タイトル | Do Da Dancin’! |
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原作・漫画 | 槇村さとる |
出版社 | 集英社 |
ずっとバレエを続けてきたものの、
母の死をきっかけにモチベが下がり、
潮時かとすら思われていた鯛子。
しかしスターダンサー三上と出会い、
本来の演技を取り戻していく……。
天才ではなく孤高でもないという
バレエ漫画としては異質ながらも、
非常にリアル感のある、
等身大舞踏物語です。
Do Da Dancin’!のあらすじ紹介
二十二歳のバレエダンサー鯛子。
バレエ一筋で今までやってきましたが、
自分の夢を応援してくれていた
母が事故で急死してから、
モチベーションはずっと下がったまま、
周りからは潮時だという声すら
上がるような状況を続けていました。
しかし、間近に迫った「ジゼル」で、
一緒の舞台に出ることになった、
スターダンサーの三上に、
まったく踊りに向き合えていない
ひどい状態の自分を指摘されたことで、
再び頑張るきっかけを得ていくのでした。
Do Da Dancin’!のネタバレと今後の展開は?
「ジゼル」の演目で、
霊魂であるウィリーたちの
女王であるミルタ役を
任されることになった桜庭鯛子。
しかし彼女は公演間近の練習最中に、
携帯に出て話し始めるなど、
全般的にモチベーションが低く、
年齢も二十二歳であり、
指導者たちからも潮時と
烙印を押されつつありました。
ダンサーとしてだけではなく、
「ひよこバレエ」の指導者として
月謝を貰う立場でもありますが、
公演前にも関わらずまるで、
根を詰める気配のない彼女には
父親すら不満顔だったりします。
仲間たちとは仲良く喋りますが
そんな身内でさえ、かつての
鯛子の踊りを待ち遠しく思うほどで、
鯛子自身も実際的に、応援してくれた
母が亡くなってから、まったく
ノれなくなった自分を感じていました。
しかし、モヤモヤした気持ちで
稽古場に戻った鯛子は、日本でも
トップのスターである三上と出会い、
彼から辛辣な言葉を浴びせられ、
自分でも引退を意識するようになります。
しかし鯛子の中にはまだ自分を
燃やせるものがあり、公演が近付き
本番が迫るにしたがって、
三上たちトップダンサーにも
評価されるほどの実力を
周りに見せていくのでした。
Do Da Dancin’!の読んでみた感想・評価
二十歳を過ぎて伸び悩みという
ガチ系のバレエ漫画としては、
かなり厳しい主人公設定ながら、
全体的に非常に精密で、
バレエへの解釈から家庭の理解まで
充実している点が良かったですね。
本作のポイントは何と言っても、
主人公の鯛子ということに
なっていくと思います。
各種のコンクールなどを通じて、
十代半ば頃にはもう、
大体の将来像が決まってしまうほど、
極めて厳しい部分があるのが、
クラシックバレエの世界ですが、
鯛子は既に二十歳を過ぎています。
しかも仕方ないこととは言え、
お母さんの死をきっかけに
モチベーションを下げてしまっており、
出だしからかなり心配を感じさせますが、
そこで人との出会いもあって、
復活させていくんですね。
もちろん、やる気はカチっと入っても、
失った時間は戻ってきませんし、
現役生活の中で形成された、
「ポジション」は簡単に変わりませんが、
だからこそ演目をどう理解し踊るかの、
「内容」が問われるわけです。
初体験の驚きや喜びからは
遠く離れているが故のプロ意識を
強く感じられる作品でした。
また鯛子の実家も、割と軸が
強力な魚屋さんであり、
バレエを続けやすい環境なのも、
かなりリアルだったりと
細部にわたってしっかりした
作品だと思いましたね。
Do Da Dancin’!はこんな方におすすめな作品!必見
小説に絵画に音楽、そして舞踊と、
様々な芸術の分野がある中でも、
「若い才能」がとりわけ注目され、
また重要視されるのが、バレエです。
王子様やお姫様、そして妖精など、
成熟した女性と言うよりは少女的な役を、
しかも飛び切り活動的に演じなければ、
完成度の高い舞台にはならないため、
早くから伸びる才能は貴重なのです。
創作の面でもその傾向は強く、
「昴」シリーズや
「絢爛たるグランドセーヌ」などの、
名作バレエ漫画でも、その主人公は、
並外れた才能を持つ少女たちでした。
しかし本作の鯛子は既に二十歳を超え、
母の死以来モチベーションも低調な、
良くも悪くも「普通」なダンサーです。
ただ、だからこそ、やる気を戻し、
練習を積んで少ないチャンスを貰い、
舞台に上がっていくその姿は、
スポーツや演劇などのジャンルで
熱くなるキッカケを欲している方に
オススメできるのではと思います。
天才でなければ、普通では壁を
越えられない世界にあって、
鯛子は明確な天才ではなく、
また、知らず知らずのうちに、
回り道をしてしまった、
「厳しい」ダンサーです。
ただ、それだけに多くの作品の
天才たちであれば簡単に、
やり過ごしてしまえそうな部分に、
じっくり付き合っていかざるを得ず、
それが深みにつながっているのが
見ていて胸に染みる点ですね。