タイトル | 聖域-サンクチュアリ- |
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原作・漫画 | 庄司陽子 |
出版社 | 講談社 |
恐ろしく、そして巧妙に
犯人への道筋が絶たれた事件現場で
母親にしがみついていた悟朗。
医学関係者岩城に引き取られた彼は
成長するにつれ、その恐るべき本性で、
周りを支配し始め……。
各作品に出てくる強烈な
「ラスボス」たちの半生記のような、
インパクトと冷たい魅力を秘めた、
異色の成り上がり物語です。
聖域-サンクチュアリ-のあらすじ紹介
ある事件現場で知り合った、
自分にだけなつく子供、
悟朗を引き取った岩城。
しかし悟朗は岩城にも
はかりかねるような実力と
恐るべき姿を持った、
邪悪な天才とも言えるような、
強烈な人間だったのです。
子供の頃から妙なほどの
冷淡さを見せるなど、
普通とは違う印象の悟朗は、
冷酷さを並外れた知力で覆い、
徐々に頭角を現しますが、
彼の行動は問題視されません。
それどころか瞬間的な
判断力にも長ける悟朗は、
巧みな手法で周りの人間を、
どんどんと掌中におさめ
権力へと近付いていくのでした。
聖域-サンクチュアリ-のネタバレと今後の展開は?
医学関係者として、遺体の検分を
専門に行う岩城は、ある日、
亡くなった女性にしがみつく、
男の子の赤ちゃんを目撃します。
事件はその凄惨さから騒がれますが、
証拠は丹念に消去されており、
しかも悲惨な目に遭った男の子を、
引き取ろうという親類すら
現れることはありませんでした。
そのため岩城は施設に
様子を見に行き、
自分に妙になついていたその子を、
引き取ることを決意します。
本来単身者が引き取ることは
原則としてできないところですが、
施設側が「事情」を汲んでくれたため、
その少年、悟朗は岩城の養子になりました。
悟朗は変わらず岩城になつきましたが、
母代わりだった家政婦との別れにも、
まったく平然としているなど、
妙に冷淡な一面を
のぞかせていくようになります。
中学校の頃になると学校の教師にも、
「正義」を信じるあまりに相手を
完膚なきまでに打ちのめす姿勢が、
問題視されたりもしましたが、
普段は優等生の悟朗に、岩城は
かける言葉を見い出せません。
一方、見事に高校受験をパスし、
かつて揉めていた相手と
一緒の学校になった悟朗は、
執拗に弱みを突くその相手に対し、
巧妙かつ恐るべき裁きを下して、
完全に屈服させてしまうのでした。
聖域-サンクチュアリ-の読んでみた感想・評価
正統派の悪役ものかと思いきや、
予想以上にじっくりと
生い立ちから成長の過程を
徹底的に描いているので、
怖さも倍増でした。
本作の軸は何と言っても、
悟朗の突き抜け方です。
凄惨な事件を乳飲み子の時に
経験した彼は、大きくなっても
一切の「信頼」を抱かず、
無理を押して引き取った岩城氏が、
思わず逃げてしまうほどの恐ろしさを
宿すに至ります。
しかも彼の冷酷さは、決して
周囲に容易に悟られるような
薄っぺらいものではなく、
さらには示した相手をむしろ惹きつけ
自分の意のままに操るほどの
邪悪なカリスマもあるんですね。
世の中に恐ろしいキャラは多くても、
その怖さによって魅力を
前面に感じさせるほどの者は多くなく、
そのため読み手としても、
悟朗のヤバさが分かりました。
職業柄酷い遺体に、つまり
遺体を通じて非道な犯人とも
「接して」きた岩城氏が、
結局は「逃げて」しまったのも、
悟朗の残酷さではなく、むしろ強力な
「魅力」が原因なのかも知れません。
聖域-サンクチュアリ-はこんな方におすすめな作品!必見
悪魔的な技術と知能を持ち、自らの地位、
あるいはプライドのためであれば、
誰であろうと容赦なく手にかける……、
そうした恐るべきキャラの多くは、
ジャンルを問わずしばしば、
「ラスボス」として描かれるものです。
しかし、徹底的な悪である純粋さ、
能力の高さと「活用」をためらわない
決断力の高さなどは、
非常に独特の魅力となって、
時に主人公を上回る人気を
博することも珍しくありません。
そういた「ラスボス」好きなら、
まずオススメしたいのが本作です。
何しろ主人公の悟朗は、
過酷極まる状況から養父に
助けられ生活していたものの、
恐ろしく残忍、冷徹な一面を
滲ませ続けており、表情からも、
それが分かる「本物」です。
だからこそ大人になるにつれて
どんどん彼の恐るべき一面が
明らかになってきていても、
とってつけた感じがなく、
徐々に音が大きくなるように
痺れる怖さを満喫できます。
また、感情の発露なのか
残酷さのあらわれなのか、
あるいはより危険な何かなのか、
「事件」を見ても分かりにくく、
よりミステリアスな怖さが
強調されているのがいいですね。