タイトル | 秒速5センチメートル |
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原作・漫画 | 新海誠 清家雪子 |
出版社 | 講談社 |
成就できなかった初恋、
伝えられなかった思い、
甘酸っぱくセピア色の記憶……、
誰にでも有り得る初恋の、
そして恋愛未満のピュアな
少年と少女の交流を、
情感たっぷりに描き切った
「秒速5センチメートル」の
コミカライズです。
秒速5センチメートルのあらすじ紹介
鹿児島県、種子島。
恵まれた大自然の中で、
サーフィンに熱中する澄田 花苗。
彼女は、中学の頃島に転校してきた
遠野 貴樹を好きになっていました。
中二の春、「東京」から来た、
島の男子とは違う雰囲気のある
貴樹に恋をしてしまったのです。
必死で勉強し貴樹と同じ高校に合格、
文化祭をきっかけに仲良くなりますが、
告白も諦めることもできないまま。
モヤモヤした日々が続く中、
「波の上に立てたら」と花苗は
目標を立てて海に向かいますが……
秒速5センチメートルのネタバレと今後の展開は?
互いに転校経験があったことで
仲良くなった貴樹と明里。
周りからからかわれたりしつつも
徐々に交流を深め、
できれば同じ中学を受験したい
というほどに親しくなりました。
しかし明里が転校したために
一緒の中学に行くという約束は
果たせなくなってしまいました。
地元も学校も別々になったため、
自然に疎遠になってしまった二人。
手紙のやり取りは続けていましたが、
なかなか会うところまではいきません。
そんな中貴樹が鹿児島へ
転校するという話を聞いた明里は
その前に会いたい旨を伝えます。
貴樹は二週間かけて、
ラブレターのような手紙を書き、
電車に乗り込みます。
しかし、詳細に予定を立てたものの
貴樹は待ち合わせ時間に遅れ、
駅には明里の姿はありませんでした。
さらには風に吹かれたために
手紙も落としてしまった貴樹。
しかし、深夜にずれ込みながら
到着した駅には
明里の姿があったのでした。
二人はとりとめのない話をしつつ
駅を出てさらに歩き、
桜の木の前でキスを交わします。
秒速5センチメートルの読んでみた感想・評価
誰にでも感じ得る、
しかし持ち続けることは難しい、
初恋特有の「あの」気持ち。
多分間違いなく好きだった、
でも恋愛というにはあやふやな
幼い二人のつながり。
本作で描かれているのは、
そんな淡く、純粋で美しい
たくさんの思いです。
多くの恋愛漫画で描かれるよりも、
さらに淡い少年少女のやり取り。
過激なシーンもHなシーンも、
もっと深刻な事件もありませんが、
ずっと切なく胸が疼いていました。
学校を抜け出し、電車に乗り、
まるで駆け落ちのように出会い、
唇だけを合わせるキスをした二人。
しかしそれだけ大きな秘密を
共有したにも関わらず、
時が経つにつれ互いの記憶は薄れ
思い出も交流も希薄になっていく。
考えてみれば当たり前のことです。
そして誰にでも起こることです。
ですが、胸にじわりと溜まる思いは
まるで本当に体験したようでした。
「失恋をしていく物語」と言っても
差し支えない構成であり、
だからこそこの普遍的な物語は
斬新な驚きに満ちていたのでしょう。
秒速5センチメートルはこんな方におすすめな作品!必見
「君の名は」で大ヒットした新海監督。
その優れた作品は高い評価を受けています。
新海作品の長所は様々ありますが、
私は「間」と映像美、
そして音楽やSEとのマッチングに
特徴があるのではと思っています。
ただ、だからこそ、普遍性のある物語でも
映像化は簡単ではありません。
しかし、本作は「間」や余韻の代わりに、
より丹念な物語構成と描き込みにより、
作品の空気感を見事に再現しています。
また、三作で一時間という短編だった
アニメ版よりも深く踏み込む部分もあり
原作ファンにも納得というだけではなく
より各キャラへの理解を深めるには
必見とも言える内容になっています。
一方で、余分な演出は盛り込まず、
分量を変に増やしてもいないので
原作の雰囲気を乱してもいません。
ネームやコマ割り、そして描き込み。
そうした各要素から伝わる丁寧さは、
大人気を博した原作の良さを活かし、
さらには、「大人の恋愛」とは対極の
貴樹と明里、花苗の淡くピュアな
恋であり思いを大切にすることにも
つながっているように思いました。
原作は非常に有名な作品ですが、
この漫画版から入っても、
まったく問題ないかも思います。