タイトル | 東京エイティーズ |
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原作・漫画 | 安童夕馬 大石知征 |
出版社 | 小学館 |
1980年代、
ネットも携帯もない時代、
大学生たちは、
濃密かつ充実した
人権関係を送っていた。
高校だったらあり得ない、
大人になったらこうはできない、
そんな熱い日々。
青春の明るさも苦さも
面白さも詰まった、
「あの頃」をリアルに描く、
若者漫画の傑作です。
東京エイティーズのあらすじ紹介
広告代理店に勤める、真壁 純平。
順調に出世街道を歩み続け、
私生活も鮮やかですが、
楽しみもどこかマンネリに感じる
内心何となくつまらない思いを
抱き続けていました。
そんな時、彼に女性から電話が
かかってきました。
電話の主は森下 愛。
大学時代様々な経験を
ともにした仲間であり、
かけがえのない存在でした。
しかし一方で様々な思いを
抱く関係でもありました。
そんな彼女から合わないかと
言われた瞬間、純平は、
大学当時の気持ちに
なっていたのでした。
東京エイティーズのネタバレと今後の展開は?
1980年代、受験戦争真っ最中の
東京の大学に、真壁 純平は
受験のため訪れていました。
手応えはあまり芳しくありません。
一応教育学部には入れそうですが、
教師になりたいわけではなく、
できれば別学科が良かったからです。
その時純平は、隣の席の女子が、
カンニングをしているのを目撃します。
一点差で合皮が分かれ、
自分が落ちて彼女が受かるかも知れない、
厳しい受験テストの中では、
不正を見過ごすことはできず、
純平は声を上げかけますが、
それに気付いた女子に止められます。
その子は、何でもすると言いい、
さらには強烈な提案までして、
純平を口止めしようとしました。
困り切った純平は、報告はせず、
しかし行為を認めるわけにもいかず、
声を荒らげて教室を出て行きました。
学校を出た純平は、イライラした気持ちで
街を歩いていきますが、その時、隣席だった
カンニングした女の子が腕を組んできて、
完全にペースを奪われてしまった純平は、
振りほどくこともできませんでした。
そして無事大学に合格した純平は、
当然教室で授業を受け始めますが、
彼の隣の席についたのは、
受験の時隣の席で、
カンニングをしていた子だったのです。
東京エイティーズの読んでみた感想・評価
根拠なく「懐かしい」感じを
味わうことができた一作です。
私は80年代に大学に
行っていたわけではなく、
もっと若い世代なのですが、
彼らの活力溢れる青春に
懐かしさを感じてしまいました。
登場する各キャラの距離感が、
不自然にならないギリギリで
近くに設定されており、
誰と付き合うんじゃなくても、
こりゃあ楽しいだろうなと
その輪の中にいる自分を、
イメージさせるほどの
「いい感じのリアル」が
存在しているんですよね。
インターネットも携帯もなく、
ちょっとしたことでも、直接
顔を合わせて話をして、
好きな人と喋るにも、
照れるからメール、的な
選択肢はないので、
何とか距離を取って間を整えて、
話をして、でもうまくいかずに
みじめな気にもなるような、
ほんの少し会話を交わすにも
傷つくことを覚悟しなくては
できなかった時代ならではの、
真っ直ぐさが全体から
感じられるのが良かったです。
もちろん町並みもしっかり昔で、
服装や会話のセンスも
時代を感じる点がありました。
画力も非常に高く、例えば
大学に入り美しくなった森下さんも、
受験の時の地味な森下さんにも、
しっかりと異なる魅力がありつつ、
内面の良さは一致している形で
描かれていたりと、
いい思い出をより美しく
蘇らせてくれそうなほどです。
東京エイティーズはこんな方におすすめな作品!必見
漫画がすっかり老若男女問わない、
表現形式として認知されている昨今、
「昔の日本」を懐かしんだり、
「あの頃」を振り返るような作品も、
非常に多く存在しますが、
そうした一種のリバイバルの中でも、
とても優れた「当時感」を持っていたのが
本作、「東京エイティーズ」です。
もう高校生ではなく、親の目も、
学校からの監視もあまりない、
一方で社会人的な責任も持っていない、
そして、今とは違って、ブログや
SNSで情報が拡散される心配もなく、
かなりの「ムチャ」もやれた、
当時の無軌道で無謀ですらあり、
しかし真っ直ぐで面白い
大学生たちの熱さや悩み、
距離が近いが故のトラブルなど、
本作には大学ライフのほぼ全てが
ぎゅっと詰まっています。
当然、人の数だけ大学生活があり、
周りと馴染めなかった人や
部活一本だった人も多いですが、
本作の「らしい」大学生活は
かつて大学で青春を送った人や、
結局行く機会がなかった人、
あるいは年齢が達していない人にも、
キャンバスライフを追体験できる、
非常に優れた力があります。
80年代の大学生活を味わいたいなら、
まずは本作から読んでみるのが
ベターではないでしょうか。