タイトル | 奈津の蔵 |
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原作・漫画 | 尾瀬あきら |
出版社 | 講談社 |
「夏子の酒」の続編で書かれた漫画です。
夏子の祖母にあたる奈津が主役で
昭和初期の佐伯酒造に嫁ぎ酒造りの
魅力に惹かれます。
でも、この当時は女人禁制というしきたりで
蔵にも入れません。
戦争による男手不足が災いして
奈津がお酒を作ることになります。
奈津の蔵のあらすじ紹介
女性が蔵には入ってはいけない禁を破り
奈津は蔵から漂う醪の香りを
嗅いでしまいます。
その香りに引き込まれ酒造りに興味を
抱いていきます。
でも、女性が蔵に入ると酒の神様の
松尾様が怒り酒を腐造すると言われ、
その迷信の為に入ることは許されません。
でも夫は奈津の酒に対する情熱と
醪を嗅ぎ分ける優れた嗅覚が
あること知ります。
そして奈津に醸造に関する
本を渡します。
酒造りの不思議さと面白さにどんどん
引き込まれていくのでした
奈津の蔵のネタバレと今後の展開は?
昭和初期から戦時中の酒蔵の様子が
描かれています。
まだ、電気も通っていない村の様子や
酒米を作付けする小作の人の
立場も覗えます。
反対者が多く電気を村に通すだけでも
大変な時代ですが、奈津の夫の善造は
吟醸酒を造るためには絶対、電気で
動かす精米機が必要だったのです。
そのために村長に掛け合ったりと
奔走します。
これで造らないと全国鑑評会への
出品が叶わないからです。
そして、色んな失敗を繰り返しながらも
賞が貰えるまでになっていきます。
戦争が始まり、男性は戦争に召集され
男手が足りなくなっていきました。
酒造りに女性が関わると腐造が起こり
酒蔵が穢れるとまで言われた時代ですが、
人手不足のために蔵に女性が入る事を
許されます。
戦争という人災が起こしたもので
女性が蔵に入れるようになった皮肉も
描かれています。
でも、この戦争によって奈津の夫と
娘を失ってしまいます。
それでも、奈津は夫の願いを
叶えるために諦めずに蔵を守り抜きます。
奈津の蔵の読んでみた感想・評価
酒造りを通して、その時代に関わる
色々なものが見えてきます。
ここまで、丁寧に作り込まれた作品は、
夏子の酒以上にマンガの世界に
入り込めました。
酵母を使って米から酒を造る難しさや、
こんなにも多くの人の力がないと酒が
出来ないものかを読んでいて
考えさせられます。
また、苦労して造った酒が必ずしも
良い酒にならず、失敗すれば腐造して
しまってそれを処分しないといけない
厳しさもしっかり書き込まれています。
女性の視点で書かれている所も、この
作品をグッと深く掘り下げていると
思います。
蔵に入れない奈津だからこそ、
酒に対する愛情がより
伝わってきます。
それと杜氏も酒造りに命をかける
覚悟で造っているんだというセリフが
随所でみられます。
奈津の夫である善造も兄の急死によって
跡を継ぐ事になり恋人もやりたかった
仕事も諦めて家業を継いでいる設定も
物語にスパイスを効かせています。
後には引き下がれない想いが村に電気を
通し、新しい精米機で誰もが真似できない
新しい吟醸酒を造る夢に向かうところも
応援したくなります。
奈津の蔵はこんな方におすすめな作品!必見
このマンガは、女性に読んでもらいたい
作品でもあり、また日本酒が好きな方にも
お勧めしたいです。
酒造りの行程もきちんと描かれて
いますので、なぜ吟醸酒の香りが
フルーティで果実のような爽やかな
香りがするのかも納得出来ます。
酒米を極限まで削って雑味を
取り除くとその奥に眠る米の魅力を
引き出す事が出来るのです。
こうした造る人の努力を知った上で
飲むお酒はまた格別なものになると
思います。
女性視点で描かれていますので、
女性にも共感できる部分が
多いと思います。
また、時代が昭和初期であり女人禁制の
酒蔵をテーマに書かれていますので
女性の立場が今とは違いますが、
その理不尽な想いには感情移入
しやすいと思います。
このマンガを読んで泣いた人も
多いのではと思います。
和食が無形文化遺産になった事で
海外の方が、それに合う日本酒を
飲まれる機会が増えています。
日本に興味を持った海外の方にも
日本の文化の側面を知って
もらいたいと思える作品です。