タイトル | 少年は荒野をめざす |
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原作・漫画 | 吉野朔美 |
出版社 | 集英社 |
1985年から2年間、
雑誌「ぶ~け」で連載された作品。
幼少の頃に兄を失い、
大事な何かが
欠けてしまったまま
生きて行かなくては
ならなくなった少女・狩野都の
中学生から高校生の間の
物語が作者の繊細な絵と感性で
描かれています。
少年は荒野をめざすのあらすじ紹介
狩野都は幼い頃、
病弱な兄の為に
自分自身が
兄の体になったつもりで
過ごしていた。
けれどその兄が亡くなり、
一から人生を
やり直さなければならなくなる。
何かが欠けたまま成長した狩野は
それでも気の合う友人たちと
共に毎日を楽しく過ごしていた。
ある日彼女は
黄味島陸という少年に出会う。
黄味島は狩野によく似ていた。
狩野にとって黄味島は、
失われてしまった
「理想の自分」の姿だった。
黄味島の存在、
受験や新しい人間関係、
自分自身の体の成長を
目の当たりにさせられる狩野は、
現実と向き合い、
成長していく。
少年は荒野をめざすのネタバレと今後の展開は?
見た目も雰囲気も
よく似ていると
周囲から言われる狩野と黄味島は
どんどん親しくなっていく。
中学の頃から
狩野を慕う友人・管埜、
黄味島のたくさんいる彼女の中でも
最強と言われる鳥子、
黄味島に憧れる狩野のクラスメート、
狩野を気に入り
何かとちょっかいをかけてくる
作家・日夏など、
日々に接する人々から、
狩野は、
狩野にとって黄味島とは何なのかを
考えさせられるようになる。
日夏からは「それは恋ではない」
と言われて混乱する狩野。
そんな中、ある日狩野たちは
黄味島の出生の事情を知る。
黄味島は黄味島の母親が
今の夫と婚約中に
別の男との間に出来た子供だったのだ。
黄味島の父親の存在を
なかったことにして
平和に暮らす家の人々の中で
黄味島は
素直に従って生きて来た。
けれど狩野に出会い、
周囲に染まらず
自由に生きている彼女を見ている内に
自分が抑圧されていたことに
気付いてしまう。
黄味島にとって狩野は
解放された自分の姿だった。
そして狩野にとって黄味島は
こうなりたかった自分だった。
少年は荒野をめざすの読んでみた感想・評価
叩いたら壊れてしまうのじゃないかと
思うような、
ガラス細工のような物語でした。
絵も言葉もとても繊細で美しい。
自分の性を受け入れるという物語は
女性にとってはポピュラーなものに
思えますが、
この物語は
それが必然性があるというか、
主語が女性と言う
大まかなものでなく、
きちんと主人公狩野の問題として
描かれているのがよいです。
物語の流れで言えば、
私は黄味島くんより
管埜くん派だったので
たくさんモヤモヤしました。
海棠ちゃんも素敵な女の子でした。
鳥子さんの強さにも驚いて、
憧れました。
日夏さんは十代の頃に読んでも
なんだこの大人は
と思っていましたが、
自分が大人になって見返すと
さらにやばい奴だと思いますね。
自分が大人になって
分かるというと、
狩野にとって小説を書くということが
狩野が現実を自分の中に
受け入れて消化していく為の
大切な作業だったのかなと
今となっては思います。
当時は狩野のふわふわした
現実逃避の症状の一つと
思っていました。
狩野の書いた少し寂しい小説を
一度読んでみたかったです。
少年は荒野をめざすはこんな方におすすめな作品!必見
思春期、青春期の人に
おすすめだと思います。
これが描かれたのは
80年代ですが、
テーマは普遍的なものだと思います。
子供時代の温かくて居心地のいい
閉じられた世界を出て、
初めてのこれまでとは違った環境、
他者たちと触れ合っていくことを
知る過程があります。
それはけっして
優しいだけのものではないです。
世界から主人公に向けられる拒絶には
例えでもなんでもない刃さえあります。
主人公が逃避してしまう気持ちが
分かります。
もちろん厳しいばかりでなく
救いもあるのですが。
その中でも特に女性にとっては、
子供から女性になっていくという
変化とそれを
受け入れざるを得ないという戸惑いが
共感できるのではないでしょうか。
主人公は世界の拒絶と共に
自分の体と心の変化という現実に
追い詰められていきます。
狩野の混乱がピークに達した時、
同じように現実と自分のギャップに
上手についていけない
自分自身の代わりを
引き受けてもらったような
気分になりました。