タイトル | 逃亡弁護士 成田誠 |
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原作・漫画 | 剛英城 髙田優 |
出版社 | 小学館 |
殺人の嫌疑をかけられ、
逃亡している元弁護士成田誠。
捕まれば死刑という状況の中、
法律やそれを使う人間をまだ
信用している成田は、
誠実は行動を通じて
困った人に向かい合っていく……。
法律やその運用のリアルと
逃亡犯の生々しさを描く、
一風変わった法的物語です。
逃亡弁護士 成田誠のあらすじ紹介
いわれのない罪を着せられ、
逃亡生活を余儀なくされる
元弁護士成田誠。
捕まれば確実に死刑という状況で、
人の目を逃れ必死に動き、
職を転々とする毎日ですが、
その中でも法律に阻まれ、
様々な苦しみを味わう
人達と出会っていきます。
ある時は仕事先の家で会った婦人、
またある時は復讐に失敗した男性、
追及を逃れる元ワル……、
様々な年齢で背景も異なる
難しい状況を抱えた人たちに対し、
成田は決して法を犯さず、
かと言って罪を犯した者を見捨てず、
自分のできる全力をもって
彼らと向き合っていくのでした。
逃亡弁護士 成田誠のネタバレと今後の展開は?
弁護士、成田誠。
人柄も仕事にも誠実で、
周りからも信頼されていましたが、
覚えのない「同僚殺し」の容疑を、
突如としてかけられてしまい、
逃亡生活を送ることに。
当然、弁護士活動などできず、
偽名を使って様々な職を
転々とする毎日でしたが、
その中でも成田は、
苦しむ人たちを見過ごせず
話を聞きに動きます。
ある時、「山田」という
偽名を使い警備の仕事を
始めることになった成田。
早速家の見回りを
任されることになりますが、
屋外で包丁を持った女性を、
目撃することになります。
その女性こそ依頼主の
元妻の久美子さんでしたが、
包丁を持って家に来るほど、
切羽詰まっていた彼女は
人の話を聞く様子ではありません。
しかしその翌日、公園で鉢合わせた
成田に久美子さんは、自分たちの
「事情」を話します。
本来息子の拓也君は、久美子さんとは
血がつながっていませんでしたが、
養子として貰った子を実子として、
嘘の届け出をしてしまったらしく、
またそれとは別に深刻な暴力が原因で
離婚をしてしまったとのことでした。
自分に非がないにも関わらず、
面会すら許されない状況に、
追い詰められていた久美子さんに、
成田は一旦親子関係を解消し、
それから養子に貰えばいいという
大胆な提案をします。
しかし拓也君は実は養子ではなく
夫と不倫相手との子供であり、
しかもその不倫相手が、
今は拓也君の母として
家庭に入っていました。
事態に絶望する久美子さんですが、
成田の真摯な説得とさらに大胆な
一つの策によって、状況は、
急展開を迎えることになるのでした。
逃亡弁護士 成田誠の読んでみた感想・評価
ハラハラドキドキと、弱者救済の
温かさが組み合わさった、
斬新な一作でしたね。
法律への意識の高まりもあって、
最近では様々なジャンルにも、
法的アプローチが出てきますが、
本作は「逃亡」という完全な法破り、
しかもそれをしているのが、
人情派の弁護士というのが斬新です。
実際成田は自分が逃げるだけでも
明らかに手一杯な状況なのに、
困っている人を見過ごせず、
自分は決して法を犯さないのに、
犯罪をしている人に対しても
優しい目線を忘れることはありません。
つまりは根っからの弁護士体質で、
人を助けることに適性があるのですが、
だから彼が冤罪で追われていることに、
確信を持ち続けていられるんですね。
最近は作中で人柄や役割が大きく
変化してしまう作品も多いですが、
本作の軸は非常に一貫しており、
ある意味では安心感を持って
楽しんでいくことができます。
また、成田がぶつかる問題も、
ストーキングやお金絡みなど、
いかにも日常にありそうな話で、
読んでいるだけでも知識が入り、
いざという時の助けになりそうな
頼もしさもありますね。
逃亡弁護士 成田誠はこんな方におすすめな作品!必見
非道な法律の運用をされた容疑者を救う、
まったくの冤罪である被疑者を救済する、
創作上の弁護士の役どころの多くは、
こうしたタフな状況を任されることに
なったりしますが、本作は、冤罪から
「逃亡」しているのが弁護士という話です。
当然弁護士活動などできず、人と人との
密接な交流もしにくいという立場ですが、
本作の主人公成田は、法律やシステムにも、
自分を追い込んだ人間そのものにも
失望することはありません。
自らが逃亡犯なのにも関わらず、決して
規範や人情の心を忘れず、法を犯さず、
しかし道を間違えてしまった人には優しい、
成田にはそうした本当の意味での強さがあり、
単に追及から逃れるプロというだけの
キャラクターとはまったく違います。
法律に関する詳しい知識や、その使い方、
法の網をくぐって悪さをする連中への
様々な対策などの知識は極めて豊富で、
そのディテールは「クロサギ」を
思い出させるものがありますが、
本作の対応はずっとソフトです。
勧善懲悪の原則がありつつも、
相手を潰す冷徹さとは違う温かさを
満喫したい方には最適です。
また、逃亡者と弁護士的な支援、
そしてワケアリの人達といった、
扱いにくい様々な要素を組み合わせ、
斬新かつ優れた一作に仕上げた
構成力の巧さなども
特筆すべきものがあるでしょう。