タイトル | パパーズ!~夫は二人もいりません~ |
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原作・漫画 | まつもと史子 |
出版社 | 小学館 |
おにぎり屋を営むののかは
偶然、元彼と幼馴染と再会。
しかしこの二人は、ののかの娘の
父親である可能性があり、
しかも「候補」として、
奇妙な同居生活を始めることに。
多くの場合重くなってしまう要素を、
スカッと痛快に解決する力強さと、
真っ直ぐさが実に爽やかな、
異色かつ快活な作風が楽しい、
ドタバタホームコメディです。
パパーズ!~夫は二人もいりません~のあらすじ紹介
祖母とおにぎり屋さんを
切り盛りする働き者、ののか。
彼女には愛する娘りりかがいますが、
実はりりかの父親が誰なのか、
正確なところは分かっていません。
しかしそんな中、祖母の腰が原因で
向かった病院の中で、ののかは
元彼の建造と幼馴染の森也という、
「親しかった」二人と
まさかの再会を遂げます。
建造たちは、ののかに娘がおり、
誕生日からして自分の子かもと、
本気で思い詰め店に押しかけますが、
そんな彼らに対して祖母ひばりは、
ひとまず父親候補として家に同居を
することを提案するのでした。
パパーズ!~夫は二人もいりません~のネタバレと今後の展開は?
三十三歳の里中ののかは、
創業三十年になるおむすび屋さん、
「のの屋」を切り盛りする働き者。
夫はおらず一人娘のりりかには、
何かと不自由させることもあるものの、
お店や繁盛、家族の仲も良く、
充実した毎日を過ごしていました。
しかしそんなある日、祖母のひばりが
腰を痛めて病院に担ぎ込まれる事態に。
幸い腰の方は大したこともなく、
すぐに帰れることになったのですが、
ののかは患者でひしめく病院のロビーで、
ナンパをしている男性を発見します。
しかもそのナンパ男性は、ののかの
元彼である建造だったのです。
見知った顔があり、テンション高く
建造が話しかけ出したところで、
病院にいた医師までがののかに、
幼馴染の森也だと、話を
し始めてきたのでした。
いきなり元彼と幼馴染と同時に
期せずして再会することになり、
バツが悪い感じのののかですが、
建造と森也は挨拶してくれた、
ののかの娘、りりかの言葉から、
一つの思いを持つことになりました。
それは、
「りりかは自分の娘では?」という
根拠ある疑念でした。
何故ならその時期ののかと建造は、
普通に男女交際をしており、
一方幼馴染の森也にしても、
同時期に、たった一夜ながら、
ののかと関係を持ったことが
経験としてあったからです。
二人は、りりかの可愛さに
魅了されたことも手伝って、
いきなりお店に押しかけて、
父親だから責任を取ると
言い始めますが、ののかは
ひとまず彼らを下がらせます。
しかし本当の父親は誰かという
話は当人にとって重いもので、
ののかとりりかの間には、
この話を機に溝が
できてしまうのでした。
パパーズ!~夫は二人もいりません~の読んでみた感想・評価
ドラマや漫画ではお馴染みの
ドロドロ展開があるのかと
ヒヤヒヤしましたが、
そうしたことはまったくなく、
明るく楽しく強い物語を
堪能できましたね。
娘の「本当の父親」が実は
誰なのか母親にもイマイチ
分からない部分がある。
そんな「出生の秘密」と
それを発端にした騒動が
メインテーマとなる本作、
私もかなりハードな展開を
想像してしまっていました。
しかし、本作では、
柔軟で肝っ玉が太い、
ひばりちゃんの提案もあり、
「父親候補」は「候補」のまま、
奇妙な同居生活が始まり、
そして続いていくわけですね。
実際りりかちゃんは真っ直ぐで
ケンケンやモリモリも心根の
真っ直ぐな青年たちであるので、
多くの「出生もの」に見られる
胃にくるようなドロドロはなし、
実に安心して読み進められました。
それと言うのも本作の
メインキャラたちが皆、気質が良く、
人を陥れたりといったような、
嫌な部分とは無縁の性格であり、
だからこそ絶妙なところで
バランスが取れているんですね。
「仲良きことは美しきかな」と
有名なことわざでも言われていますが、
実際彼らがドタバタと過ごす風景は、
実に安心ができるだけでなく、
読み手に今後へのやる気をも
もたらすような力がありました。
「リアル」な家庭不和を描いた
力作は多いのですが、
本作のように変わってはいるが、
でも面白く楽しい家庭を
正面から描いた作品は少なく、
その意味でも非常に有意義でした。
パパーズ!~夫は二人もいりません~はこんな方におすすめな作品!必見
愛するべき子供に対して、
「本当は誰の子なのか」と疑問が示される、
シリアス系ドラマでは定番の展開ですが、
実際に起こってしまうと、様々な面から
平穏な家庭が崩れかねない、
恐るべき状況だとも言えます。
まず当人間に関して言えば、
「裏切り」を内包しているかも知れず、
子供や他の関係者にとっても、
受け止めるのは難しい部分もあるため、
かなり深刻な問題という形にも
なりかねない要素と言えます。
しかし本作のののかは、すでに独身で、
しかも「父親候補」であるところの
ケンケンもモリモリも、
タイプは違えど実に気持ちいい人で、
夫婦云々抜きでもいい関係を
築けるタイプだったりします。
「出生の秘密」などの深刻な話を
ドロドロには持っていかずに
サクっと笑い飛ばせるような、
パワーとバイタリティがある、
ホームコメディが読みたいなら
本作は最良の選択でしょう。
また、多くの場合お堅かったりする
祖母のひばりちゃんも柔軟ですし、
一人娘のりりかちゃんも可愛らしく、
悪い人、嫌な人が出てこないため、
良い意味での安心感が満喫でき、
グイグイ読み進めてしまいます。
作品全体がスカっと明るいので
裏に何かありそうな嫌味さとは
完全に無縁なのもいいですね。