タイトル | かくりよものがたり |
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原作・漫画 | 藤崎竜 |
出版社 | 集英社 |
東北地方に、霊たちが住まう
特別な村があった。
そこにいるアメ姫たちは、
怨霊を浄化することで、
人助けを続けていたのだが……、
かつての歴史上の人物たちと
現代的な世界、そして
ファンタジックな世界観が
巧みに混ざり合い、
独特の味わいを生み出している、
伝奇ファンタジーの傑作です。
かくりよものがたりのあらすじ紹介
東北地方の山の中、
人としての命を失った者のための
村がありました。
そこでは、アメ姫を中心に
かつての人間界の英雄たちが
暮らしていたのですが、
異界から怨霊が出てくるペースが
最近異様に早まっていました。
寿命を削りながら怨霊と向き合う
アメ姫でしたが、
浄化した幕末の人斬り、岡部から。
どうやら、彼らを現世に
引き上げる敵がいるらしいことを聞きます。、
人類のために力を振るうアメたちは、
この事態を放っておくことはできず、
激闘に身を投じることになるのでした。
かくりよものがたりのネタバレと今後の展開は?
東北地方の山中には、現代的でない
霊場「カミツヨミド」があります。
人生を終えた霊のための村に、
多くのかつての英雄が暮らしています。
しかし、近頃様子が妙です。
十年に、二、三出ればという
怨霊たちが、最近多発しているのです。
怨霊の浄化にはアメ姫の力が必要で、
浄化のたびにアメ姫は消耗し、
寿命をすり減らしてしまいますが、
現世の人間の災厄を黙認はできず、
アメ姫と幼馴染、サルタヒコは、
現場に出撃することに。
しかし、ゲリラ豪雨が降る街に
前触れなく出現した幕末の人斬り、
岡部 菊外の怨霊は、
近くを歩いていたサラリーマンの
芝生氏を惨殺し、逃げてしまいます。
芝生氏を復活させ、改めて人斬りに
対応するアメとサルタヒコ。
幸い、人斬りはすぐに見つかり、
特別な法具と術によって、
岡部の魂は浄化されました。
正気を取り戻した岡部は、
自分を死世界から引き上げた
「犯人」がいるとアメたちに告げます。
その事実は、謎を明かすものでしたが
一方でさらなる苦境を
意味するものでもありました。
かくりよものがたりの読んでみた感想・評価
今までファンタジックな作品を
大量に読み込んできましたが、
やはり、「背骨」があるのがいいですね。
作中の舞台は架空ながら現代の日本という、
私たちが住んでいるのと「同じ」場所ですし、
主人公サイドも敵方も、
かつて日本で活躍した英雄たち。
もちろん、柔らかい感じのアレンジは
随所になされていますが、
怨霊として化けて出てきた人々すら、
読み手がイメージする「有名人」たちと
かっちり重なる姿であり、
物語にグイグイ引き込まれていました。
また、主人公サイドの潔さも良いですね。
立場上、どうしても自分の身を削り、
他人の命を助けて、怨霊にさえ
平穏を与える立場なのにも関わらず、
常に笑顔を忘れず役目に向かう
アメの強さとサルの激情、
そしてそのアメを支える
かつての「英雄」たち等々、
現代的で大胆な改変が
なされているにも関わらず、
どこか懐かしいというか実感があり、
そこが物語を活かしてもいますね。
死んだらそれで終わり、ではない、
懐も底も広い世界観だからこそ、
活きる描写も多かったと思いました。
かくりよものがたりはこんな方におすすめな作品!必見
1970年代頃から90年代にかけて、
「伝奇もの」というジャンルが
小説などで流行したことがあります。
実際の歴史や伝承をベースに
大胆な改変などを加えていく形で、
重厚な説得力と独自の世界観が特徴です。
しかし一方で書く側には歴史の知識と
ファンタジー的な素養が求められ、
難易度が高いジャンルでもあるのですが、
本作は現代日本を舞台にしながら、
非常にレベルの高い伝奇作品として
仕上がっています。
歴史的要素とファンタジー、
そして独自的要素が絡み合う
名作「封神演義」を描いた
藤崎 竜氏ならではの、
奇想天外ながらも深みがあり、
しかも漫画的楽しさを忘れない、
王道的かつ洗練された伝奇ものが
こうやって誕生したことは、
個人的にも嬉しいですね。
熱くて動機のある、痛快な
バトル系作品を読みたいけれど、
荒唐無稽な作品も嫌だという方には、
本作の独特のテイストが、
ぴったりと肌に合うのではないでしょうか。
割とあっさりとシンプルな線で
キャラの良さを最大限引き出す画力や、
複雑な要素をテンポ良く展開する構成など、
基本的な部分の技術が非常に高いことも、
良い意味での読みやすさにつながっており、
読者にとってありがたい要素と言えます。