら組員でないとは言え、
「極妻」を長い間やっていたりすると、
その履歴が一般社会では
通用しないこともあって、なかなか
条件の良い仕事はないんですね。
しかし、パワハラセクハラに
普通に直面しても決して萎縮せず、
自力で回避するだけでなく、
絶対に楽な方向には行かない
紫さんのハンサムさには
正直痺れました。
イキがりでも何でもなく、
弱みを見せないタイプだからこそ、
逆に守りたくなるタイプと言うか、
恩があるとは言え今では他人の
ヤクザたちが必死で守るのも
納得がいく人と言えました。
また、様々な理由から紫を狙う
プロの刺客たちもしっかり強く、
おちゃらけた所が少なかったのも、
作品の緊張感を保つという点で、
非常に妥当な設定だったと思います。
艶姿純情花吹雪はこんな方におすすめな作品!必見
いわゆる侠客や「不良」の世界には、
他の世界にはない独特の「仁義」や、
ルールの数々があります。
そしてその本道を行くことが「男」と
されていくわけですが、ヤクザ世界は
どうしても「悪」の側面があり、
現実はもちろん創作の世界でも、
リアリティを持って「任侠」を貫くのは
なかなか難しいものがあります。
しかしその点本作の紫さんは、
組長の遺言を受けてカタギになったため、
「悪」をする必要がなく、また、
悪に生活を支えられることも少なくなり、
ごく自然に「任侠道」を歩んでいます。
悪いことをしないで「男の道」を貫き、
真っ直ぐに生きていられる点で、
紫さんは本物の「任侠」であり、
偽りのない「男」でもあると
読み取ることができます。
ヤクザものにつきものの後味悪さや、
「正義」を気取っているものの、
自分たちはどうなのか、的な、
「葛藤」を味わわずに痛快さを
満喫したい方には最適です。
また、ハンサムな女性が好な方、
「無理」のない元ヤクザ系漫画を
読みたい方にも必見と言えます。
全体的に紫の度胸と人間力が
非常に強烈なものがあるので、
危機に際しパニクるヒロイン、的な、
悪い意味での定型を
目にする不安が少ないのも
本作の良いところでしょう。