タイトル | M式プリンセス |
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原作・漫画 | 酒井美羽 |
出版社 | 白泉社 |
平凡なOLである日野伽奈子は、
実は百万石を誇った名家、
貴弥家の娘だった。
しかし呼ばれては来たものの、
祖父も従僕たちもやたらと
態度がキツく。おまけに、
生活その他の縛りもキツく、
お姫様を目指すのも、
なかなか楽ではなく……。
いわゆるシンデレラストーリーの
王道を進んでいきながらも、
定番展開への「毒」があったり、
予想以上のドタバタも楽しい、
幅広い層にオススメできる、
異色の人生一変型コメディです。
M式プリンセスのあらすじ紹介
冴えないながらも仕事をし、
生計を立てていた若手OL伽奈子は、
祖父の使いを名乗るイケメンの、
突然の来訪を機に、自分の血筋と
家の窮状を知ります。
しかし元は大大名の家のはずが、
呼んできた孫娘にいきなり
「不細工」と罵る祖父や、
注意の枠を超えた毒舌を
フル稼働させるスタッフなど、
当たりは実にキツい感じです。
しかし一度贅沢を極めたような
暮らしを味わっては、元の
アパートでの生活には戻れず、
伽奈子は半ば嫌々ながら、
ドタバタと特訓とイベントの
連続する日々を過ごしていきます。
M式プリンセスのネタバレと今後の展開は?
入社二年目のOL、日野伽奈子。
ちょっと野暮ったく地味な髪型と、
ずっしりとした体型が印象的な
ごく普通の社会人です。
もっとも彼女は、同僚が、
恋に熱を上げる中でも、
折角合コンに誘われたのに、
食べることに全力を投入したり、
部屋がゴミ屋敷状態だったりと、
女子力はかなり低い感じでした。
しかしそんなある日、彼女が
帰宅してみるとそこには、
見知らぬイケメンが苛立ちながら、
部屋のゴミを片しているのを
目撃してしまいます。
そのイケメンは名乗りもせずに、
祖父の使いだと彼女を車に乗せ、
巨大な邸宅へと招待します。
その日常とはかけ離れた世界に、
圧倒される伽奈子でしたが、
顔を合わせた祖父はいきなり、
伽奈子を「不細工」と断じ、
これでは婿が来ないと、
家の将来に絶望してしまいます。
また、伽奈子を連れてきた男前や
家付きの人びとたちも平気で、
陰口を叩いてきたりと、
自分の家も仕事も都合もある中、
はるばるやってきた伽奈子への
敬意などまったく感じぬ対応でした。
しかし、元は百万石の名家も
思い切り傾いてしまっているのは
動かしがたい事実なようで、
戸惑いつつも家にいることを
了解した伽奈子に待っていたのは、
予想外の特訓の日々でした。
M式プリンセスの読んでみた感想・評価
大きな家と優れた執事たちに
囲まれ返信するシンデレラ系の
物語かと思いきや、
かなり容赦のないドタバタや
お約束破りもあり、幅広く
楽しめる要素が詰まっています。
本作で面白いのが、ヒロインの
日野さんのリアルさと、
執事たちの非現実感にあります。
こうしたシンデレラ系の物語は、
本家本物がそうであるように、
飛び切り不幸な設定があるものですが、
本作の日野さんはかなり違います。
ちょっと冴えない雰囲気で
ゴミも捨てられない感じですが、
健康そうに貫禄がついており、
ちゃんと仕事もあるし悠々自適で、
困っているような感じはありません。
一方、そんな「一般人女性」を、
血縁だからと言って強引に組み込み、
家を存続させようとする側の方に、
お約束をも超えた感のある、
「ズレ」が見えたのには
笑ってしまいましたね。
とは言え一発的なギャグで終わらず、
実際に名家であるはずの家が、
盛大にヘコんでいたり、
脱出者が続出で、きっちりと、
ツケが回ってきている部分は
かなり斬新と言えました。
つまり本作は日野さんには
人生を変えるチャンスですが、
それ以上に、家の面々には、
サバイバルのラストチャンスであり、
「本気」なのにも頷けて
面白く読み進められました。
M式プリンセスはこんな方におすすめな作品!必見
平凡に、あるいはそれ以下な感じで
人生を送っていた自分が実はプリンセスで、
一夜にして何もかもが変わる……。
そんなシンデレラストーリーは、
今も昔も定番で、現代風にアレンジされた
物語もかなり多いですが、
しかしよくよく考えて見ると、
血縁とは言えいきなり有無を言わせず
連れてきた挙句、姫になれというのは、
今時あまりにも無茶と言うか非人道的で、
こういう手に頼っている没落旧家に、
浮上の目があるかは怪しいところでした。
パワー系コメディの色彩が強い本作は、
そうした「呼ぶ側の不備」にもガッチリ
踏み込んでいるので、
実力はあるが勝手な連中に使われる、
物語上の不満に悩んでいた読み手にも
オススメできる一作となっています。
また、孫の顔を見るといきなり
「不細工」と言い放つ、まったく、
人柄がなってない感じの祖父や、
毒舌と言うよりツッコミ担当の
夜久やタナカさんなどなど、
アクの強い人たちもポイントです。
恐らく現実的には、クセなくソツなく、
アラもなくといった感じでないと
つとまらなさそうな執事ですが、
本作はその模範とまるで違うだけに、
ギャグとしての面白さだけでなく、
没落の理由も垣間見えます。
やはり思いやりがないと
人は寄り付かないという現実を、
ドタバタギャグの中で示したり、
重層的な物語の雰囲気を
楽しみたい方にも向いている
作品と言えるかも知れません。