タイトル | 花井沢町公民館便り |
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原作・漫画 | ヤマシタトモコ |
出版社 | 講談社 |
ある日、突然の事故により
生命体を通さない特殊なフィルターで
覆われてしまった花井沢町。
生きている限りは二度と
町の外に出られなくなってしまった
住民たちと、
徐々に荒廃していく町を
オムニバス形式で描いた作品です。
花井沢町公民館便りのあらすじ紹介
どこにでもある普通の小さな町
だったはずの花井沢町。
刑務所で使用するために開発されていた、
生命体を通さない特殊なフィルターの
輸送途中に事故が起こり、
花井沢町がフィルターに
すっぽり覆われてしまいました。
これから先は生きている限り
誰も町の外に出ることはできないし、
誰も入れない。
町の中で生まれた子供は、
外の世界を一度も見ることなく
死んでゆく。
突然世界から隔離されてしまった
町の中で生きる人々が
繊細に描かれています。
花井沢町公民館便りのネタバレと今後の展開は?
とある事故で外の世界から
隔離されたことによる人口減少で
200年後には滅びることが約束された
花井沢町。
無償で食料が配給されるうえに
賠償金も貰えるため
生きていくことはできるが、
徐々に人口が減り、建物が老朽化し、
町が機能を失い、
ゆっくりと終わりに向かってゆく。
事故の前を知る「前世代」と
事故後に生まれ
外の世界を見たことがない「後世代」
そして花井沢町にたった1人
取り残された最後の住人。
それぞれの思いや生き方が
伝わってくるようなエピソードが
語られています。
年下の少年にストーカーをする女性と
その女性を殺してしまう少年の母の話、
花井沢の住人であることを隠して
SNSで人気者になったものの
バレてしまった青年の話、
焼きたてのパンを食べてみたいという
思いからパン屋を始める女性の話など
様々。
花井沢町最後の住人になってしまった
女性が1話目で描かれているなど
時系列はバラバラですが、
扉絵には必ず花井沢町の公民館が
描かれており、公民館の廃れ具合を見て
事故からのおおよその経過年数を
推察することができます。
花井沢町公民館便りの読んでみた感想・評価
タイトルと表紙を見る限り、
のんびりした日常系の漫画だろうと思い
なかなか手に取る機会がなかったのですが、
作者の他作品が大変面白かったため、
こちらも購入してみました。
表紙のイメージとは違って
内容は重苦しいSF漫画であることに、
まずは衝撃を受けました。
フィルターの壁は透明で
電気も水も空気も通せるうえに、
中と外で会話だってできる。
見た目は中も外も変わらないのに、
死なない限りは絶対に
通りぬけることができない。
なんて残酷なことを考える
作者なんだろう、と考えてしまいます。
楽しい話や怖い話、悲しい話など
町の中の様々な出来事が
オムニバス形式で描かれていますが、
全てのストーリーの根底には
町から出られないことに対する
あきらめや閉塞感、
逃げ場のない息苦しさが感じ取れます。
自分たちの町が滅びていくのに、
透明な壁を隔てた外の世界は
何も変わらず存在し続ける。
その理不尽すぎる状況を
ただ受け入れて生きようとする彼らを
見ているだけで、
どうしようもなく苦しい気持ちに
させられ、いつまでも心に残る作品です。
花井沢町公民館便りはこんな方におすすめな作品!必見
全ての人に読んで欲しいと思える
作品ですが、特に今の毎日が単調で
つまらないと感じている人に
おすすめします。
私たちが普段当たり前に
できていることは、
花井沢町の住人にとっては特別なことです。
例えば家族や恋人と
自由に触れ合えることや、
行きたいところに行けること、
病気になったら病院に行けること、
そして焼きたてのパンを食べることすら、
花井沢町の人間にとっては
壁の外の世界の話なのです。
この作品を読めば、
つまらないと思っていた毎日が
特別なものに感じられて、
大切な人に会いたくなったり
遠くに出かけたり、とにかく
外に出たい衝動に駆られるはずです。
重いテーマの作品ではありますが、
淡々とストーリーが描かれているためか、
読んだ後に号泣したり激怒したり、
感動で胸がいっぱいになるようなことは
ほとんどないと思います。
しかし、読み終えた後の余韻が
いつまでも残り、この町のことを
覚えておかなければならないような
気持ちになる作品です。