タイトル | ワンマン・アーミー ゲイツ |
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原作・漫画 | 小林源文 |
出版社 | SBクリエイティブ |
西暦198X年9月20日──
ヨーロッパ時間12時08分。
世界は終焉を迎える事となった。
無差別な核弾頭の雨が各国へと振り落ち、
一日で10億人の人類が死滅。
その週の終わりには
人類の人口は半分へと減り、
核戦争開始3週間後には核の冬が訪れる。
4億と5億の人々が
次から次へと命を落としていった。
緩やかな破滅へと向かう
終末の時代へとなった21世紀。
これはそんな破滅後の戦場を
戦い抜く英雄の物語である。
ワンマン・アーミー ゲイツあらすじ紹介
冷戦の緊張下にあった198X年。
東西陣営の全てを巻き込み、
無関係の第三世界すらも巻き込む。
地球の全てを巻き込んだ全面核戦争により、
人類は滅びの道を歩む事となった世界。
核戦争後に起きた核の冬による、
空、海、大地すべてが
放射能に汚染されてしまう。
生命のライフラインが断ち切られた
地獄と化した地球。
僅かに生き残った人類の覇権を争う、
最後の戦争が行われていた……
全てが残骸の山と化し、
死者と朽ちた文明の
残りのかけらの廃墟とかした。
かつての大都市レニングラードへと
降りたつ無数の航空揚陸艇。
レーザー砲の砲火の中で
強襲着陸を行っていた。
運悪く撃墜される航空揚陸艇や、
運が良く着陸に成功し後部ハッチが開く。
パワードスーツに身に着けた機動歩兵部隊が
幾人も降りていく、その中に彼はいた。
ゲイツ・アーノルド・シュワルツ少尉。
後に英雄となり、数奇な運命を背負った、
この世界を救う兵士である。
ワンマン・アーミー ゲイツネタバレ・今後の展開
地獄と化した全面核戦争後の
地球を舞台とする、核戦争後の東西の
最終戦争をテーマにした今作。
主人公のゲイツ・アーノルド・シュワルツ少尉。
伝説のヒーロー「パンツァー・ゲイツ」と
呼ばれる英雄でもありました。
レニングラードで勝利し、
東側陣営の中枢へと迫っていました。
しかしゲイツ率いる部隊は
何者かによって壊滅し、
敗走を余儀なくされてしまいました。
彼は大敗の責任を取らされ、
敵前逃亡をした卑怯者として
投獄されていました。
過去の活躍と功績により死刑を回避しますが、
再び前線へ立つ事を条件に、
彼は再び戦場へと戻されてしまいます。
かつて彼の身に何があったのかは不明です。
が、彼はあまりの恐怖によって
記憶を喪失してしまい、かつての英雄
としての覇気を失っていました。
そんな彼を自分の部隊──マザーグース中隊へと
配属させたマリコ・シンクレアは、
彼を部下として戦場へと送ります。
彼女が率いる中隊は情報収集する為に、
東京の廃墟を進み、
敵と遭遇してしまいます。
敵は二足歩行の強度な防御力を
持つ機動兵器であり、
彼女の率いる部隊は敗走を
余儀なくされてしまいます。
再び戦場へと出てしまった為に、
PTSDを再発させてしまったゲイツ。
生死の緊張が彼をかつての英雄
パンツァー・ゲイツの人格を呼び起こし、
彼はものの見事に
敵の機動兵器を破壊します。
その中で知った、東西陣営の兵士の秘密。
脳手術を受け、機械化された兵士と、
核戦争後の世界へと挑んでいきます。
ワンマン・アーミー ゲイツ読んでみた感想・評価
今回紹介する
「ワンマン・アーミー ゲイツ」。
小林源文先生がミリタリー雑誌である
「コンバット・コミック」
にて連載していた作品です。
この作品が発表された時代は、1980年代。
今では遠くなってしまった
過去の時代ではあります。
しかしその頃は、全面核戦争の
緊張がまだ解けていない、
冷戦の時代でもありました。
小林先生がこの作品を書いていた時代。
いつ核戦争が起きてもおかしくはないと、
SF漫画みたいな恐怖と
隣り合わせの時代でもありました。
そんな中で、小林先生は
サラリーマンをしながら、
この作品を手掛けていました。
この作品に登場するパワードスーツは、
SF映画の御大でもある
ロバート・A・ハインライン先生の
SF作品を下地に描かれています。
かつてSF作品の中で新しい発想だった、
機動歩兵兵器。
後にガンダムやロボットモノの
SF戦記作品に影響を与えます。
このロバート・A・ハインライン先生や、
アイザック・アシモフ、
アーサー・C・クラーク先生など。
SF作品を代表する先駆けともなり、
後の多くのSF関連の作品に
影響を与えていく事となります。
今作の「ワンマン・アーミー ゲイツ」。
リアルな近未来のSF戦記をテーマにし、
宇宙や異星などを舞台にしたものではない。
核戦争と身近な現実をテーマにし、
その戦争後においても戦争を
続けているだろう人類を描き、
終末の戦争の世界を表現しています。
この作品を書くにあたって、
劇中に出るディスプレイ画面の作画と
発想に手間があったと、
小林先生は語っています。
当時のSFでは、現実感の薄い
宇宙での生活など、空想が富んだ作品が多い。
小林先生はそんなSFにあっても
現実感のある作画を目指し描いていました。
当時の自身の作品に対する妥協なき
追求した想いが込められた今作。
小林SF作品の原点と発想の
機転と回帰とも言える本作。
劇画SFを堪能したい人に
お勧めな作品です。
核戦争後の混沌とした終末世界を描いた作品
小林先生の作品をすべて読みたい人に、
まずはおススメした小林SF作品。
初期に作成された、
また駆け出しの漫画家時代であった
先生の挑戦と若さが感じられる作品。
それが今回紹介する
「ワンマン・アーミー ゲイツ」です。
また世紀末。
核戦争後の荒廃した世界を見てみたい人。
文明が失われた世界で続く、
あくなき戦争の世界を見てみたい人にも
おススメできる作品でもあります。
当時の1980年代において、
核戦争後の世界を舞台にした作品は
多く描かれていました。
あの『北斗の拳』を始めとした、
文明社会が滅んでしまった、
混沌とした終末世界。
そんな世界にも関わらず、
戦争を止めようとはせずに、
殺し合いを続ける。
人類の業の深さや、
冷戦時代の恐怖などを描かれ、
終末の時代の戦場が
ありありと表現された今作。
SF作品の多くの片鱗が見え隠れしながらも、
それでいてリアル。
また現実感がある独特の表現など、
劇画戦記漫画を手掛ける
小林源文先生の独自性のある演出。
よりリアルな人類終末の
世界を描いています。
でも絶望的な世界にであるも、
その世界に戦い挑む主人公のゲイツ。
その仲間達と、人間性が失われる世界でも、
人間であり続けようとする希望が込められた
エンターテイメント性。
SF戦記漫画として
最大の魅力を醸し出しています。
冷戦の恐怖と、
あり得たかもしれない終末の世界。
そんな世界の戦争を
垣間見たい人にお勧めな作品でもあります。