タイトル | 胡蝶伝説 |
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原作・漫画 | 池田ユキオ |
出版社 | 集英社 |
商店街で家業を手伝い、
さらには夜のお店でも働く、
中垣涼子。
しかし、急死した父の借金を返済し、
店を守り抜くべく、涼子は、
歌舞伎町で働き始めるが……。
「ホステスもの」の王道かつ定番の
展開を示しながらも、
働く動機や実像にリアルが見える、
骨太のナイト・ストーリーです。
胡蝶伝説のあらすじ紹介
家業のクリーニング店を手伝い、
スナックの接客もしている、
中垣涼子。
商店街の皆から愛され、
つつましくも頑張る毎日ですが、
父親が急に亡くなったことで、
多額の借金を背負う羽目に
陥ってしまいます。
店を売って自由になるという
選択肢もありましたが、
涼子は店を守るべく、
母が縁があったという
歌舞伎町でホステスとして
働くことを決意しました。
しかし、入ってみたその店は、
完全にひどくなっていて、
涼子はひどいいじめを受けますが、
実力で這い上がり、
今や支配者となった母を超えるべく、
頑張っていくことを決意します。
胡蝶伝説のネタバレと今後の展開は?
この夏で二十五歳になる、
中垣涼子。
商店街の皆に支えられ、
家業のクリーニング店を手伝い、
入院中の父親を支えています。
もっとも、店の景気も悪く、
クリーニングだけでは
暮らし向きが難しいので、
夜は近くのお店で
ホステスをやっていました。
お客さんは気心の知れた
商店街のオヤジさんたち、
ママとの仲もとても良好と、
良い意味で肩の凝らない店に
ある日、見慣れない若い男が
入ってきました。
怪しげな雰囲気を持つ彼は、
歌舞伎町の女王の娘が
こんなところにいていいのかと、
涼子の「過去」に言及し、
店をたたき出されてしまいます。
涼子としても、この商店街で、
クリーニング屋の娘として
やっていく決心がありましたが、
店に戻ってみると、
父親が帰ってきていました。
彼は、病院に戻れという
娘の意見を無視して、
自由に生きろとアドバイスし、
直後、世を去ることになります。
一人になり、店を継ぐ義務も
なくなった涼子ですが
しかし自由とはいきませんでした。
何故なら父親が七百万円もの
借金を作っており、返済を迫る
追っ手がやって来たからです。
取立て人たちは、様々な条件を付け、
涼子を追及していきますが、
そこに現れたのが先日、
涼子が接客していた店に来た、
妙な男でした。
彼は歌舞伎町に涼子を誘い、
涼子もまた借金などもあり
歌舞伎町の店に赴きますが、
そこはたった一人の
ナンバーワンに支配された、
完全に「腐っている」店でした。
涼子は持ち前の負けず嫌いを発揮し、
逃げ帰らず仕事を続けますが、
店にはある秘密があったのでした。
胡蝶伝説の読んでみた感想・評価
素直に応援できる背景と元気さ、
そして必死な雰囲気もある、
良い成功物語ですね。
ある意味「身一つ」から、
「帝王」にさえ成り上がれる
「ホスト」や「ホステス」は、
展開が熱くハードになることもあり、
非常に定番のジャンルの一つで
名作も多く存在しています。
そうした作品は大長編も多く、
また主人公は学歴も職歴もない
「何者とも言えない」若者なのが、
定番だったりもしますが、本作は、
ずっと家業を手伝い、「夜の店」でも
働いてきた涼子が主人公です。
歌舞伎町まで来て働く理由も
負けられない動機も強力で、
素直に応援したくなるというか、
彼女ならやってくれるだろうという
熱い期待感が持てます。
実際に、わずかな情報からでも
相手の弱点を割り出して、それを
利用しつくすしたたかさや、
ひどい目に遭わされても決して
笑顔を忘れることがない強さには、
豊富な人生経験を感じました。
えげつない店でいびられるという
多くの作品と共通の経験の中でも、
長々と打ちひしがれたりせずに、
すぐさま前を向いて歩くので、
あざとさや嫌らしさを
感じたりすることはありません。
さらに言うなら、涼子を激しく
いびってくる店も評価は「最悪」で、
やはり新人をいじめ倒す職場では、
周りからも評価されづらいという
納得できる価値観を
通していたのも良かったですね。
胡蝶伝説はこんな方におすすめな作品!必見
無名の女性が一旗上げるために、
歓楽街でホステスになるというのは、
非常に王道かつ定番の物語です。
苦労や努力がダイレクトに見える構図で、
しかも学歴や職歴が問われない、
一発逆転のチャンスがある場だからこそ、
その成り上がり物語には
人が熱くなるだけの充実感と
説得力があるのだと思います。
本作の涼子は二十五歳、それも
家業のクリーニング店と、
地元のスナックで働いており、
この種の作品のスタートとしては
やや遅いイメージがありますが、
仕事に入る年齢としてはリアルです。
また、気さくで奔放で、間違いなく
いいオヤジでもあった父親が、
実は借金まみれであり、
娘が苦労してしまうという状況も
嫌な話ではありますが
非常に良くある話です。
「夜のお店の闇」を描く感じの
作品は非常に多いのですが、
本作は下敷きにリアルを、
非常にうまく盛り込んでおり、
だからこそ涼子の「動機」と
頑張りへの共感が際立ちます。
非現実的にならないラインで
しっかりと華々しい成功物語を
読み進めたい方には最適でしょう。
また、普段の表情と「店」での
雰囲気がまったく違っていたりと
描き分けが繊細なのも魅力です。