タイトル | 金魚の夜 |
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原作・漫画 | KKIE |
出版社 | ソルマーレ編集部 |
照明メーカーのデザイン部門で
バリバリ仕事をこなし、
彼氏ともうまくやっている朱里。
しかし彼女の心は満たされず、
また容赦のない現実が、
「幸福の幻想」を破壊する……。
働く女性のリアルな辛さや難しさ、
素の感情が容赦なく描かれた、
実像と「体温」を強烈に感じる、
社会人女性の人間物語です。
金魚の夜のあらすじ紹介
石原朱里は照明会社の
デザイン担当部署で働く
アラサーOL。
好きの仕事をバリバリこなし、
会社では一番遅くまで
残って業務を続けるほど熱心で、
しかも先輩の紹介で
付き合うことになった坂本とも
週末過ごす関係を続けています。
大体幸せにも見える朱里ですが、
社内での嫌味な先輩と、
彼氏である坂本が歩いているのを、
唐突に目撃してしまい、
幸せが幻想だったことに
気付かされることになります。
さらには激務で心身が弱っている
嫌なタイミング会食があり、
しかもその席で同僚が、
自らの陰口を叩いているのを
聞いてしまった朱里は
ついに限界に達してしまいます。
金魚の夜のネタバレと今後の展開は?
照明会社でデザイン設計を担当する
石原朱里。
三十歳を目前にした彼女は、
周りに誰もいなくなった時間帯まで
熱を入れて仕事する頑張り屋で、
製薬会社の営業をしているという
彼氏、坂本とも関係を重ねる
忙しい日々を送っていました。
しかし彼女は、何も見つけ出せず
街中を歩いているような、
空虚な感情を抱え込んでおり、
同僚の高橋さんともソリが悪く、
激務のストレスもあり、
心身が弱ってもいました。
そんな中残業がなかったことで
友達と街に飲みに出た朱里は、
その帰りに彼氏の坂本が、
同僚の高橋さんと一緒に
歩いているのを目撃します。
大変だけど好きな仕事をし、
週末にはデートする彼氏もいる、
そんな朱里の「そこそこ幸せ」という、
自らを支えてきた認識が一瞬にして
粉々に崩壊したことで、
朱里は昏倒してしまいました。
幸い体には異常がなく、翌日も
無事出社できた朱里ですが、
大学時代には彼氏の浮気問題で、
修羅場を演じたこともある彼女も、
「大人」になってしまったからか、
問い詰めることさえできません。
しかも気乗りしない感じの
会社の会食の席でも
同僚たちから陰口を叩かれ、
耐え切れなくなった朱里は
トイレで激しく吐いてしまいます。
金魚の夜の読んでみた感想・評価
オーソドックスなアラサー系の
恋愛物語なのですが、
一つ一つの状況がかなり重く、
現実的な質量というか
シビアさも感じられる作品です。
本作の見所は朱里の境遇です。
三十歳を目前にして彼氏もいて
オフィスで仕事ができて、と、
なかなか条件が揃っている感じですが、
その実オフィスでは陰口を叩かれ、
彼氏とも別れてしまうなど、
ついてない部分もおおいですね。
本作はその「不幸」を、ギャグや
漫画的展開でボカしたり、
読者との距離を置くのではなく、
実にリアルにそのダメージまでを
描き切っているので、
胸が痛くなるような部分がありました。
また順調にキャリアを重ねて
そこそこうまくやっていたはずが、
実は全然そうではなかったと、
気付かされる辛さも実にリアルで、
茶化せないだけの強さがあります。
いい具合にふわっとできる展開が、
多くの作品には盛り込まれていますが、
本作ではそうした部分も控えめで、
だからこそハードでもありましたが、
故に様々な部分でリアルな感情が
湧き出てくる感じも良かったです。
ルックスや仕事、地位といった、
「要素」だけでは案外、
人間はうまくやるのが難しく、
それをつなぐ「何か」がいることを、
改めて思い出させてくれる
一作とも言えるのではないでしょうか。
金魚の夜はこんな方におすすめな作品!必見
人生においては何かにつけて、
挑むべき、越えるべき山がありますが、
特に社会人になってからですと、
頑張って山に挑んでも褒めてはくれず、
必死の思いでルートを選択しても、
気付いて貰えない部分もあります。
だからこそ作品上では全体の流れを
一気に変えてしまう「王子」的存在が、
クローズアップされるものですが、
本作の朱里が抱える渇きぶりは、
実にリアルであり、それだけに
胸にくるものがあります。
彼氏と別れるハメになっても、
ゆっくり事情を聞いたり、
相手に非があるのだからと、
親が同情してくれるのも
若いうちだけだったりする、
キツい現実も盛り込まれています。
だからこそ人生を変える出会いや
職場での関係に癒しがあり、
リアル系の中での割と、
ビターな状況故の面白さや
ホッとできる瞬間を
味わいたい方にオススメです。
また本作では、結婚や同僚、
家族といった様々な要素が
朱里にのしかかる構図があり、
辛い部分もリアルですが、
良く読んでみるとその辛さは
社会に出ている故なんですね。
ある意味では強い自立した
一人の女性でいるための
「代価」を描いているとも言え、
パリッと爽やかな会社ものとは
また違う手触りを感じたい方にも
オススメできる作品だと思います。