タイトル | 球鬼Z |
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原作・漫画 | 藤澤勇希 |
出版社 | 秋田書店 |
顔にはペインティング、背番号は999、
投げるのは直球のみ!
超型破りな「新人投手」が、閉塞した
球界に衝撃をもたらす。
Zが仕掛ける緊迫感あふれる
勝負の結果はいかに。
スポーツとはまた違う
雰囲気を持った、異色野球漫画です。
球鬼Zのあらすじ紹介
経歴も出身地も一切分からない、
顔にペインティングを施した巨漢の投手。
彼は、「Z」と呼ばれる、日当二万円で
マウンドに上がる超異色の投手でした。
もっとも彼には、プロどころか
野球人としての自覚もなく、あるのは
勝負を堪能する野性。
ここぞという場面に登板しては、
球界屈指のバッターとストレートだけで
勝負します。
本来、打者に極めて有利な状況では
ありますが、人間の域をはるかに超えた
Zのパワーと殺気に、プロ野球選手たちは
次々に打ち取られていくのでした。
球鬼Zのネタバレと今後の展開は?
背番号999、顔にはペインティングを
施した、出身も経歴も一切謎に
包まれた投手、Z。
彼は一切逃げることをせず、変化球すら
使わず、剛速球をミット目がけて投げるだけ
という超単純明快な戦いを続けて
いましたが、その人智を超える
パワーと野性に、あらゆる野球人は
敗北を続けてきました。
本場大リーグで主力だった
四番バッターも、長い経験を持つ
「野球」の達人も、球界でも最強クラスの
パワーを誇るチームメイトの鬼塚でさえも
歯が立たず、ボクサーのパンチをも
凌駕するほどの能力を見せ続けていました。
そんなZに新たな刺客が現れました。
彼の名は「ジーザス」、しかし彼は
温和さとも慈悲とも無縁な男であり、
アメリカ合衆国最強の戦士では
あるものの、無関係な人間への
暴力もいとわない不気味な死神でした。
他のチームに入っても、まったく「野球」を
しなかったジーザスですが、本来の
標的を引き出すべく、Zのチームメイトを
葬るという作戦を開始し、再起不能者を
出すほどの打球を直撃させるという
手段を仕掛けていくのでした。
球鬼Zの読んでみた感想・評価
実に「純度が高い」勝負漫画だと
思いましたね。
正体経歴まったく不明の
ペインティングピッチャー「Z」は、
敬遠はおろか変化球すらけっして
投げず、ただひたすらに勝負を
追い求めていますし、そんな彼の
「男気」というには獰猛過ぎる
オーラに、年百数十試合を戦う
プロ野球の世界で「駆け引き」や
「トータル的な成績を求める価値観」の中、
うまく、そして完全燃焼することなく大金を
稼いできたプロ野球選手たちが触発され、
牙をむいていくことになります。
その戦いはどこか武士の一対一の
勝負にも似た雰囲気があり、
見慣れた野球とはまた違う緊張感を
覚えました。
また、女子高生オーナーや普段からZに
言いようにやられている監督などの
脇役のキャラ立ちも非常に印象的で、
野球漫画としてはかなり独特な作品の
世界観を盛り立てています。
最強な「Z」にはライバルはいないものの
刺客はいて、彼らもまた規格外の能力を
持っていたりして、スポーツよりも上の
世界があることが明示されているのも、
かえって可能性を感じる描写で、
個人的には好評価ですね。
球鬼Zはこんな方におすすめな作品!必見
あらゆる種類の野球漫画が
登場してきた現代においては、
似たような作品を簡単に
見つけることができます。
それは、そこそこ面白い作品を描くには
材料が揃っているということになりますが、
逆に言えばこの作品ならではという
オリジナリティを出し切るのが
本当に難しいということになります。
また、現実でも、歴史と層が極めて
強力なジャンルだけに、漫画でしか
あり得なかったような選手が登場したり
していますので、読者を驚かせるのが
大変なジャンルだとは
確実に言えるでしょう。
しかし、本作は、主人公を厳密なところで
「野球人」から外していったことで
強烈な個性を演出することに成功しました。
まず、明らかに「Z」は
普通ではありません。
マトモな職業に就いていることすら
想像できないほどの規格外を
ベースに、恐ろしいほどの勝負師としての
本能と野性をむき出しにし続けています。
一匹狼の規格外と言うと、後年発表され
人気を博した「ONEOUTS」の
渡久地をほうふつとさせますが、
「Z」には計算や金といった付加的な
要素の匂いは一切感じず、
だからこそ強力かつ強烈です。
また、「Z」に翻弄される球界も、
当時はまだ交流戦もなく、大リーグに
挑戦するような選手もほとんどおらず、
オリンピックに本気だった
わけではなくと、かなり閉鎖的だった
時代で、コンディショニングに
関しても相当ずさんだった頃の
話だけに、ストイックに野球道を
まい進する鬼塚や、「道」をまったく
持たないが故にかえって凄まじい
純粋さを示す「Z」という個性が
より輝いている気もします。
アマチュア、特に高校までとまったく
異なるプロ野球の「空気」に
今ひとつ馴染めない方にとって、
本作は痛快な一つの答えを
示してくれるかも知れません。