タイトル | 美悪の華 |
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原作・漫画 | 倉科遼 檜垣憲朗 |
出版社 | 日本文芸社 |
不幸な過去を背負い、
人生を変えるほどの裏切りも
味わってきた男、氷室聖人。
強烈な経験の末、氷室は、
その美貌と頭脳を使って、
のし上がることを選ぶ。
真っ直ぐなほどの悪が
徹底して描き抜かれている、
ハードで熱い傑作ピカレスク作品です。
美悪の華のあらすじ紹介
強靭な肉体を持ち、
しかもタフな精神力を持つ、
美青年、氷室聖人。
しかし氷室は、ただ美しく、
そして強いだけではなく、
完璧な「悪」の存在でした。
氷室はその美貌と悪魔的頭脳で、
次々に女性の弱みを握り、
悪人たちの欲望を刺激して、
恐ろしいほどのスピードで
裏社会の権力を
集めていくことになります。
一方で氷室には、強烈なほどの
不幸な過去と裏切りの経験が
根付いていましたが、
それらが完全な「悪」となった
氷室を食い止めることはなく、
彼は次々と悪をなしていきます。
美悪の華のネタバレと今後の展開は?
芸能人と見まごうほどの美貌を持つ、
美青年、氷室聖人。
空港に降り立った彼は、いきなり、
シャープな女性神林理沙に
声をかけられ、結局タクシーで、
行動を共にすることに。
しかし一区切りついたところで、
氷室はいきなり理沙に
大金を吹っかけます。
理沙は暴力団神竜組組長の娘でしたが、
氷室はそんなことはまるで意に介さず、
結局お金をせしめてしまいます。
そのため理沙の護衛をしていた
ヤクザたちに絡まれる氷室ですが、
まったくうろたえることなく、
逆につっかけてきた男の指を
ナイフで切り落とします。
その後も氷室は美貌を武器に
様々な女性たちに近付き、
弱みを握ると同時に
トラブルを起こしていきますが、
氷室は単なる無鉄砲な美男子ではなく、
明晰な悪の頭脳を有していました。
壮絶な己の経験から、悪の側から
権力を握るという思いを抱く氷室は、
その美しさと悪魔的な知力、
すなわち「美悪」によって、
自らをどんどん権力へと、
近付けていくことになるのでした。
美悪の華の読んでみた感想・評価
明らかに正当な復讐とさえ
言えない状況にあるのに
グイグイ引き込まれてしまいました。
本作の最大の魅力は、何と言っても
主人公、氷室の「美悪」に尽きます。
家族に生じた不幸、身内からの虐待、
そして知人からの手ひどい裏切りと、
全てを味わい抜いた氷室が、
猛獣のように獰猛に、しかも
飛び切りの「美しさ」を保ちつつ、
戦っている様には熱くなりました。
本来共感できる余地はなく、
同情ももはやできる要素は
乏しいレベルの悪行をしているのに、
不思議と見苦しさはなく、
どこか筋の通った爽やかさすら
氷室には感じました。
それは、自らの「悪」から
決して目を背けないところに生じる
覚悟だったのかも知れません。
悪の道で成り上がる氷室と
対峙するもう一方の悪である面々も、
それぞれクセがありタフです。
そんな「悪」に関しては完全に
一流の男たちが衝突するのですから、
面白くならないはずがありません。
時に知恵を使い、権力を悪用し、
金を積み、そして状況によっては、
命をも賭けていくような、
究極のアンダーグラウンドバトルが
繰り広げられていきますが、
その背景も緻密で説得力十分です。
強さや賢さだけでなく、
自らの「美」にもこだわる氷室は、
強面なアウトロー作品の中にあって、
まったく別の基準を持っている、
ニューヒーローと言えるかも知れません。
美悪の華はこんな方におすすめな作品!必見
ほとんどの作品に登場する「悪役」ですが、
その中には独特の理念や美学を持ち、
正義の側のキャラを「食って」しまう
魅力を有する者も少なくありません。
となれば逆に主人公サイドにも
確固とした信念が求められますが、
本作の主人公氷室には、
えげつないほどの「美悪」の
理念が息づいており、
その存在感は強烈です。
考えられうるだけのあらゆる
悪行をなし続けて、権力を求め、
そして復讐を果たしていく。
その恐るべき負の情念に
彩られた世界観は
まさしくピカレスクであり、
徹底ぶりと熱さは
明らかに異彩を放つ
レベルに達しています。
悪をなすことに悩むワルでなく、
とにかく一本軸の通った、
本物の「美悪」を有する、
負の魅力とでも言うべき
極悪を体感したい方には
本作はまさしく最適です。
ほとんどの作品ではできなかった
「徹底」をやり尽くし、しかも
それが醜くならないという、
抜群のバランス感覚やセンスを
ハードな描写とともに
満喫できる一作とも言えますね。