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ネメシスの杖のネタバレと感想です!結末ってどうなる?

ネメシスの杖

この記事は約 6 分で読めます。
タイトル ネメシスの杖
原作・漫画 朱戸アオ
出版社 講談社

シャーガス病、
それは中南米地域由来の感染症。

治療法も確立されておらず、
日本での認知度は皆無に等しかった。

その内部告発状が届くまでは。

とある病院で行われているという
シャーガス病の隠蔽工作。

調査に向かった阿里の前に
立ちはだかるのは
政官財学の日本の権力構造。

そして、事態は最悪の方向へ
突き進んでいく……。

明日起こり得るかもしれない
感染症の恐怖と日本の医療行政の
闇を描く、朱戸アオの代表作!

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ネメシスの杖のあらすじ紹介

厚生労働省患者安全委員会
(PSC)調査室。

そこは医療機関における事故を
調査・原因究明を行う行政機関である。

日夜医療事故調査に奔走する
調査官・阿里 玲は、
ある日一通の内部告発状を受け取る。

とある病院で、「シャーガス病」
罹患患者の隠蔽が行われていると
いうのだ。

調査を開始した阿里はその実態を
目の当たりにするが、上層部からの
圧力により調査は暗礁に乗り上げてしまう。

上司からの隠蔽指示に納得できない
阿里は独自に調査を続行。

シャーガス病と思しき症状を発して
亡くなった患者の血液を入手。

寄生虫とバイオテロに関する
専門家である紐倉のもとに持ち込んだ。

虫しか愛せない変わり者だったが、
その知識・経験はトップレベルだった。

血液中からシャーガス病の原因寄生虫
「トリパノソーマ」が発見されたことから、
罹患は決定的になった。

さらに、亡くなった患者・桶矢 登が
16年前、トリパノソーマに絡んだ

食害事件を起こした
桶矢食品社長であったことが発覚する。

16年前、同社が製造し
大手飲料メーカーヒノワボトリングが
販売した「チチクチジュース」が原因で

発生した食害事件。

被害者だった少女は病を苦に
自ら命を絶ったが、厚労省とヒノワは
結託して責任を回避。

事件はうやむやに
されていたのだった。

同じころ、都内の一角に
シャーガス病に恐怖する
女性が現れて……。

16年前の事件と現在を
結ぶ線を追う阿里と紐倉。

そんな2人の行動を先読みするかの
ように、事態は悪化の一途をたどる。

権力の介入、遅遅として進まない
決定プロセス、事なかれ主義……

それらを乗り越えて
たどり着いた先にあったものとは……。

ネメシスの杖のネタバレと今後の展開は?

Y大学助教授だった宗森秀一が
発表したアレルギーに関する論文が
すべての始まりだった。

南米産のチチクチの実に
アレルギー症状緩和の効果があるとする
内容だったが、実証データに乏しく、

マウス実験すら行われていないような
ずさんなものだった。

しかし、大手飲料メーカー・
ヒノワボトリングはこの実を使った
ジュースを販売する。

宗森への資金援助に加え
厚生官僚の買収を行い、

チチクチジュースのトクホ認定にまで
こぎつける。

自社が提供する番組で
大々的に宣伝を行った結果
大ヒット商品となるが、

思わぬところに落とし穴があった。

製造を担当していた桶矢食品の
生産管理体制が
増産に耐えられるものではなく、

原料の洗浄・殺菌が不十分なまま
製造されたジュースが出回ってしまい、

そのなかにシャーガス病の原因である
トリパノソーマが紛れ込んでしまった。

幼いころからアトピーで悩んでいた
少女・江里口慈帆は、

藁にも縋る思いで飲用した
チチクチジュースが原因で
シャーガス病に罹患してしまい、

最終的にそれを苦に
自らの命を絶つことになった。

実は原産地であるブラジルの
保健当局からチチクチジュースが

トリパノソーマに汚染されている
危険性があるとの警告が
なされていたのだが、当時、

厚労省食品安全委員会担当課長補佐で
あった倉井雄一は、この事実をもみ消す。

全ての責任を桶矢食品に押し付け、
事件をうやむやにしてしまった。

その背景として厚労省幹部の天下り先を
ヒノワが提供していたこともあった。

倉井は今では医療関係を所管する
医政局局長にのぼりつめ、

すべての事態をコントロールできる
立場になっている。

このヒノワ・厚労省の癒着体質のために
真相は闇の中へ。

そして、そのことが愛すべき家族を失った
一人の男に復讐を決意させることになる。

その男こそ、江里口慈帆の
父親・江里口 新だった。

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ネメシスの杖の読んでみた感想・評価

医療系サスペンスとしては
一級の出来だと思う。

が、これほどのものなのに
映像化がなされていないのが
非常に残念である。

一人の少女が短い遺書をしたためて
命を絶つシーンからはじまり、
徐々に闇の部分が拡大していく。

様々な人間関係や社会構造、
官僚機構が絡み合い、
主人公たちの行く手を阻む。

そして核心となる真実が見え始めた時、
物語は単なるいち事件から、

社会全体を破壊しかねない
非常事態へと発展していく……。

この一連の流れは、映画化などしたときに
は王道の展開であると思うし、

内容的にも考えさせるところが多くそ
れなりの制作スタッフがそろえば、

人々の記憶に残るものになると
私は思うのだが。

この作品が講談社・アフタヌーン誌で
連載を開始したのが、2013年5月。

この時点において日本では
この病気の認知度は
限りなくゼロに近かった。

しかし、この作品が連載を終えた
直後の8月、厚生労働省は

国内初のシャーガス病抗体陽性の
事例が確認されたことを発表した。

偶然とはいえ、
このタイミングと先見性には鳥肌がたつ。

作者のブログにも記載されているが、
この直後、日本における
シャーガス病研究の第一人者

三浦左千夫慶応大学助教授から
直接連絡をもらい
話を聞いてきたそうなので、

興味のある人はこちらも検索すれば
すぐ出てくるので
閲覧してみるのもいいと思う。

ネメシスの杖はこんな方におすすめな作品!必見

この作品もそうだが、
朱戸アオ氏の作品は、
医療系のものが多い。

ブログで本人が語るところでは、
そんなに医療系が得意というわけでも
ないそうだが、

発表する作品に占める割合は
ほとんどがこの系統である。

未知の感染症に直面した人類が
いかにその謎に立ち向かっていくか、
それを描き続けている。

医療系サスペンス(特にパンデミック系)
では、外薗昌也「エマージング」などが
知られているが、

それらを読んだ人なら
比較的すんなりと入り込めると思う。

また、今作品は最終的には
「バイオテロ」という形に事態が進行し、

それに対し後手にまわりがちな
行政機関の姿も描いているが、

その点などは近年大ヒットした映画
「シンゴジラ」に通じるところも
あると思う。

「エマージング」にしても
「シンゴジラ」にしても、

想定外の事態が起きることが
わかっていながら動けないもどかしさ、

それに対して行政機関は
いかに動くべきか、
ということも描いているが、

「ネメシスの杖」においても
描いていること、そして作者が訴えたい
ことはつながっていると思う。

その意味で、日本の官僚機構や行政、
危機管理などを深く考えたいとき、

考えるヒントとしてこの作品は
おすすめといえる。

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