タイトル | スーパーレディ |
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原作・漫画 | 柳沢きみお |
出版社 | 秋田書店 |
ルックスも性格も完璧なスーパーレディ、
五条美々子はまさに皆の憧れ。
そんな彼女を射止めたのは
スーパーマン社員源氏だった。
しかし美々子が本当に好きなのは
冴えない中年課長、品川だった……。
両思いなだけでは幸せにはなれない、
家庭生活の現実と、それでも抑えがたい
恋愛のリアルが生々しく描写された、
異色のオフィスラブストーリーです。
スーパーレディのあらすじ紹介
ルックスも能力も性格も完璧な
五条美々子に、社内の若い男性社員は
皆憧れを抱いていました。
しかし、何百人から告白されても
首を縦に振らなかった美々子は、
彼女と同様のスーパーマン、
源氏からのプロポーズを
受け入れることに。
内心では美々子が好きだった品川課長は
その知らせにショックを受けますが、
しかし美々子から本当に好きなのは
品川課長だと知らされてしまいます。
理想の相手からの告白とは言え、
妻も子もある品川には受け入れがたい
話でしたが、
どうしても思いを断ち切れない二人は、
互いの気持ちを抑えられなく
なるかのように、
密会を重ねていくのでした。
スーパーレディのネタバレと今後の展開は?
一部上場企業である山内興産の
秘書課に勤める五条美々子は、
スーパーレディでした。
学歴は超一流で外国語にも堪能、
家事から趣味に至るまで万能で、
しかも容姿もスタイルも完璧で
性格も素晴らしいという、
まったく非の打ち所がない女性でしたが、
当の美々子も会社側も苦慮していました。
と言いますのも、美々子が
素晴らし過ぎるので、男性社員は
皆彼女に惚れてしまい、
美々子に告白するも断られるために傷つき、
精神的にダメージを負ってしまうのです。
入社以来七年で自殺者六名、
自殺未遂から退社まで深刻な
ダメージを受けた人を合わせると
二百人を超えるという状況でした。
そこで品川課長はやむを得ず、
彼女に美人に見えなくなるような
工夫をと提案しますが、
そんな嫌な話にも笑って応じるほど
美々子は出来た女性でした。
「変身」した美々子の姿に品川は
痛々しさを感じ、元の姿に戻るように
言いつけますが、そんな中、
新たな人事課長として
源氏ひかるという男が就任してきました。
まだ三十一歳の若者でルックスも知性も
運動神経も抜群の彼は、
スーパーレディに釣り合う
スーパーマンであり、実際、
ほどなくして源氏が美々子に
プロポーズしたという話まで
入ってきました。
そして半年後、美々子が源氏の
プロポーズを受け入れたことで、
実は美々子に恋していた
品川は傷つきますが、
美々子もまた品川を好きになって
くれていたことを知ります。
源氏との婚約は思いを吹っ切るためだと
知らされた品川ですが、
どうすることもできず
時間だけが過ぎていきます。
しかし、ある日自分の机の引き出しに
「料亭で待っています」との美々子からの
手紙が入っているのを
見つけてしまうのでした。
スーパーレディの読んでみた感想・評価
パリッとした隙のない女性を描いているかと
思いきや、温和で優しい女性だったので、
とても共感することができました。
本作のポイントは何と言っても
主人公の五条さんです。
有名大学を卒業し外国語も堪能、
ルックススタイルともに非の打ち所がなく、
しかも性格も素晴らしいという、
人を傷つけないタイプの
スーパーレディなのですが、
しかしそれ故に人気が出過ぎてしまい、
相手からの告白を断ったというだけで
精神的なダメージを男性側が負ってしまい
会社に混乱が生じるというほどの
凄い魅力の持ち主です。
しかし本人はそれを鼻にかけることはなく、
むしろ心苦しく思っており、
課長さんからの言葉を受けて平気で
髪を切ってくるなど涙ぐましい努力を
するタイプなので、
読んでいてもまったく
イヤミを感じませんでした。
その彼女が温和で冴えない
課長のことがたまらなく好きであり、
もちろん課長としても嬉しいわけですが、
すぐに行動に移れないところに
もどかしさとリアリティがありましたね。
実際、どんなに魅力的な女性が
相手でも、簡単に家庭を捨てられる人は
少なく、しかし家庭がどんなに円満でも、
すぐそばの素晴らしい女性を
忘れることなどできないんですね。
そうした当然の感情を下敷きにした
葛藤があるわけですから、
課長さんにもグイっと感情移入を
してしまいましたし、コメディ的な導入にも
関わらず胸が切なくなってしまいました。
また、「決心」をした後も彼女の肉体的な
「トラブル」だったり、周囲からの
監視があったりと、
甘い一夜を過ごすことすら難しい
部分にもまたリアルさがあり、
ハラハラドキドキを
味わうこともできました。
主人公の課長さんが格好良くないなど、
定番とはやや離れていますが、
オフィスラブものとして
一流の作品だと思いましたね。
スーパーレディはこんな方におすすめな作品!必見
自分よりもずっと「格上」の相手、
とりわけ女性に関しては
「高嶺の花」だと賞賛するとともに、
多くの人は諦めの感情を
抱いてしまうものです。
しかし、そうした女性の側が
どんな印象を抱くかは本人でなければ
分からないことであり、
「美女と野獣」にも例えられるような
恋愛話が各地で語られることも
また少なくはありません。
しかし、もし仮に素晴らしい女性が
自分に好意を抱いても果たしてそれが
「幸せ」なのかどうかはまだ分かりません。
男性の側にも家庭や立場があり、
熱情で関係を結んだことですべてが
台無しになりかねないからです。
本作で描かれているのは
そんな恋愛の「難しさ」であり、
互いに好きであるにも関わらず、
立場故に難しい状態に置かれています。
現実の厳しさと、しかしそれでも
抑え切れない感情の強さを
満喫したいのならば
本作はオススメと言えますし、
最近の創作上の一部の
「有能な女性」とはまた違い、
控えめで人の気持ちを思いやれる
五条さんの素晴らしさを
堪能できる作品とも言えます。
冴えない風貌の平凡な課長が
騒動の中心になっていくように、
誰が「主役」になるか分からない
現実の面白さもきちんと
描かれているのもいいですね。