タイトル | ばくめし! |
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原作・漫画 | 土山しげる |
出版社 | 日本文芸社 |
大きなリュックに草履履き。
競馬、競輪、競艇場とあらゆる
ギャンブル場に現れるその男こそ、
伝説の出張料理人・大張半次郎。
高額な報酬と引き換えに、頼まれれば
どこにでも参上。
依頼人の舌だけでなく、
心までも虜にしてしまう。
それほどの腕を持ちながら、
なぜさすらう?
そして、関係者以外は食すことの
できない「幻の料理」とは?
グルメコミックの
ヒットメーカー・土山しげるが贈る
「ギャンブラー料理人」物語!
ばくめし!のあらすじ紹介
大張半次郎は、高額な報酬と引き換えに
依頼人が望むどんな料理でもつくりだす、
出張料理人。
決まった場所に居つくことはなく、全国の
公営ギャンブル施設
(競馬・競輪・競艇場など)を
渡り歩いている。
彼に依頼したいときは、これらの施設に
出向いて直談判する以外に方法はない。
受けた依頼には全力で応え、あらゆる
感覚で、心で、味わう
「幻の料理」を提供する。
海外赴任する息子夫婦のための最後の
晩餐、立ち退き勧告を受けた競馬場内の
焼きそば店に捧げる復活メニュー、
再起を賭ける女子競艇選手のための
ダイエットメニュー、二十年ぶりの
親友との再会を彩りツキを呼び戻すための
居酒屋メニュー、かつて競輪場で栄えた
街を蘇らせるための新ご当地メニュー、
四十年前の名作任侠映画に隠された
思い出深き消えもの。
6つの勝負に挑んだ半次郎が出した
答え(メニュー)とは?
そして、その勝負結果は如何に?
ばくめし!のネタバレと今後の展開は?
海外赴任直前の晩餐では、
戦国武将が戦の前に食したといわれ、
昆布や栗、あわびなど縁起の食材を
中心に構成した和膳「戦国出陣膳」。
焼きそば店に提供した新メニューは、
焼きそばを今川焼のような形でかため、
中にそばめしを入れた「ヤキソバーガー」。
女子競艇選手に提供したのは、
ローカロリーの牛もつを使った
カレーや高野豆腐でつくった
フライドポテト(もどき)、そして、
使う油はパン粉を炒めるのみという
ローオイルコロッケ、ごはんの
代わりに千切りキャベツ、といった
「必勝メニュー」。
再会の居酒屋メニューは、
山形名物・サバの味噌煮を
使った「ばくだん揚げ」。
天狗が飢饉に苦しむ村人のために
鶏を放った、との伝承をヒントにした
新ご当地メニューは、鶏ひき肉を鶏の
カタチに揚げたものを具材とする
「鶏天具カレー」。
そして40年前、後に名作といわれる
任侠映画中で老俳優が食した
思い出の「消えもの」は、当時
仕出ししていた京都の一流料亭の
献立を利用したつくりあげ、さらに
当時現場にただよっていた緊張感をも
蘇らせるために、本物の極道を
動員させるという、徹底した体制で
作り上げた究極の「再現メニュー」。
これらの依頼を受けた時には数百万円から
1億円相当にいたる高額報酬を提示するが、
それは依頼者の本気度を試す
ためであって、最後に半次郎が
受け取るのは、必要経費を除き、
次のギャンブルの軍資金とするための
数万円程度である。
また、半次郎が出張料理人となった
きっかけは、任侠映画の消えもの回で
明らかになる。
とある料理イベントで師匠・冨岡丈三郎の
料理に対する姿勢を批判したため、
所属していた大日本料理協会での
地位もろとも破門宣告を受けてしまう。
その結果、当時もっていた店への客足が
途絶え、業者取引も停止されてしまった。
途方に暮れた半次郎を救ったのがとある
地方の実業家で、その腕があるなら
出張料理人として勝負してみたらどうか、
と助言、出張料理人としての初仕事を
依頼したのだ。
その時払われた報酬が高額であったため、
流れの料理人として生きる決意をする。
ここから調理器具をつめたリュック
一つをしょって、好きなギャンブルを
しながら全国を旅する半次郎の
生活が始まったのだ。
ばくめし!の読んでみた感想・評価
何らかの問題を料理で解決するという
定番の料理コミックであるが、その
方法がかなり大胆である。
事前に高額報酬を条件として
いなければ成立しない、といえば
それまでだが、ただ、その精神は
評価すべきであろう。
劇中でよく半次郎が口にすることは、
食べること・食べることを生業と
する人にとっては至極当たり前の
ことであるが、それなのに意外と
守られていないということを、暗に
作者・土山しげる氏は
言いたいのかもしれない。
具材当て勝負で外れたおにぎりを
地面に叩きつけたチンピラに蹴りを
食らわせ、「食べ物を粗末にする
やつには運は回ってこない」とのたまう。
また、昨今のB級グルメブームについても
「料理にA級もB級もねえ、
食すものが満足する。
それが最高の料理」
と苦言を呈する。
絶えず「食物=素材」に感謝し、それを
食べる人が幸せに思えるように調理する、
そんな当たり前のことをやっている、
というわけである。
そして、ただ食べて美味かっただけでなく、
何かしらかが心に残るような仕事を
するのが、この半次郎である。
戦国出陣膳では、依頼人に甲冑や
着物を身につけてもらい、さながら
戦いに赴く武将の心意気を
味わってもらったり、再会の
居酒屋メニューでは、当時の居酒屋店舗を
プレハブで再現してしまうなど、破天荒にも
ほどがある、といわんばかりであるが、
それはコミック、そんなことに目くじらを
立てるよりも、心意気こそが大事だという
メッセージと感じてもらいたい。
結局、グルメといっても単純なのである。
食べて幸せになる、それだけのことだが、
それゆえ奥が深いのである。
ばくめし!はこんな方におすすめな作品!必見
土田しげるグルメコミックシリーズの
ファンは、シリーズの一つとして
是非読んでもらいたい。
同氏の描くものでいうと、「食キング」
シリーズがこれに近いかもしれないが、
今作ほどは「やさしく」はない。
土田氏の描くキャラの中では
半次郎はやさしい方だと思う。
「食キング」シリーズの舞台自体が、
「傾いた、もしくはつぶれた店」の
再建なので、対するキャラ達も
極貧だったり、へんなところで
勘違いしている、といった感じだったが、
今作で半次郎に対するキャラは、
はた目からみたら普通
以上の生活をしている。
そんな人たちでもやはり食については
悩んでいるのである。
食を通じて問題を解決する、という
グルメコミックの王道の流れは
ここにも生きているので、
その点はチェックポイントである。
「食キング」の北方歳三と今作の
半次郎を比べて読んでみるのは、
土田ファンなら当然だが、その他の
グルメコミックファンでもぜひ
試してもらいたいと思う。
連載の都合なのか、全6巻と
比較的短めなので、手軽に読める
グルメコミックを探している人にも
お勧めである。