タイトル | へうげもの |
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原作・漫画 | 山田芳裕 |
出版社 | 講談社 |
後に『日本のレオナルド・ダ・ヴィンチ』
とまで呼ばれる日本美術の重鎮・古田織部。
その半生を主軸にしつつ
『数寄』の視点から戦国時代を切り取る。
古さと新しさが
同居した歴史大河ドラマ。
生か死か、武か数寄か、
それが問題だ!
へうげものあらすじ紹介
後に古田織部として美術史に名を残す、
織田家直参の使い番・古田佐介。
わずか200石の俸禄を食みながらも
武による立身出世を目指す佐介。
50人の兵を用意するのにさえ
難儀する立場である。
京都まで駒を進めた信長の天下布武は
完遂まで間近。
すなわち肝心の戦がなければ
立てる功績もない。
戦に出れば風景に目が行き、
敵将と交渉すれば茶器に夢中で
話も耳に入らない始末。
そんな佐介を面白いと
評価した人物がいた。
千宗易、後に茶道の神となる
千利休その人である。
旧態を破壊し、情趣の赴くままに
新たな世界を茶室に描き出す
数寄の怪物・千利休。
利休はまた、肥大化した欲のままに
世界を自分の色へ塗り替えようとする
『業』の火に飲まれた者でもあった。
『業』のままに天下を破壊する
千利休と羽柴秀吉。
2人の怪物の狭間に置かれ、
翻弄される佐介。
やがて歴史は『本能寺の変』を迎える。
へうげものネタバレ・今後の展開
使い番として外交交渉も担当する佐介は、
歴史に残る大物たちから様々な
訓示を受けることになります。
信長を裏切り爆死した松永久秀からは、
頂点を目指して死ぬか、
諦めて生きのびるかの選択を迫られます。
部下を見殺しにし、1人名物を抱えて
逃走する荒木村重からは数寄者の業を
見せつけられます。
羽柴秀吉には頂点を目指す者の
『非情』という努力。
そしてそれを達成してしまった者の
孤独を見せられます。
そして千利休には常人では及ぶべくもない、
果てのない創意と業の
怪物ぶりで圧倒されます。
本能寺の変は、野心の獣となった秀吉と、
数寄の化け物となった千利休。
2人の『業』が引き起こしたと知った時、
佐介は優れた茶器を見ても
心が動かない状態になってしまいます。
同時に、それまでの異様な数寄への関心は
信長への憧れだったことを
佐介は自覚するのでした。
一方、親子のように心を
一にしていた秀吉と利休、
2人の間に亀裂が生じ始めます。
日本全土を茶室に見立て、
「花は一輪あれば良いのです」
と茶道の世界で語り継がれる名言を
口にしながら帝の暗殺を勧める利休。
秀吉という花、帝という花、
両者の並存は利休にとって
「見苦しい」もの。
そのために高貴な者を消し去ることも
利休は平然とやってのけるのです。
あまりに大きくなりすぎた
利休という人間に、秀吉は親しみが消え
恐怖が膨らむのを自覚します。
やがて決定的となった亀裂は、
平穏に生きることを決意した佐介に
転機を突きつけることになるのです。
へうげもの読んでみた感想・評価
「ちょっちゅね」が口癖の加藤清正!
「倍率ドン!さらに倍!」
を連発する大久保長安!
何の前触れもなく出現して
一瞬で消える、はら○いら!
そして主人公・古田織部の
顔芸!顔芸!顔芸!
これはギャグですか?
いいえ歴史ドラマであり、哲学なのです。
序盤に徹底して描かれる
古田佐介の小物ぶり。
知ったかぶって見栄を張り、
秀吉に与えられた名物をネコババ。
呆れる利休の顔に
「宗匠がそれがしに嫉妬している!」
と斜め上の勘違いをしまくります。
時には痛々しいまでのダメっぷり。
しかし後に古田織部のテーマとなる、
本作品のタイトルでもある
『へうげもの』につながっているのです。
また佐介が顔芸を連発しているおかげで、
利休や光秀、秀吉といった
シリアスパート担当の男たちが映える、
という効果もあります。
同時に重苦しくなった緊迫感を
佐介の顔芸が救ってくれてもいるのです。
佐介の様子はまさに現代のサラリーマン。
それも出世街道を邁進するエリートではなく、
何をしても評価されない平社員そのもの。
荒木村重から茶器をもらって
見逃してしまったりするシーンなどは
飲み代を経費で落としているような印象です。
しかし、だからこそ、だからこそ!
この古田佐介は、古田織部は
どうしようもなく格好いいのです。
英雄として生まれたわけではない。
偉人として育ったわけではない。
情けないおっさんが
時代の波に翻弄されながらも
懸命に生き抜くストーリーなのですから。
そしてご安心ください!
やがて佐介は古田織部となり、
日本の茶事を取り仕切る
地位にまで昇りつめます。
古田佐介の笑いも
涙も金も血も出る立身出世・・・
ぜひ皆さんも経験しましょう!
歴史大河ドラマが好きな方は必見!
くすっ、と笑える佐介の情けない姿や顔芸が、
やがて『一笑』という後に大きなテーマとして
新たな美へと昇華していく様は必見です。
何をしても上手くいかないという方、
職場で嫌なことがあった方。
理想の自分とはかけ離れた
生活に悶々とすごしている方、
アナタたちの『今』は
決してムダではないことを
『へうげもの』はきっと示してくれます。
佐介の勘違いや取り乱しぶりが後に『乙』という、
現代まで続く日本の美意識と化した
瞬間を目にした時。
アナタのつらく苦しい今は未曾有の
芸術品を作る工程であると実感できるはずです。
もちろん歴史が好きな方にも
絶対にオススメです!
古田織部は大軍勢を率いて戦場を
縦横無尽に駆け回るタイプの
武将ではありません。
むしろ大名で単身会見に赴き、
蹴り飛ばされるという武将です。
そして本作品の最大の特徴・千利休を
はじめとする数寄者たちが
戦国時代を動かしているという、
歴史的にも確かにあった側面。
この前代未聞の切り口から
戦国時代を見る作品が
面白くないわけがない!
もちろん伊達政宗や石田三成といった、
戦国時代ものでは
おなじみの人たちも大集合しますよ!
ぜひこれを機に新たな戦国時代を
体感してみませんか?
絶対に損はしませんよ!